マニフェストの反省とその次へ

民進党の参議院選挙公約について残念な点がひとつあります。それは多くの人の意見を反映させるプロセスが弱い点です。私のような小選挙区支部長も意見を言う機会があまりないままに、いつの間にか選挙公約が完成していました。

ただし、まったく意見を表明する機会がなかったわけではありません。党の地方組織(県連)の意見は全国幹事長会議やWeb会議で党本部に伝えられ、パブリックコメント的な意見集約もなされてきました。党政策調査会のテーマ別の研究会みたいなところも広く意見を求めており、私もメールで意見を送ったこともあります。

しかし、党員やサポーターを巻き込んで党全体でビジョンや政策理念を議論したり、意見集約したりする場はほとんどなかったと思います。民主党と維新の党の合併などもあって、参院選の公約を議論する時間がなかったのかもしれません。やむを得ない事情もあるでしょう。次の選挙公約づくりでは、改善が必要だと思います。

民主党政権が誕生した2009年のマニフェストの反省として、2つのポイントがあげられます。第1は、財源や予算に関する情報が十分でないのに、やたらと詳細な公約を列挙してしまったことです。できもしない公約を多数並べたものの実現できず、「マニフェスト違反」との批判を招きました。

野党が予算や財源について政府から詳しい情報を得るのは難しいです。私のあやふやな記憶によれば、保守党が野党だった頃に当時のキャメロン党首(現首相)は「野党に詳細な財源の提示を求めるなどということは、イギリス議会の伝統にはない」みたいなことを堂々と言っていました(たぶん)。*出典不明の情報ですみません。

第2にマニフェストにおける理念やビジョンの弱さです。政治学者の伊藤光利教授は、次のように言います。

民主党のマニフェストは、政策を貫く明確な共通の理念が存在しないために、目指す社会のビジョンを示すには至っていなかった。

マニフェストで大切なのは、政治理念であり、社会のビジョンです。そこが弱かったのが、2009年のマニフェストの欠点です。

先日のブログでご説明した通り、「マニフェスト」という言葉を使うのをやめて、「日本型マニフェスト」から脱却したのは正しい判断です。しかし、本家本元のイギリスのマニフェストから学ぶことはまだあります。特に労働党のマニフェスト作成のプロセスには学ぶ点が多いと思います。

イギリス労働党のマニフェストは、党幹部が関与して2年かけて議論します。党員や党外の意見を聴く機会(consultation)が2回行われ、その結果はマニフェストに反映されます。

労働党では、合同政策委員会、政策委員会、全国政策フォーラム、全国執行委員会、年次総会という5つの組織(会議体)が、マニフェスト作りに関わります。党首を含む最高幹部から成る合同政策委員会をはじめ、地域の党組織や支援組織も関与し、最終的には党大会で議決されます。

みんなで時間をかけて話し合って決めたマニフェストということなので、正統性は高くなり、議会で造反するのはむずかしくなります。党の求心力を高める結果になり、党員の帰属意識や参加意識を高めることにもなると思います。

イギリス労働党のホームページに掲載されていた「マニフェスト2015」の策定スケジュールをまとめると以下のようになります。

2014年1月 最終年の政策文書の素案作成

2014年2月 最終年の政策文書の発表

2014年3月~2014年6月コンサルテーション

2014年3月 年次党大会(特別大会)

2014年9月 年次党大会

2014年10月~2015年1月 コンサルテーション

2015年2月 マニフェスト素案の完成

2015年3月 党内の機関決定

2015年4月 正式なマニフェストの公表および印刷

長い時間をかけて丁寧に議論し、マニフェストを練り上げていることがわかります。ちなみに、保守党はもっと短期間でマニフェストを作るようです。貴族趣味の保守党と労働者の党との違いかもしれません。

民進党も、次の国政選挙の時には、時間をかけて丁寧に選挙公約を作るべきだと思います。市民参加によるオープンな議論を踏まえて民意を集約し、外部の学者や専門家の知見も踏まえて「オールジャパンの叡智」に基づく、ストーリー性のある選挙公約を作るとよいと思います。未来志向の社会ビジョンを示すことが、政権政党へ復帰するための第一歩だと思います。

憲法改正を防ぐとか、安倍政権の暴走を止めるとか、「マイナスをなくす主張」も大事です。同時に前向きな「未来志向の主張」も大切です。未来へのビジョンを次の国政選挙では強く訴える必要があると思います。そのためには次の国政選挙までに選挙公約の作り方(プロセス)の改革が必要だと思います。

*参考:伊藤光利、宮本太郎編 2014年『民主党政権の挑戦と挫折』日本経済評論社

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