日本が直面する2つの脅威

いま日本は2つの差しせまった脅威にさらされています。1つは北朝鮮と米国との武力衝突に日本が巻き込まれる可能性。もう1つは朝鮮半島の緊張状態に悪乗りして、共謀罪を一気に国会通過させようとしたり、憲法に緊急事態条項を設けようとしたりしようとする危うい動きです。

前者は説明の必要さえないかもしれません。トランプ政権によるシリアへのミサイル攻撃は、あまり深く考えた結果とは思えません。思いつきなのか、国内の支持率アップ目当てなのか、化学兵器への憎悪なのか、わかりません。しかし、朝鮮半島で事を構えようかというタイミングで、シリアとその背後のロシアやイランと対決モードに入るのは戦略的に賢明とは思えません。シリアと北朝鮮の二正面作戦になってしまいます。あるいは、イスラム国やアルカイダ等のイスラム原理主義テロとの戦いを加えれば、三正面作戦になってしまいます。世界最強のアメリカ軍といえども三正面作戦はきついでしょう。トランプ政権の判断が、外交的な賢慮や軍事的な合理性に基づいているのか疑問です。

内政でさっそく行き詰まりつつあるトランプ政権が、国内の不満をそらすために対外的に強硬な手段をとることは十分予測可能です。無私の国家指導者は、短期的な支持率の低下を恐れず、長期的な国益や国際益を考えて判断します。しかし、歴史の審判よりも目先の世論調査を気にする国家指導者は、支持率低下を挽回するために軽率な判断を下しかねません。

さらに不安なことに、アメリカの精神科医35人が連名でニューヨークタイムズ紙に「トランプ氏は重大な精神不安定を抱えており、大統領職を安全に務めるのは不可能だ」という趣旨の投書をしたそうです。トランプ氏が選挙中から多くのウソをついてきたことは明らかだし、35人の精神科医が「サイコパス(反社会性人格障害)」だと断定しているのは、とても気になります。

日本は武力衝突を避けるためにあらゆる手をつくすべきですが、安倍政権が対話のチャンネルを開こうと努力している様子はあまり伝わってきません。つい最近ロシアのプーチン大統領を山口県に招いたばかりですが、そういうチャンネルを活用している様子は感じられません。武力衝突を避けたいという強い意志が見えません。

第2の脅威。軍事的緊張に便乗して共謀罪の制定や憲法改正に突き進む恐れは、これから本格化してくることでしょう。戦前の歴史をふり返っても、大正デモクラシーのころの自由で民主的な雰囲気が、満州事変の前後からだんだんと悪化し、軍国主義へと突き進んでしまいました。報道や言論の自由がなくなり、国民の多数が支持するなかで戦争への道を進みました。朝鮮半島情勢が緊迫しているからといって、国民の自由や権利を制限する法律を制定すべきではありません。「危機に対処するために国民が一致団結しなくてはいけない」といったロジックが、自由や権利を侵害するときに使われがちです。朝鮮半島情勢に対応してあらゆる危機に備えることは大切ですが、それを理由にして国内の異論を封殺したり、国会審議を形骸化したりすることは許されません。第2の脅威も深刻です。民進党は2つの脅威に真剣に備える必要があります。