私の党改革案(2)在米国事務所の開設

ドイツ、韓国、台湾等の政党は在米国事務所を首都ワシントンD.C.に置き、「政党外交」を展開しています。ワシントンD.C.は米国の首都であり、米国議会と連邦政府機関があり、各国大使館があるだけではなく、世界銀行等の国際機関も所在しており、「世界のロビー活動の首都」と言ってもよいでしょう。

ドイツの主要政党は、必ず政党財団(政治財団・シンクタンク)をもっています。政党財団には、連邦政府から多額の補助金が入り、調査研究、政策提言、政策対話、国際交流、国際協力、国内外の留学生への支援等のさまざまな活動を行っています。ドイツの政党財団の在外事務所は世界中にあります(日本にもあります)。ドイツの主要政党は必ずワシントンD.C.に現地事務所を置きます。

こういった政党の在米国事務所は、与党より野党の方がより必要性が高いと思います。政権与党であれば、現地大使館を最大限活用することができますが、野党だとそこまで大使館を頼れません。野党が大使館の便宜供与に全面的に頼った場合、野党側の動きを大使館は逐一外務本省に報告します。外務大臣や副大臣は与党政治家なので、野党のワシントンD.C.での動きがすべて与党に筒抜けになります。

野党独自の政党外交や野党議員の議員外交をサポートするためには、在米国事務所を置くことが有効です。笹川平和財団の「SPF China Observer:中国の定点観測プロジェクト」(第2巻)という報告書の井上一郎教授(関西学院大学)論文に以下の記述がありました。

台湾において近年、国民党が次第に親中国姿勢を明らかにするにつれ、米政権は2020年1月の台湾総統選を念頭に、むしろ中国と距離を置く現政権の民進党への支持を強めているように見える。その背景として、米国における民進党ロビー活動がある。首都ワシントンでは台湾政府の事務所である駐米台北経済文化代表処とは別に、民進党は独自の事務所を有し活発に活動する一方で、国民党関係者の影は薄いといわれる。

台湾の民進党の効果的なロビー活動を見ても、ワシントンD.C.における政党事務所のプレゼンスの重要性がわかります。もうすぐ総選挙ですが、すぐに政権交代が起きた場合でも、政権交代まで行かない場合でも、どっちにしても総選挙後に「立憲民主党ワシントンD.C.事務所」を設置すべきです。

対米外交は、国務省日本部やいわゆる「ジャパン・ハンド」だけを見ていては誤ると思います。米国政治においては、ホワイトハウスの大統領だけを見ていてはダメで、米国議会の動向を注視することが重要だと言われています。

在米国日本大使館には政治部(政治班?)のなかに「議会班」があって、外務省プロパー職員2人と衆議院事務局と参議院事務局からの出向職員2名の4人くらいで議会をモニターしている、と聞いたことがあります。大使館は大使館として議会をモニターするのは当然ですが、立憲民主党の在米国事務所も米国議会の動向を見た方がよいと思います。

立憲民主党の在米国事務所は、日ごろから米国議会の動向や議員の考え方等をモニターし、日本から党幹部や議員が訪米するときのコーディネーターとして動くと同時に、日頃から立憲民主党の政策や議員を米国議会に売り込むことが仕事です。国はちがっても議員同士の方がわかり合えることもあると思います。また将来えらくなりそうな議員に早いうちからコンタクトして、立憲民主党や日本への好感度を高めるといった活動も可能だと思います。

ドイツや台湾の政党にできて、日本の政党にできない、ということはないでしょう。世間の人は「野党は外交に弱い」という偏見(?)をお持ちです。「外交の安倍」といいながら、たいした成果も出せなかった自民党外交もどうかと思います。ライバルの自民党にはない武器として在米国事務所の設置はよい考えだと思います。