いよいよ総選挙へ:立憲民主党の使命

いよいよ衆議院議員の総選挙が明日に迫りました。おととい立憲民主党の公認発表がありましたが、党本部からは公認発表の記者会見の連絡すらなく、たまたま会った民進党の県連事務局長からおしえてもらいました。バタバタの新党立ち上げで、党本部のスタッフも忙しいのでしょう。こんなに余裕のない政党立ち上げも珍しい気がします。それでも立派な公約集が完成し、党本部から送られてきました。短い時間でつくったわりに公約集の出来はなかなかです。立憲主義と平和主義を守り、まっとうな政治をめざすという点が強調されています。感慨深いものがあります。

立憲民主党からの立候補が決まってから、応援して下さる人が一気に増えた気がします。街頭演説をしていても「がんばって」と声をかけてくる人が増えました。安倍政治を終わらせたいという思いを持つ市民は多いと実感します。また、自民党ともうひとつの保守政党という保守二大政党では、吸収できない民意があるのだと思います。右側に自民と希望の党という保守政党が二つあり、左の極に日本共産党、そのちょっと隣に社民党があり、その中間がガラ空きになっているのが、いまの日本の政治空間です。中道政党の立憲民主党が入り込む余地はかなり広いといえます。

日本では「保守二大政党制」をめざすと主張する人が時々いますが、比較政治学の常識としてあり得ません。ふつうの二大政党制というのは、英国の保守党と労働党、米国の共和党と民主党、ドイツのキリスト教民主同盟(保守)と社会民主党など、保守陣営(中道右派)とリベラル・社会民主主義陣営(中道左派)から成ります。例外的に「極右政党と保守政党」という二大政党制はあり得ないことはないですが、それでも「保守の二大政党制」は長期的には理論的に成り立たないと思います。必然性がありません。

この10日間ほどの急な動きのなかで、民進党の解党と希望の党への吸収という突発的な事態があり、今回の衆院選に限っては「保守二大政党」の激突という、比較政治学の逸脱事例となります。しかし、しょせんは逸脱事例です。長期的には政治学の「法則」が作用して、自民党か希望の党のどちらかが整理されるか、あるいは合流するかして、ひとつの保守政党に収斂することが予測されます。学問の力はバカにできません。政治学の「法則」には逆らえません。

政治学の用語に「デュヴェルジェの法則」という法則があります。「小選挙区制は二大政党を生み、比例代表制は多党制を生む」というシンプルな法則です。衆議院で小選挙区制度をとっている以上、望ましいかどうかは別として、必ず二大政党に近い状況にいたります。

保守(右派)の側の二大政党の一角は、自民党あるいは希望の党、あるいはその二党が合流した新党になるでしょう。それに対抗する二大政党の一角は、中道リベラル(社会民主主義)の政党になるでしょう。この10年ほどの日本社会全体の右傾化が激しいため、中道左派プラス穏健な保守まで加えた政党がひとつ必要になります。

保守政党に対抗するもうひとつの政党は、再分配政策(格差是正策)に力を入れ、新自由主義からの脱却を図り、多様な価値観を認める寛容な社会をめざし(=ヘイトスピーチ等の外国人排斥に反対し)、ハト派的な国際協調の平和外交を志向する政党でなくてはなりません。新たに立ち上がった立憲民主党こそが、二大政党の一角をめざす有資格者です。

突然の前原代表による「上からのクーデター」により民進党が解体され、選挙の数日前にバタバタと設立することになり、立憲民主党の準備不足は否めません。候補者の数も十分ではないため、今回の衆院選において政権交代の主役になることは不可能です。

しかし、長期的に見れば、政権交代可能な政党をめざすことが、立憲民主党の使命です。時間はかかるかもしれませんが、中道リベラル陣営のまっとうな政党がひとつは必要です。私は、何としても当選して、立憲民主党の土台づくりに力を尽くしたいと思います。安倍政権のもとで日本の立憲主義、平和主義、議会制民主主義が危機です。当選したら、まっとうな政治を取り戻すために、まっとうな政党づくりからスタートします。