地球温暖化による災害激甚化:河田惠昭著「日本水没」

今回の台風19号の被害はけた外れのひどさでした。被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。堤防がこんなに多くの場所で同時に決壊するニュースを見たのは初めてです。都市部でも農村部でも大きな被害が出ていて他人事ではありません。

地球温暖化(気候変動)による台風などの自然災害の激甚化は以前から予測されており、今後はこのような強烈な台風が毎年のようにやってくることでしょう。地球温暖化対策は待ったなしです。同時に災害対策の強化は必須です。

最近読んだ「日本水没」という本に出てくる予測が、今回の台風19号の被害状況とおどろくほど一致していて怖くなりました。著者の河田惠昭氏(京都大学名誉教授)によれば、東京は世界でもっとも水害に弱い都市のひとつだそうです。

河田氏は、地球温暖化が進めば台風が強大化し、雨量も増加するため、水害や水没が多発すると警鐘を鳴らします。気候変動により、過去のデータに基づく統計分析が信頼できなくなり、「想定外」の災害が増えると言います。

同書は、地下鉄や地下街の水没、利根川の氾濫、江東デルタの洪水氾濫などの危険性を述べ、台風にともなう高潮が発生すると東京湾沿岸で1万人超の死者が出てもおかしくないと指摘しています。

河田氏は、首都圏で大規模な高潮被害が発生すると、首都直下型地震に匹敵する人的・経済的被害が発生する可能性があると訴えます。この本に出てくる想定死者数を見ると、首都直下型地震(想定死者数:約2.3万人)よりも、首都水没(想定死者数:約15.9万人)の方が多く、衝撃的でした。

日本経済に壊滅的な打撃を与える災害が起きる可能性を認識する必要があります。さらには地震と地震による堤防決壊といった複合災害の可能性についても同書はふれています。地震で堤防が壊れると、天気は晴れているのに、ゼロメートル地帯が水没するといった思いがけない危険性があります。

台風19号の被害であらためて水害の怖さを思い知らされました。将来の水害に備えるために河田惠昭氏の「日本水没」を必読書だと思います。お薦めの本です。

*参考文献:河田惠昭、2016年、『日本水没』、朝日新聞出版