名づけて「世襲格差内閣」

内閣改造後の閣僚名簿を見て思いましたが、世襲議員が本当に多いです。安倍改造内閣の閣僚の世襲/非世襲リストをつくってみましたのでご覧ください

内閣総理大臣  安倍晋三 (世襲)

財務大臣    麻生太郎 (世襲)

総務大臣    野田聖子 (世襲)

法務大臣    上川陽子

外務大臣    河野太郎 (世襲)

文部科学大臣  林 芳正 (世襲)

厚生労働大臣  加藤勝信 (世襲)

農林水産大臣  斉藤 健

国土交通大臣  石井啓一

環境大臣    中川雅治

防衛大臣    小野寺五典

内閣官房長官  菅 義偉

復興大臣    吉野正芳

国家公安委員長 小此木八郎(世襲)

縄北方大臣  江崎鐵磨 (世襲)

一億総活躍大臣 松山政司

経済再生大臣  茂木敏充

地方創生大臣  梶山弘志 (世襲)

東京五輪大臣  鈴木俊一 (世襲)

19人の大臣のうち、10人の大臣が世襲議員です。過半数は世襲議員という内閣です。公明党の閣僚を除けば、自民党の18人の閣僚のうち10人が世襲議員です。

単なる「お友だち」というレベルを超えて、「親の代からのお友だち」がけっこういます。現代日本における最大最強の既得権集団は「世襲議員」だと思います。

地盤・看板・鞄を引き継ぎ、選挙で苦労をしたこともなく、出世の階段を順調に登ってきたのでしょう。自民党というのはまさに「世襲格差社会」です。閣僚になるような世襲議員は「世襲格差社会」の勝ち組です。

自民党が格差問題に冷淡な理由の一端がここにもあるように思います。親の七光りで当選したのに、自分の実力だと勘違いしている世襲議員は多いです。幸運を神様に感謝して、ノブレス・オブリージュの感覚を持って、社会に貢献する世襲政治家もなかにはいます。しかし、そうでない人の方が多いと感じます。

世襲議員の多くは若くして国会議員になり、選挙基盤がしっかりしているため、当選回数が積みあがるのも早いです。当選回数重視の閣僚人事において、世襲議員は圧倒的に有利になります。率直に言って、大手企業や官公庁に就職していたら課長にもなれない程度の能力の世襲議員が大臣になっているケースをたくさん見てきました。当選回数と派閥の力学でそういうことはしばしば起きます。 

いっそのこと世襲議員は「貴族院」あるいは「華族(家族?)院」を設けて、そっちに集めてほしいくらいです。もちろん英国の貴族院と同じく権限は極力弱くして、貴族院議員は首相にはなれないようにします。そんなの無理でしょうが、そんなことを夢想してしまうほど、世襲議員は永田町で強い力を持っています。

政治の世界の「世襲格差」は、健全な市民社会ではありえないことだと思います。公職を親から引き継いでいいのは、宮内庁の鵜匠くらいだと思います。しかし、日本の政界では厳然たる「世襲格差」が存在しています。世襲議員を選ぶのも有権者(国民)です。国民のレベル以上の政治家は出てきません。

ちなみに英国には世襲議員がほとんどいません。親が国会議員の場合、子どもは他の選挙区から出ることが多く、いわゆる「世襲」という感じはありません。英国の有権者並みに日本の有権者が真剣に政治のことを考える時代は来るのでしょうか。

英国では「シチズンシップ教育」といって、市民としての社会参加の方法を子どもたちに教えています。著名な政治学者のバーナード・クリック氏がシチズンシップ教育についての指針のようなものをつくり、実践しています。そういう地道な試みから始めれば、2030年したら世襲議員は激減しているかもしれません。