自民党に政権担当能力があるのか? 【後編:立憲民主党は?】

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前回ブログ「自民党に政権担当能力があるのか?」の続きです。今回は逆に「立憲民主党に政権担当能力があるのか?」を検討するために、立憲民主党のコロナ対応の提言について述べさせていただきます。

しばしば立憲民主党に投げかけられる批判に「野党は批判ばかり」というのがあります。一部のメディアもそう書きます。国会(立法府)の重要な機能のひとつは、行政の監視です。最近の与党が本気で政府を批判することはありません。従って、政府の監視(=政府の批判)は、野党の重要な役割です。政府を批判しない野党は「吠えない番犬」みたいなもので、機能不全の野党です。ですから、野党が政府与党を批判するのは当たり前です。

しかし、同時に野党も批判しているだけではなく、多くの政策を提案をしていることも知ってほしいと思います。ただし、議員立法で法案を提出しても、コロナ対策で政策提言をしても、あまり報道されることはないため、一般市民の皆さまにはあまり伝わりません。

たとえば、立憲民主党は、昨年4月から新型インフルエンザ特別措置法の改正に向けた議論を始め、昨年秋の臨時国会中の12月2日に新型インフルエンザ特別措置法改正案を提出しました。しかし、あまり報道されませんでした。菅政権が特措法改正を言い出すよりも1か月ほど早かったわけですが、ほとんどの方はご存じないと思います。他方、小池都知事の政府に対する要請は何度も派手に報道されます。小池さんの発信力はすごいと思いますが、東京都のコロナ対策のパフォーマンスがすぐれてるわけではありません(*参照:片山善博「知事の真贋」文春新書、2020年)。

コロナ対策に関しては、立憲民主党は春先の早い時期からPCR検査体制の充実を強く求めてきました。一方、政府は「PCRの検査数を増やすと医療崩壊が起こる」という奇妙な理屈でPCR検査体制の強化にさほど力を入れてこなかったように見受けられます。国際比較しても日本の人口当たりのPCR検査数の少なさは目立ちます。いまでは民間企業が低価格でPCR検査を受けられるビジネスを始めていますが、政府が全力をあげて大学病院や大学の研究室、民間医療機関等の検査機材の活用を支援してPCR検査体制を強化していれば、ある程度は感染拡大を抑えることができたかもしれません。PCR検査に関しては、日本製の検査機器はすぐれているし、現場の人材も優秀で献身的です。政治的リーダーシップが欠如し、優先順位を誤っているだけだと思います。

また、立憲民主党は、Go Toキャンペーンが感染拡大を招く恐れがあるため見直すべきと政府に対して再三訴えてきました。感染拡大が続く状況下では、「外出奨励補助金」であるGo Toキャンペーンが適切でないことは明らかです。緊急事態宣言下で外出自粛が求められるなかで事業者を支援し雇用を守るためには、飲食店やホテル・旅館等への十分な補償が必要です。経営が悪化している事業者に対して政府が手厚い補償を行う方が、Go Toキャンペーンよりも感染防止対策と事業者支援・雇用確保を両立しやすいと思います。

立憲民主党の新型インフルエンザ特措法改正案は、国と地方の権限を明確にし、都道府県による緊急事態宣言発出等の要請、医療・検査体制の強化、給付金の支給等の措置を講じるものですが、与野党で知恵を出し合って法改正をするための土台になるものです。危機にあたっては与野党で争うよりも、話し合いながらより良い法案や予算案をつくっていくべきだと思います。

政府与党は政府案を一切修正せずにスピーディーに可決することだけを考えず、野党や専門家、国民の意見を取り入れながら、柔軟に法案修正や予算案修正に応じる「大人の国会対応」が望ましいと思います。多くの国民も、危機の最中に与野党で平行線の言い争いをするよりも、紳士的かつ前向きに議論している様子を見たいのではないでしょうか。総理大臣は自民党総裁でもあるので、与野党で超党派的な議論をするよう指示することができるはずです。野党の意見を柔軟に取り入れる度量を示した方が、菅内閣への国民の信頼も高まるというものでしょう。

 

