「民進党シンクタンク」を創ろう

政党の売り物は政策です。国会で法案を審議するにも、行政の行き過ぎを監視するにも、議員提出法案をつくるにも、党の政策立案能力の強化は有益です。健全な批判や代替案を示すためには、正確な情報やデータに基づく体系的な調査研究が不可欠です。

どんなに優秀な政治家でも、ひとりで情報を集めたり政策を立案したりするのには限界があります。個々の政治家の個人技に頼るのではなく、政党というチームで組織的に政策を研究し、政策提言や情報発信を行うことが大切です。与党なら霞が関の役所の情報と人材(官僚)を使って政策を立案できます。しかし、野党は政府情報へのアクセスが限られるため、シンクタンクを活用することで弱点を補うことができます。

民主党時代の2005年から2009年まで「公共政策プラットフォーム(プラトン)」という党所属のシンクタンクが存在しました。プラトンでは、大学の研究者や実務の専門家、各界のオピニオンリーダー等を招き、国会議員も加わり、基本政策を議論していたようです。専属の研究者はいないものの、「ネットワーク型プロジェクトチーム」で政策提言を行っていたようです。

民主党シンクタンクの「プラトン」は、政権獲得後に小沢幹事長によって廃止されました。小沢氏は「シンクタンクにお金をかけるくらいなら、選挙運動にお金をかけるべき」という考えだったようです。しかし、政党としての長期のビジョン策定や中長期の将来予測のためにシンクタンクは有用です。選挙運動も大事ですが、政策立案も大事です。すぐれた政策を立案して有権者に示すことも立派な選挙運動だと思います。

かつては「霞が関が最強のシンクタンク」と言われていましたが、どうしても各省庁の省益(あるいは局益)や業界団体とのしがらみがあるため、現状を大きく変革するアイデアは出にくい構造があります。民主党政権は「官僚主導から政治主導へ」と訴えていましたが、官僚主導から脱却するためにはシンクタンクが重要だったはずです。にもかかわらず、当時の小沢幹事長は民主党のシンクタンクを廃止しました。

ちなみに、シンクタンクの本場 アメリカでは、政党所属のシンクタンクはありません。アメリカには1800以上のシンクタンクがあるといわれ、民主党系とか共和党系といった党派的な色はあっても、政党直属ではありません。アメリカのシンクタンクは、政策提言やその啓発普及のためのキャンペーンなどを行っています。日本のシンクタンク業界の特色は、アメリカに比べて数も少なく、官公庁の受注狙いの営利シンクタンクが多いことです。営利シンクタンクでは政治的な色を出しにくく、アメリカのシンクタンクのような役割は果たしにくいように思います。日本の状況にあわせて「政党所属のシンクタンク」という特殊なシンクタンクがあってよいと思います。

私の提案する「民進党シンクタンク」があれば、選挙公約(政権構想)もより良いものができると思います。自民党も民主党も選挙の直前になって「エイやっ」と短期間で選挙公約をつくるというパターンが過去には多かったです(今もそうかもしれませんが、最近の動向はわかりません。)。私もマニフェスト作りに関わったことがありますが、短い時間でつくるので穴がたくさんあります。相互に矛盾する政策があったりして、整合性が取れていないところもあります。思いつきのような政策集では、政権をとった後に苦労します。民主党政権の失敗のひとつは、マニフェストの政策の一部がいい加減だった点です(自民党もいい加減ですが)。

具体的に「民進党シンクタンク」を構想するとすれば、小さく生んで大きく育てるのがよいと思います。最初から多額の予算を投入して、大規模なシンクタンクをつくれるとは思いません。

1.民進党シンクタンクの事務局とスタッフ

シンクタンクも最初は専従スタッフ(事務方)が3~5人くらい、政策のとりまとめができる専門家(研究者や官官庁勤務経験者)が3~5人くらいでスタートしたらよいと思います。事務方のスタッフは今いる党職員でもいいです。今年の3月に維新の党を吸収合併してスタッフが増えているはずなので、党本部の人員には余裕があると思うので、そこから引き抜けば十分です。
政策スタッフには、学者やジャーナリスト、官庁勤務経験者(出向や任期付採用の経験者)といった人材がよいと思います。学問的な知識が豊富なだけではなく、行政や立法府の内部の動き方もわかる人がベストです。知識と実践経験のバランスの良い人が理想です。
シンクタンクのトップは閣僚経験者や政策通の元政治家でもよいでしょう。現職議員だと生臭すぎるので、元議員がいいかもしれません。トップは、政策に詳しく、選挙戦略に強く、政局(権力闘争)にも明るく、メディア対策に長けて、国会対策もわかる人が理想です。

2.民進党シンクタンクの政策研究の方法

自前の研究をガリガリやれるほどの人員ではないので、独自の研究はあまり手掛けず、他の研究機関やNPOなどとの連携を重視する必要があります。ネットワーク型のシンクタンクをめざすとよいと思います。

先日ブログで紹介した「リベラル懇話会」のような若手研究者グループ、大学の研究機関、構想日本のようなNPO法人のシンクタンク、連合総研のような支持団体の研究機関、子どもの貧困や障がい者支援等の分野で働くNPO、アドボカシー型NPO等とネットワークをつくり、最先端の研究成果や最前線の現場の知恵を集約するためのハブをめざします。

民進党シンクタンクの研究員の役割は、世の中で起こっている問題にいち早く気づき、良いアイデアも持っている人がどこにいるかを把握し、実際の政策に反映させることです。政策研究のコーディネーターとしての能力が求められます。

研究者や現場の専門家のデータベース的なものをつくり、議員が国会の質疑のために情報を集めたいときや専門家の意見を聴きたいときに、議員と専門家をつなぐ役割も担うとよいと思います。

3.民進党シンクタンクの情報発信

多くの国民の民進党の考えや政策を正しく理解してもらうために、メディアへの広報活動や一般市民向けの啓発キャンペーン、民進党地方組織との共催のイベント等も積極的に行う必要があります。

アカデミックな研究機関と民進党シンクタンクとの最大のちがいは、情報発信や啓発活動を重視する点です。公共政策の分野では、すばらしいアイデアを持っていても、学会の限られた人たちにしか知られていなければ意味がありません。政策のアイデアを世間の人に広く知ってもらい、その支持を集めることが大切です。わかりやすく論点を整理して、広く知ってもらう、教育的機能や広報機能がとても重要です。

以上のような「民進党シンクタンク」は、予算的にも非現実的ではないと思います。過去に民主党もやっていたことなので前例もあります。政権交代に向けてシンクタンクを創るべきだと思います。

*ご参考:城西国際大学 客員教授 鈴木 崇弘 先生「日本になぜ(米国型)シンクタンクが育たなかったのか?http://www.murc.jp/thinktank/rc/quarterly/quarterly_detail/201102_30/

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