安倍一強の分析と民進党改造計画(5)

連載ブログの5回目で最終回です。安倍政権に代わって民進党が政権を担うためにやるべきこと(主に党改革)を列挙してみました。
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6.民進党改造計画:政権政党になるための準備

1)立ち位置の明確化: 穏健な保守 + 社会民主主義

政党としての立ち位置を明確化することは常に重要です。方向性を明らかにして「バラバラ感」をなくすことです。「だれのための政党か」という点をわかりやすく打ち出す必要があります。「国民全体のための政党」というのはレトリックとしてはよいのですが、政党は特定のグループの意見を代弁するのが通常のかたちだと思います。英語で政党のことを「party」と呼びますが、「part(部分)」の意見を代表するので「party」と呼ぶと聞きました。八方美人的であいまいな政策を打ち出すより、たとえ一部の人たちに嫌われる政策であっても、民進党が代表したいと思っている人たちに訴える政策を打ち出すべきです。

具体的には、富裕層への課税強化や法人税率アップを主張すれば、富裕層や経団連からは嫌われるかもしれませんが、仕方ないと割り切るべきです。環境政策を重視すれば、やはり製造業に嫌われるでしょう。また、反中や嫌韓の人たちには嫌われても、近隣国との関係改善を外交政策の柱にすべきだと思います。主張を明確化すると敵はできますが、それは仕方ないと割り切るしかありません。

それでは「民進党はだれの意見を代弁するのか」というが、大きな問題です。民進党は、穏健な保守(中道右派)から社会民主主義(中道左派)までの「まんなか」の民意をカバーする政党をめざすべきだと思います。右と左の極とは相いれないと割り切ります。かつて自民党のハト派・リベラル派の宏池会を支持していた人たちのなかには、今の自民党を苦々しく思っている方も多いと思います。安倍一強のもとで自民党の右傾化が進んでいますが、世論調査を見る限り、世論の右傾化はそれほど甚だしくありません。今でも穏健な中道路線(中道右派、中道左派)の支持者は多いと思います。

民進党の中にも「保守系」を自称する人がいますが、穏健な保守系の人は民進党の中心になって活躍していただいてよいと思います。他方、あまりにも右派的な主張を行う人は、民進党にはなじまないと思います。たとえば、排外的な日本会議の主張に賛同するような人が民進党の中核にいるのはまずいと思います。民進党の主流は、穏健な保守と社会民主主義のベストミックス(あるいはハイブリッド)であるべきだと思います。そういう意味では、かつては民主党保守派と言われていた前原誠司氏が、社会民主主義的な政策を強く訴えているのは良い兆候かもしれません。

2)日本版ニューディール連合:少数派連合で多数派を形成

無党派層対策ではなく、新しい支持基盤をつくっていく努力も重要です。インターネットやSNS、バラエティ番組出演で無党派対策という発想はやめてほしいと思います。蓮舫代表がバラエティ番組に出たり、蓮舫代表のバーチャルリアリティのゲームを開発したりといった浮ついた広報戦略は、まじめな有権者の失笑をかうばかりです。政治にまじめに取り組む姿勢こそ見せてほしいと思います。無党派層を主なターゲットにするより、その時々の人気にかかわらず常に支持してくれる固定客を拡大していくことが大切です。その際に自民党が強い業界団体や地縁組織ではなく、それ以外の層を主なターゲットにして開拓すべきです。

参考にすべきは、アメリカの民主党のルーズベルト大統領の「ニューディール連合」です。1930年代のアメリカの少数派(弱い立場の人たち)は、都市住民、移民、黒人、宗教的少数派(カトリック等)、労働組合でした。これらの少数派を糾合してルーズベルト大統領は長期政権を維持しました。「少数派もひとつひとつ足し合わせていくと、過半数を超えて多数派になってしまう」という「ニューディール連合」のマジックです。

安倍政権の政治は「強者の政治」だと思います。富裕層や輸出大企業に有利なアベノミクスは、格差拡大や非正規雇用の増大につながっています。今の日本で「少数派(弱者)」といえそうなのは、女性、子ども、非正規雇用、低所得者、年金生活者、中小零細企業、障がい者、LGBT、過疎地域の住民、東日本大震災や熊本地震の被災者、原発立地地域の住民等ではないかと思います。少数派(弱い立場の人たち)の意見を代弁して、支持を固めていくことは有効だと思います。弱い立場の人たちの権利や生活を守る政策を前面に打ち出し、「日本版ニューディール連合」を築き、新たな支持基盤を固めるべきです。

3)マニフェスト策定過程の改革:ビジョン重視とオープン化

言うまでもなく、マニフェスト(政権構想)は重要です。マニフェストの質と「つくるプロセス」を改善する必要があると思います。ある政治学者は「民主党の2009年総選挙マニフェストは、政策を貫く明確な共通の理念が存在せず、めざす社会のビジョンを示すにはいたらなかった」と評しました。ビジョンを示せないマニフェストは失敗作です。2009年の政権交代選挙は、民主党の政策が国民から支持されたというより、自民党長期政権の自滅だったということです。次のマニフェストは出来の良いものを作らなくてはいけません。

