G7 安倍総理の外れた思惑

G7サミットを世界はどう見ているのかと思い、先日のラジオ分析に続き、いくつかざっとインターネットのサイトを見てみました。 英国国営放送のBBCのサイトを読むと、やはりG7の扱いは小さいです。イラクの戦闘、ジカ熱対策、サッカー等のニュースもあれば、「日本人は地下鉄のなかでうたた寝するのがうまい」みたいなどうでもよい記事もありましたが、G7の記事はさほど目立ちません。G7本体とは無関係ですが、オバマ大統領の広島訪問はニュースになっていました。

BBCのある記事では「安倍総理は、G7で“アベノミクス”を世界に売り込み、危機を回避するために各国首脳に財政出動を納得させることを重要な使命としていた」という文章の後に改行して、中学生でもわかる次の文章が続きます。

He failed.

つまり「彼(=安倍総理)は失敗した」というのが、ひと言でまとめた評価です。これ以上シンプルな文章はありません。

G7の首脳は経済成長が優先課題であることに同意し、経済危機のリスクが存在することを確認しました。経済成長が優先課題であることは当たり前です。G7はそもそも経済サミットですから、経済成長を優先課題とすることで合意するのは当然です。経済危機のリスクが存在するのも当然です。リスクはいつだって存在します。「リスクがない」と主張する方がリスクです。

安倍総理が最重視していたのは財政出動への各国の合意でしたが、各国首脳の合意は得られませんでした。英国やドイツは財政出動を拡大できない事情があります。そもそも安倍総理が、G7首脳に財政出動への同意を得ようと考えたこと自体が誤りです。戦術レベルの失敗ではなく、戦略レベルの失敗です。戦略的ミスは、戦術的な成功でも挽回できません。そもそも達成できない目標を立てたのは、安倍総理とその周辺の官僚の大失敗です。

「国内の景気が良くならないので、消費税増税を延期したい、公共事業のばらまきで景気対策をやりたい」という安倍総理の個人的な願望に、各国首脳がお墨付きを与えるはずがありません。ドイツのメルケル首相や英国のキャメロン首相のこれまでの政策を考えれば、同意を得られる見込みが薄いことは最初からわかっていました。わかっていなかったとすれば、判断ミスです。

伊勢志摩サミットでテロ事件のような大問題が起きなかったことはよかったです。オバマ大統領が広島を訪問したことも素晴らしいと思います(安倍総理の功績とは思いませんが)。しかし、それ以外では具体的な成果はあまりありません。

安倍総理は「消費税増税延期に対して各国の賛同が得られた」と喧伝するのかもしれませんが、少なくとも英国やドイツは賛同を与えたつもりはなさそうです。合意文書を読んでも「各国それぞれ好きなようにやりましょう」というふうに読めます。安倍総理の個人的事情(日本の国内事情・選挙事情)につき合わされて、各国の首脳は不愉快だったかもしれません。日本外交にマイナスの影響を与えたと思います。

BBCばかりでは偏向するかもしれないので、カナダのテレビ局のサイトものぞいてみましたが、やはりG7の扱いはそれほど大きいとはいえません。G7当日には長めの記事が出ていましたが、経済以外のテーマが大きく扱われていました。カナダの首相が、G7で人質事件への身代金支払いの禁止を強く主張していたことを、カナダの報道で知りました。日本の報道では全然カバーしていませんが、国によって関心のあるポイントがちがうことがわかり、おもしろかったです。

G7サミットの結論としては、BBCの簡潔な表現(He failed.)に尽きると思います。安倍総理の思惑通りにはいかず、経済政策に関して成果が出たとは言い難いでしょう。一定の成果といえば、テロ対策や気候変動の問題で議論したことなどが挙げられるかもしれません。しかし、G7サミットならではの大きな成果はありませんでした。したがって、「G7サミットの成果をひっさげて衆参同日選挙へ突入する」というシナリオは難しくなったと思います。

また、G7サミットの意義としては、経済政策での合意よりも、民主主義や人権、自由貿易といった価値観を共有する先進民主主義国の首脳が一堂に会するという点に重点が移っていると思います。G7サミットの重点を経済から政治(民主主義や人権、平和構築)にシフトしていくか、あるいは前回のブログで書いたD10(先進民主主義国9か国プラスEU)を創設するか、考え直した方がよい時期かもしれません。

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