民主党政権の政権運営から学ぶべき教訓と次の政権交代

コロナ危機と比較できるほどの国家的危機といえば、東日本大震災とそれに伴う福島第一原発事故があげられます。民主党政権時代に起きた危機ですが、そのときの反省と教訓を踏まえて、立憲民主党は政権担当能力を高めていかなくてはなりません。今年の年頭あいさつで枝野幸男代表は次のように述べました。

政権運営の経験不足や、あるいは政権から下野した以降の力不足等、さまざまな反省点を踏まえ、現状の残念ながら右往左往している政府に代わって機能する政府を作っていく政権の選択肢となり、このCOVID-19による国家的な危機から社会を守るということに向けて今年も一年全力をあげて取り組んでまいりたい。

まったく同感です。まず民主党政権の反省としては、初めての政権運営ということもあって、いわば「幼児的万能感」に包まれたスタートを切り、大人の対応ができなかったことがあげられます。

たとえば、霞が関の官僚機構は、敵ではなく、それぞれの分野の専門家集団であり、協働作業をすすめるパートナーです。官僚主導の弊害が現れたり、役所の既得権化した事業が継続していたりといったことがあれば、それを正すのは政治の役割です。しかし、そういう事例ばかりではなく、国家公務員を「悪らつな既得権集団」と見なすべきではありません。政治家と行政官は政策課題を解決するためのパートナーです。大臣や副大臣になった政治家は、緊張感をもって行政を監視しつつ、行政官を指揮監督するのが役割です。官僚を敵視していては、チームプレーができるはずがありません。

民主党政権でも官僚機構と適切な距離感をもって仕事をしていた大臣もいましたが、そうでない大臣がクローズアップされて目立っていました。菅総理のように官僚機構を人事権で強権的に支配するのも問題だし、官僚機構を敵視するのも問題です。「政と官」の適切な距離感と関係性は政治学や行政学でも重要なテーマですが、その点で優れていたのは片山善博総務大臣だったとと思います。私は、民主党政権では片山大臣が「ベスト大臣」だったと思います。片山大臣のような仕事のやり方をモデルにして政権運営できれば、立憲民主党政権はいまの菅政権以上に機能すると思います。

また、民主党政権の大臣の多くは、情報公開には熱心でしたが、大手マスコミの政治部カルチャーに批判的で、マスコミとの関係づくりを軽視し、マスコミを通じた説明が下手だったと思います。新聞社やテレビ局の政治記者の先には、読者や視聴者という名の国民がいます。マスコミ対応というのは、政権を担う上で重要な機能です。オープンな記者会見も当然重要ですが、丁寧な記者ブリーフィング(背景説明など)や情報発信の工夫も必要だったと思います。立憲民主党が政権を担うことになったら「政策コミュニケーション」を強化し、マスコミを通じて国民の理解を得られる政権運営をめざす必要があります。

また、前述の枝野代表のコメントでもわかるように、民主党政権時代に大臣、副大臣、大臣政務官を経験した議員が立憲民主党には大勢いて、民主党政権の反省を胸に次の政権交代をめざして準備を進めています。安倍政権も、第一次安倍政権はグタグタでポンコツでしたが、第二次安倍政権はしたたかにになりパワーアップして「安倍一強」と言われるまでになりました。安倍政権の政策の方向性は誤っていましたが、「政権維持能力」の高さは認めざるを得ません。安倍政権の強引さを真似るべきではありませんが、立憲民主党なりのやり方で安定政権をめざすことは大切です。

英国の政治家の言葉に「権力は腐敗する。絶対的権力は絶対的に腐敗する」というのがあります。安倍一強政治が長く続いた自民党では、権力の腐敗が進みました。秋元司議員のカジノ汚職疑惑、河井前法務大臣夫妻の選挙違反疑惑、安倍総理の「桜を見る会前夜祭」の問題、吉川元農水大臣の収賄疑惑など、自民党の国会議員に関わる「政治とカネ」の問題が噴出しています。腐敗し、その上、政権担当能力を欠く自民党政権が、これ以上続いていいのでしょうか。自民党に代わる選択肢になれるよう、立憲民主党はがんばらなくてはなりません。

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