菅政権の末期症状と自民党内政局の行方

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私は政局予測がいかに難しいかをわかっているつもりです。なので、政局予測はなるべく書かないように心がけています。しかし、最近の政局の動きが興味深いので、あえて書くことにしました。

 

1.官邸一極集中の終わり

このところ政府の方針に自民党や公明党が反発し、方針が撤回されたり、ブレたりする例が続いています。西村康稔コロナ担当大臣が酒類提供停止に応じない飲食店に圧力をかけようとしたものの、野党や自民党内からも反発があり、発言を撤回しました。田村憲久厚労大臣が示した軽症・中等症者の自宅療養方針も、野党のみならず、自民党と公明党からも批判が出て混乱しています。

コロナ対応では、田村厚労大臣、加藤官房長官、西村コロナ担当大臣、河野ワクチン担当大臣の4人の大臣が入れ代わり立ち代わりテレビに出ては発言したり釈明したりしています。省庁間のヨコの連携はかなりあやしいです。「船頭多くして船山に上る」という状況だと思います。官邸のグリップがきいていません。

安倍政権では官邸一極集中が進みましたが、どうやら官邸一極集中は有事(危機)には弱いようです。安倍超長期政権もコロナ対応でコケました。官邸一極集中の弊害は、各省庁の現場の声や専門知を活かせない点にあると思います。危機にあたっては個別の問題を分権的に対処する一方で、大きな方向性についてはトップダウンで決めることが大切だと思います。

しかし、菅総理は総理自らマイクロマネジメントに口を出し、変なところで箸の上げ下ろしまでチェックする一方、大きな方向性に関する発信は弱く、見通しはいつも過剰に楽観的です。危機のリーダーに必要な「自分の言葉で国民にメッセージを語りかける」という能力は皆無です。政治は言葉です。危機の時ほどそうです。危機の宰相としての適性はないようです。

 

2.中堅・若手議員が公然と菅総理を批判

自民党の青年局が幹事長に対して申し入れを行い、政治とカネの問題などで「丁寧に説明を尽くしていくべきだ」と述べ、若手議員が不満を公然と訴えるようになりました。以前の「安倍一強」のころとは雰囲気が変わった印象を受けます。自民党幹部は「青年局はのぼせ上っている」と憤ったと報道されており、自民党内の世代間闘争や総裁選に向けた派閥闘争の表れなのかもしれません。

また、高市早苗前総務大臣が、総裁選立候補の意思を表明しました。中堅・若手議員も候補者擁立をめざしています。当選5回の平将明衆議院議員は「中堅・若手からも総裁選に候補者を出したい」とツイッターに投稿し、同世代の他の議員は「われわれから出せれば、国民に『自民党にもまともな人がいる』と映る」と発言したと報道されています。この発言は、裏を返せば「菅総理はまともな人じゃない」と言っているのと同じです。中堅・若手議員が公然と総理総裁を批判する状況は、2007~2009年の自民党の雰囲気に似ています。さらに内閣支持率が下がれば、「菅おろし」の動きが本格化しても不思議ではありません。

 

3.自民党総裁選の行方

高市早苗氏が20人の推薦人を集められるか、中堅・若手グループが20人の推薦人を集められるかわかりません。本命の岸田文雄氏や河野太郎氏が出馬するのかも知りません。いくつかのシナリオを頭の体操として考えてみました。

 

1)無投票で菅総理が再選

無投票で菅総理の続投が決まった場合、「自民党には他に人材がいないのか」という批判をあび、自民党支持率はさらに下がるかもしれません。

 

2)菅総理と高市早苗氏の一騎打ち

高市早苗氏はゴリゴリのタカ派・守旧派です。家父長制的な右派イデオロギーの持ち主です。高市氏と比べたら、菅総理がリベラルに見えます。すでに人気のない菅総理と、ゴリゴリの極右的政治家の政策論争では、自民党の支持率向上には結びつかないでしょう。

 

3)複数の候補者が出て乱戦

顔ぶれにもよりますが、岸田氏や石破茂氏が総裁選に立候補すれば、それなりに政策論争も盛り上がるかもしれません。

盛り上がった総裁選で菅総理が再選されれば、支持率は上がりも下がりもしない気がします。自民党員以外の一般人にとっては「結局また菅総理か」というあきらめムードも出てくるかもしれません。

他方、岸田氏や石破氏が勝利を収めれば、ご祝儀相場で一気に自民党支持率・内閣支持率は上昇する可能性もあるでしょう。そのまま解散総選挙に持ち込むというのが、菅総理にチャレンジする総裁候補者の戦略でしょう。

今のところ、総裁選になっても菅総理が続投するという説が永田町では有力です。しかし、今後さらに内閣支持率や自民党支持率が下がればわかりません。総理大臣の交代も想定の範囲内です。

 

オリンピック報道が一段落したら、コロナ報道一色なり、その次に自民党の党内政局の報道が増えるでしょう。野党の報道は少なくなりそうです。マスメディアの政治部記者は、政策の報道よりも、政局の報道が大好きです。与野党の政策の対立軸よりも、自民党内の派閥間闘争の方がたくさん報道されることでしょう。

以上、私の政局予測でした。最後にジョン・ケネス・ガルブレイスの言葉です。

未来を予測する人は2種類に分けられる。何もわかっていない人。そして、何もわかっていないことをわかっていない人。

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