歴史的役割を放棄した横畠内閣法制局長

横畠裕介内閣法制局長官が、参議院の予算委員会で、小西洋之氏に対して「(国会の機能は)このような場で声を荒らげて発言するようなことまでとは考えていない」と答弁しました。

内閣法制局長官がきわめて政治的な発言をしたのは異例です。内閣法制局は、内閣が国会に提出する法案を審査することから「法の番人」と呼ばれますが、政治的に中立な立場から厳正な法的判断をすることが期待されてきました。

牧原出教授(東京大学)は内閣法制局について次のように書きます。

内閣に属しながらもこれに対して独立性を保ちつつ、法令・条約案を形式面で徹底審査する組織が内閣法制局である。また、政府の憲法解釈について、国会で長官が答弁することで政府の憲法解釈を確定する組織でもある。

牧原教授は、内閣法制局長が「与野党間の調停者」として機能してきた経緯について次のように書きます。

憲法解釈の実務では内閣法制局長官が国会で答弁し、それへの野党との質疑応答を通じてさらに解釈が明確化され、国会の記録に残ることで確定していく。そのため、長官の答弁は事前に閣内で調整を終えた上で、野党との質疑応答を経ることになり、結果として与野党の憲法解釈を調停する機能をもってきた。(中略)

憲法解釈は、政権と与野党が国会審議の中で合意を蓄積しつつ確立するのであり、内閣と国会との実質的な共同作業であった。その際に法律解釈と答弁の能力に関して、長官は、首相・内閣はもちろんのこと、野党からの信頼を得ることが不可欠である。

野党議員を小ばかにするような発言をする横畠長官は、「野党からの信頼を得る」という内閣法制局長官としての条件を満たしていません。内閣法制局長官として失格です。

内閣法制局長官の「政治化」は第二次安倍政権になって始まったことです。これまでの慣例では、内閣法制局長官は、法務省、総務省(旧自治省)、財務省、経済産業省の4省の出身者から選ばれることになっていました。しかし、集団的自衛権の国会審議に先立ち、安倍総理は、慣例をやぶって、外務省出身の小松一郎氏を法制局長官に指名しました。首相の一本釣りで内閣法制局長官を選んだのは異例中の異例でした。

安倍総理の政治任用の小松長官は、きわめて政治色の強い内閣法制局長官でした。そしてその流れを受け継いだ横畠長官も政治色が強く、野党を小ばかにしたような思いあがった姿勢をとっています。実際のところ、野党がバカにされたのではなく、国会がバカにされたといえます。与党の議員も含め、立法府の人間はこのことに怒らなくてはいけません。内閣と国会の関係がおかしくなっています。政治の劣化、行政権力の肥大化が、確実に進んでいます。何とかしなくてはいけません。

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