いまイギリスで下院議員選挙が行われていますが、労働党のマニフェストが評判よいそうです。インターネットで見てみましたが、トップページには大きく「FOR THE MANY / NOT THE FEW」(一部の少数者のためでなく、多くの人のために)と書いてあります。極端な格差社会をなんとかしようと意図が明確に伝わります。労働党はマニフェスト作りに手間ひまかけます。丁寧に時間をかけて議論し、党内外の専門家や市民団体の意見をよく聴き、党内コンセンサスを形成しながら、マニフェストを作ります。事前のコンセンサスを大事にしているので、後から党内でゴタゴタも起きにくくなります。マニフェストづくりはイギリス労働党に学ぶとよいと思います。

*ご参考:2016年6月14日付けブログ「マニフェストの反省とその次へ」
http://www.kou1.info/blog/politics/post-849

4)民進党シンクタンクの創設

政党の売り物は政策です。しっかりした政策を立案するには、専門的な助言や体系的な調査研究が必要になります。与党なら霞が関の中央省庁に頼れますが、野党だと政府には頼れません。また、官僚機構から出てこない発想を取り入れるには、民間のシンクタンクを活用することも大切です。しかし、アメリカのように民間シンクタンクが発達していないので、民進党のシンクタンクを創設するべきだと思います。民主党時代には一時期「プラトン」という愛称のシンクタンクがありましたが、小沢一郎幹事長時代に廃止されました。民進党のシンクタンクはどうあるべきか以前に詳しく書いたので、そちらもご参照いただけると幸いです。

*ご参考:2016年7月14日付けブログ「民進党シンクタンクを創ろう」
http://www.kou1.info/blog/politics/post-905

5)政策コミュニケーションユニット

以前にイギリスのブレア首相の改革について書かれた本で「政策コミュニケーションユニット」というのを創設したというのを読んだ記憶があります。手元に文献がないので記憶に頼って書きます(不正確かもしれませんが、ご容赦ください)。良い政策を立案するだけではダメで、その政策を国民に広く知ってもらい理解してもらうことが大切です。特に新しい政策や新しいコンセプトの場合には、国民に向けた啓発キャンペーンが必要になります。そこで「政策コミュニケーション」が重要になり、そのための専門の部署が「政策コミュニケーションユニット」です。確か首相官邸に置かれたのだと思います。

野党の民進党は、広報室と政務調査会でプロジェクトチームみたいなものをつくり、「いかに政策を広報し、理解してもらうか」を真剣に考えるべきだと思います。民進党の新しい政策の「尊厳ある生活保障」なんていうのは、とても良い政策ですが、複雑すぎて一般の人に理解してもらうのは簡単ではありません。しかし、とても良い政策です。まずはマスコミとうまくつき合い、政策の中身を記者の皆さんに知ってもらう啓発キャンペーンからスタートしたらよいと思います。政治の世界では、報道されないと、何もしてないのと同じです。アメリカのシンクタンクもジャーナリスト向けの政策説明会を重視すると聞きます。そのために「政策コミュニケーションユニット」を代表直属(あるいは幹事長室直属)で作ったらよいと思います。「政策コミュニケーションユニット」の理想的なトップは池上彰さんです。あんな風にわかりやすく政策をかみ砕いて、ふつうの言葉で説明できる人が理想です。そうすれば政治に対する関心、民進党に対する理解も深まると思います。

6)地方選挙のサポート・コンサルティング機能の強化

国政選挙のときに足腰になって戦力になるのが、地方議員です。都道府県議会、市町村議会の議員は、地方における政党の骨格です。再来年の統一地方選に向けて、地方議員を増やす。それも女性の地方議員を増やすことは、とても重要な戦術のひとつです。公募をしても女性の候補者はあまり応募してくれません。県連レベルで女性候補発掘のための政治塾や政治学校を開いたり、候補者を新聞広告等で公募するときに「特に女性の候補者を求む!」とハッキリと打ち出したりしたらよいと思います。公認候補を選ぶときに女性優遇を前面に押し出すべきです。

また、新人候補への研修やコンサルティング機能を強化し、党本部選対委員会に「地方選挙候補者ホットライン」みたいに気軽に相談できる窓口を設け、党本部の職員なりベテラン議員なりが現地に行ってアドバイスできる体制をつくるとよいと思います。都市部の中選挙区型の選挙区ならフレッシュな女性候補を多数擁立すれば、議席の上積みが可能だと思います。新人候補者にはいろんな不安があるので、それを解消する仕組みを党本部と都道府県連でつくっていくべきだと思います。

7)市民団体や専門家、業界団体等との対話強化

民進党が重視する分野(医療、介護、教育、子育て、障がい者支援等)の業界団体やNPO/NGO、専門家団体、学者等との政策対話を強化すべきです。民主党政権時に下野した自民党は業界団体との関係強化に力を入れ、効果をあげていました。安倍政権の政策に不満のある団体や業界は特にフォーカスして政策対話を行うべきです。そうすることで、政策的なインプットを受けつつ、選挙でも支援をお願いすることができるかもしれません。前述の固定的な支持層獲得にもつながります。

市民連合のような組織も大事にしなくてはいけないし、「リベラル懇話会」のような学者のグループとの政策対話も重視すべきだと思います。いろんな分野の学者や専門家に民進党の政策立案に関わってもらうことが重要だと思います。

*ご参考:2016年7月12日付けブログ「リベラル懇話会という試み」
http://www.kou1.info/blog/politics/post-902

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