安倍政権の支持率アップの3法則

安倍総理の暴走ぶり、このごろ少し変です。無理筋の議論を強引に通そうとするのは以前からですが、その度合いが限度を越えています。なんだか異常にハイテンションです。

ある日突然これまでの自民党憲法案から離れて、憲法9条に自衛隊に関する条項を追加すると言い出しました。また、唐突に総理大臣が2020年までに憲法を改正すると言い出すのは、違和感があります。「総理大臣がそんなこと言うな」と批判されると、「自民党総裁としての発言だ」と反論しましたが、自民党内の議論はまったく踏まえていません。行政府と立法府の関係でも問題がありますが、自民党の政党ガバナンスの問題としても深刻です。石破氏はじめ自民党内から反発が出るのも当然です。しかし、あえて強引に憲法改正への道筋をつけようとしているのには、何か理由があるように思います。

その理由とは、支持率の低下をくい止めることではないかと思います。安倍総理は高支持率を維持するために、次の3つの法則を採用しているように思います。

1)大きな問題は、より大きな問題が起きるとかすむ。

2)外部に敵をつくると、求心力が出る。

3)外遊の「オリンピック効果」で支持率を上げられる。

それぞれについてご説明します。

1)大きな問題は、より大きな問題が起きるとかすむ。

目の前に大きな問題があったとしても、より大きな問題が起きるとかすみます。そしていつの間にか忘れ去られます。「別の大きな問題を起こすと、直近のスキャンダルを隠せる」という法則です。朝鮮半島情勢の緊迫化のおかげで、森友学園問題は注目されなくなりました。さらに共謀罪の国会審議、憲法改正の議論と重要案件が続くと、ますます森友問題が国会で追及される時間はなくなります。その結果、森友問題は解明される前に風化しつつあります。このところマスコミは全然注目しなくなりました。

日本の国会は「会期制」をとっているため、審議時間が希少な資源です。法案は審議時間が足りなくなると、会期終了時に「審議未了廃案」になります。国会では日程調整と審議時間の確保が、最重要の課題です。他に重要法案がなければ、もっと森友問題の追及に審議時間が使われたことでしょう。しかし、森友問題と同じかそれ以上に重要な共謀罪の審議が入れば、野党も共謀罪の審議に時間を使わざるを得なくなります。軍事用語でいえば、「陽動作戦」という感じです。森友問題から世間の注目をそらすという点では、安倍政権の作戦は成功しつつあります。上手な目くらましです。ある意味、お見事です。

2)外部に敵をつくると、求心力が出る。

北朝鮮情勢が緊迫化してくると、国民の関心はそちらに向かいます。核実験とか、ミサイル発射とか、サリンとか言われれば、怖くなって無関心ではいられません。対外的な危機になると国民は団結しやすくなり、国内の不満が帳消しになります。危機感をあおればあおるほど、政権に対する支持は高まります。北朝鮮のミサイル発射実験ごときで東京メトロの地下鉄を止める必要などありませんが、そういう出来事が報道されると、国民の危機感は高まります。

「北朝鮮のミサイルがいつ飛んでくるかわからない」という雰囲気が醸し出されると、政府批判がタブー視されるようになります。「北朝鮮危機を重視しない人間は、非国民だ、北朝鮮のスパイだ」といった異常な雰囲気になると、政権批判はむずかしくなります。さらに危機感が強まると、国民の権利や自由を制限することへの抵抗感が薄れます。安倍政権にとって、共謀罪を成立させたり、憲法9条を変えたりするには、北朝鮮情勢の緊迫化は好都合なのかもしれません。

今すぐに北朝鮮が核ミサイルを打ってくるという事態は考えにくいです。米軍が動かない限り、北朝鮮から先制攻撃するとは思えません。北朝鮮危機への警戒は必要ですが、必要以上に国民を不安に陥れ、危機感をあおるのは、いかがなものかと思います。

2015年にフランスのオランド大統領が空母の艦載機を使ってシリアを爆撃しましたが、エマニュエル・トッド氏はそのことを批判して次のような趣旨を述べていました。

(オランド大統領は)無意識のうちに危険な状態の悪化を求めているのではないかとも考えられる。なぜなら非常事態宣言が出ているような緊張感が悪化すればするほど、統治者にとっては統治しやすいからであり、いまやそれが統治の方法と化している面がある。

ちなみにオランド大統領も、テロ対策を名目に憲法改正をもくろみました(失敗しました)。安倍総理も「朝鮮半島情勢が悪化すればするほど、統治者にとっては統治しやすくなる」と考えているように思えてなりません。北朝鮮のミサイル発射は言語道断ですが、緊張緩和のための協議を求めず、米軍との一体化をおし進めて軍事的緊張を高めている日本政府の姿勢が正しいとは思えません。外交努力をおこたり、軍事的オプションばかりを強調するのは、いかがなものかと思います。

3)外遊は「オリンピック効果」で支持率を上げられる。

この「オリンピック効果」という言葉は、私が勝手につくった造語です。その意味するところは、首相が日本を代表して米国大統領と並んで記者会見したり、G7サミットで集合写真を撮ったりしているのを見ると、オリンピックで日本代表選手が表彰台に登っているような感覚になり、知らないうちに愛国心が刺激され、政権支持率がアップすることを意味します。

うろ覚えですが、政治学用語で「ローズガーデン効果」という言葉があります(たぶんあったと思います)。米国大統領と外国首脳がホワイトハウス前のローズガーデンで記者会見を開くと、テレビなどで派手に報道されて露出が増し、その首脳の支持率が上昇する効果があるそうです。

北朝鮮危機で大変な時期のはずのゴールデンウイークにも、安倍総理はロシアやイギリスを訪問しました。ゴールデンウイークのネタ枯れの時期だと、マスコミ各社も報道することが少ないので、ロシアやイギリスでの首脳会談を大きく扱いがちです。

私にとっては驚いたことに、世論調査によれば、安倍総理がトランプ大統領と良好な関係にあることが支持率アップに貢献しているそうです。難しい外交交渉をまとめなくても、トランプ大統領とゴルフをしただけで支持率がアップしたわけです。楽な支持率向上策です。アベノミクスの柱だったTPPがトランプ大統領に蹴っ飛ばされても、なぜか支持率は上がりました。世論というのは、よめません。

安倍総理は得意の外遊で各国の首脳とツーショット写真に納まり、首脳会談の様子が何度もテレビで放送されれば、露出度が増えて「オリンピック効果」が発生し、支持率は上昇します。そんなことをこれからも繰り返すことでしょう。実際に安倍外交がうまく行っているか否かは重要ではありません。ロシアとの領土交渉は進みそうにないし、TPPは米国抜きになり、中国や韓国との関係は悪い状態のまま固まっています。北朝鮮に対する圧力に迫力が欠けるのも、中国や韓国との連携が取れていないからだと思います。東アジア外交はこの4年半の間にほとんど進展はありません。しかし、海外に行って首脳会談をやれば、それだけで仕事をしているような感じになって、支持率がアップします。

以上の「支持率アップの3法則」により、共謀罪の成立、敵基地攻撃能力の取得(=トマホーク巡航ミサイルの米国からの購入)、憲法9条の改正等を一気に実現するのが、安倍総理の狙いなのではないかと思います。超長期政権で歴史に名を残し、憲法改正で歴史に名を残し、北方領土返還と日露平和条約の締結で歴史に名を残しというのが、安倍総理の野望なのだと思います。しかし、日本を戦争に引き込んだ、という悪名で歴史に名を残す結果になりかねません。そろそろ「支持率アップの3法則」に惑わされるのは、やめなくてはいけない時期です。

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