2005/12/19
インドネシア津波被災地のユニセフ事業現地視察報告
現地視察の背景
2004 年 12 月 26 日に発生し、 20 万人以上の死者と行方不明者を出したスマトラ島沖地震・津波から1年になります。日本政府は津波被災地に対して、いち早く緊急援助に乗り出し、日本のコミットメント額は
5 億ドルにのぼり、うち 7000 万ドルがユニセフ ( 国連児童基金/ UNICEF )に対して拠出されました。
私はユニセフ議員連盟の一員として 2005 年 11 月 25 日から 11 月 29 日までインドネシアのスマトラ島アチェ特別州に現地視察に行ってまいりました。私は衆議院議員になる前の
2004 年 12 月末から 2005 年 1 月上旬にかけて日本の国際 NGO の緊急援助チームの一員としてインドネシアのスマトラ島で援助物資の調達・輸送等に携わっておりました。自分自身が関わった
NGO の一員としてスマトラ島津波被災地のその後が気になっておりましたが、今回ユニセフ東京事務所のアレンジで現地の状況を視察することができました。今回のユニセフ議連現地視察は、被災地のその後の状況、および、これまでのユニセフの支援活動の成果を確認するとともに、日本政府と国連、特にユニセフとのパートナーシップを強化することを目的と致しました。
ユニセフの活動
1年前の津波破壊のすさまじさを考えると、予想以上に復興が進んでいると感じました。復興支援の進捗が遅いという批判があると聞いていますが、1年前の絶望的な状況を知る者としては、困難な状況の中でインドネシア政府も国際援助機関もよくやっていると感じております。今回の現地視察では、ユニセフの教育と保健医療、水・衛生の分野の支援活動を中心に現場の様子を見させていただきました。
ユニセフの仮設教室や子どもセンターは地域コミュニティとの連携のもとに運営され、子どもたちに笑顔が戻っていました。安全な水の供給、マラリア対策用蚊帳の配布、予防接種キャンペーン等が広い範囲で実施されておりました。また、ユニセフは学校建設や教材・文具キット(スクール・イン・ボックス)等のハードや物資の供与だけでなく、教員養成(再訓練)や心のケアといったソフト面の支援も行っています。津波で多くの教員が犠牲になったり、被災後によその土地へ移住したりして、その補充のための新規採用教員のトレーニングが重要であり、ユニセフのソフトの支援は時宜を得た支援であったと思っております。
緊急フェーズから復興フェーズへ
ユニセフは緊急援助機関であり、かつ、開発援助機関でもあるという強みを活かし、震災後の早い段階から緊急援助と復興援助のギャップを埋める努力を積み重ねてきました。例えば、被災直後の緊急援助フェーズでは、ややもすると食糧や医療、シェルターといった分野に比べ、教育は後回しにされがちです。しかし、教育を受ける権利は、どんなときにも尊重されなくてはいけません。子どもたちにとって時間は貴重です。学校が閉鎖されている間も子どもたちは成長しています。学校の再開は喫緊の課題です。ユニセフは早い時期から仮設教室用テントを設置し、スクール・イン・ボックスの配給等を通じて、教育活動の再開を支援しました。その後、学校建設事業、新規採用教員の研修や現職教員の再訓練等の復興フェーズの支援へと援助の重点をスムーズにシフトさせてきました。教育分野において緊急から復興までシームレスに支援がなされており、ユニセフのアプローチは有効であると確信致しました。
平和の定着への貢献
今回の現地視察で特に印象的だったのは、アチェ特別州が外国人に開かれ、平和が定着しつつあることです。アチェでは過去30年にわたり反政府独立派ゲリラ(
GAM )と政府軍との紛争が続き、人権侵害が多数報告されており、外国人の立ち入りは制限されていました。 2005
年 8 月に和平協定が結ばれて紛争は一段落し、ゲリラ兵士の武装解除・社会復帰も進みつつあります。津波被災地の復興のために設けられた復興庁には、
GAM 関係者も勤務しており、 GAM との協力の下に復興が進められています。
こういった平和の定着の背景には、アチェの被災者の人たちの「もう戦争はこりごりだ」という住民感情があるのはもちろんのこと、国際社会の支援活動の成果があると思われます。津波災害をきっかけに、ユニセフをはじめ国際機関や国際
NGO 、海外メディア関係者が多数アチェに入り、彼らが言わば「草の根の停戦監視団」として機能しているように思われました。援助機関の国際スタッフが多数フィールドで活動していることで、紛争当事者が住民に対する人権侵害を行いにくい雰囲気が作り出されていると思います。さらに被災地の住民は、紛争が始まれば援助機関の外国人スタッフが避難し、国際援助が停止してしまうことに気付いているでしょうから、援助の継続を望む住民は紛争をますます望まないでしょう。国際援助がアチェにおける平和の定着に大いに貢献しており、国際社会の継続的な支援が求められています。
日本の ODA 資金の配分について
スマトラ沖地震・津波に関しては、日本政府は JICA や JBIC を通じた二国間援助(バイ)と国際機関を通じた援助(マルチ)の2つのチャンネルで支援を行いました。バイでは
JICA 国際緊急援助隊による緊急医療支援、 NGO への資金助成、インフラの復旧等を行い、マルチではユニセフの教育・保健医療、
WFP の食糧援助等を行っています。地震国である日本特有の耐震技術や防災技術、災害後の復興のノウハウといった「日本らしさ」をいかした
JICA による援助も重要であり、それぞれの専門分野に特化した国連の専門機関の援助も重要です。バイとマルチのそれぞれの援助機関の特性と強みをいかすことが重要であり、津波災害の援助に関して日本政府の
ODA 資金の配分は概ね適切であったと言えるでしょう。
結語
今回の視察を通じて、日本政府の拠出金を使ったユニセフの活動が成果をあげている状況を確認することができました。国連機関の通常予算分担率の引き下げが議論されておりますが、国連の各専門機関への拠出とは別個に考えるべきだという思いを新たに致しました。困難な状況にある子どもたちのために働いているユニセフをはじめ、人道援助機関や
WTO 等の専門機関に対する拠出を減らすことは、国際社会の平和と安定に貢献する日本というイメージを損なうことになりかねません。日本のソフトパワーの強化のためにも、より戦略的・効果的に国際機関と連携し、日本のプレゼンスを高めていく必要があると感じております。 |