北岡伸一JICA理事長は適格なのか?

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JICAの北岡伸一理事長は、国際政治や国際法の専門家であり、ご見識のある立派な学者だと思います。私のような浅学非才の者がコメントできないくらい、立派な学者の先生です。しかし、JICAの理事長として適切なのかといえば、まったく別の問題です。

北岡伸一理事長は、法政大学の森聡教授と連名で、「ミサイル防衛から反撃力へ:日本の戦略の見直しを」というタイトルの文章を中央公論の2021年4月号に投稿しました。その論考の安全保障上の観点から見た価値についてはふれませんが、一部を抜粋すると次のような記述が出てきます。

「中国によるミサイル攻撃を可能にする軍事施設などに対して通常戦力で反撃する『上流の拒否能力』、すなわち反撃力を獲得するべきである。」

「日本の反撃力の標的は空軍基地、海軍基地、物資・燃料集積拠点、対空レーダーサイト、通信中継基地、戦区司令部などの固定軍事目標とし、政治中枢、政府要人、ダム、発電所等は攻撃対象に含めないものとする。」

「日本が具体的に保持すべき反撃能力であるが、①トマホーク、②中距離弾道ミサイル、③極超音速ミサイルを段階的に導入すべきであり、このほかに長射程で高速の対艦ミサイルも保有すべきである。」

これらの主張は軍事的には妥当かもしれません。安全保障の専門家から見れば、ごく常識的な内容なのかもしれません。

しかし、現職のJICA理事長が公然とこのような主張をすることの対外的なイメージを考えるべきです。このような主張をするのは、JICA理事長を退任した後にしてほしいものです。

JICAは「人間の安全保障」の実現をめざす組織であり、「国際協力機構」の名が示す通り国際協力のための政府機関です。さらにJICAの業務のひとつは、紛争後の復興支援や平和構築です。

そのJICAのトップが「中国本土へのミサイル攻撃能力を持つべきだ」と公然と発信するのは、JICAの組織としてのブランドイメージを傷つけるものです。

JICAのパートナーとして活動しているNGOのなかには、紛争地における人道支援やコミュニティレベルの平和構築などに携わっているNGOもあります。平和構築や紛争地の復興に関わるNGOやJICA専門家の人たちは、北岡伸一理事長の発信をどう受け取ることでしょうか。

JICAの理事長にふさわしいのは、「人間の安全保障」の専門家であって、「安全保障」の専門家ではありません。別の人に理事長を代わってほしいものです。元JICA職員としてとても残念に思います。

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