コロナ危機でわかった“エッセンシャル・ワーカー”

昨日(4月15日)のNHKの「ニュースウォッチ9」で新型コロナウイルス感染拡大のなか過酷な状況のもとで社会を支えるために働いている各国の「エッセンシャル・ワーカー」について報道していました。

テレビで見ていてメモもとれなかったのでうろ覚えですが、フランスのマクロン大統領は「エッセンシャル・ワーカー」を称賛し、アメリカでも「エッセンシャル・ワーカー」への感謝を表明する動きが出ている、といった報道でした(たぶん)。

私は「エッセンシャル・ワーカー」という英単語を聞いたことがなかったので、ネット検索してみました。最初にヒットしたFOX NEWSの記事によると「エッセンシャル・ワーカー」とは次のような定義と職種です。

*注意: FOX NEWSはトランプ政権べったりの偏った右派メディアですが、単純な事実関係についての報道なのでウソはないと思います。念のため申し添えます。

2013年の必須サービス法(Essential Services Act)によると、エッセンシャル・ワーカー(essential employee)の標準的な定義は「市民の生命と財産を守るために働いている人」である。一般的には、法執行、治安、食料生産、医療、緊急対応等に携わる労働者を指す。

今回のパンデミック以後、次の職種が追加された。新型コロナウイルスの研究や検査に関わる労働者、薬剤師や薬局の店員、病院等の警備員、公共交通機関の職員、農業者、雑貨店やレストランの従業員、ガソリンスタンドの従業員、通信関係の従業員、葬儀会社の従業員、医薬品や衛生用品等の製造業の労働者、軍や国家安全保障の関係者、上下水道の労働者、金融機関の従業員、コールセンターの従業員、保険会社の従業員、小売業者、保育士、運輸業者、マスコミ関係者、清掃員、ゴミ収集に携わる労働者、郵便局員、ボランティア団体スタッフ。

日本でもコロナ危機をきっかけに「社会にとって本当に必要な仕事は何か」がよくわかったのではないかと思います。いちばんわかりやすいのは医療関係者ですが、その他にも介護や保育、障がい者支援といった「人のケア」をする仕事は大切です。生きていく上でいちばん重要な食料や安全な水の供給に関わる仕事、医薬品や食料の運送に関わる仕事、バスの運転手さんや駅員さん、保健所や市役所で感染症拡大防止や生活支援に携わる地方公務員、警察官や消防署の救急隊員、スーパーやドラッグストアの店員さんなど、多くの人たちが社会を支える「エッセンシャル・ワーカー」です。

これまで立憲民主党の枝野代表や私も「介護士や保育士、障がい者支援といった社会的に必要とされている仕事をしている人たちの給与水準が低すぎるのは問題であり、せめて全産業平均程度まで待遇を改善すべき」と主張してきました。介護士や保育士、障がい者支援等の職種は、まさに「エッセンシャル・ワーカー」のど真ん中です。

上述の「エッセンシャル・ワーカー」のなかには、すごく高給取りの仕事はあまりありません。医師の給与水準が高いくらいで、多くの「エッセンシャル・ワーカー」の給与水準は飛びぬけて高いどころか、全産業平均よりも給与水準が低い職種も多いです。清掃員やスーパーの店員、警備員といった職種は最低賃金レベルで働いている人も多いと思います。

他方、たとえば投資銀行で金融工学を駆使してデリバティブ商品を扱っている人はかなりの高給取りが多いと思いますが、ゼロサムゲームのレントシーキング(サヤ取り)を熱心にやっているだけで、必ずしもGDPの成長に寄与しません(ノーベル経済学者もそう言っています)。逆に過剰なリスクをとってはリーマン危機のようなバブル崩壊による経済危機を招いてきました。こういった「非エッセンシャル・ワーカー」の給与が高すぎるのは、社会的公正という観点から納得できません。

コロナ危機をきっかけにして「社会にとって本当に必要な仕事は何か」をあらためて考える機会も多いと思います。「ポストコロナ社会」においては、「エッセンシャル・ワーカー」の処遇改善(給与水準の引き上げ)に取り組むべきだと思います。

その一助となるのが最低賃金の引上げです。中小零細企業の経営者にとっては最低賃金引き上げは厳しい課題ですが、政府の支援を強化して激変緩和措置をとり、中小零細企業への悪影響を最小化しながら、じわじわ最低賃金を上げる政策を考えるべきだと思います。

末筆ながらこの機会をお借りして日々の生活を支えていただいている日本の「エッセンシャル・ワーカー」の皆さまに心から感謝申し上げます。