久留米市、大牟田市の豪雨災害視察

立憲民主党福岡県連では、2度にわたり久留米市と大牟田市の豪雨災害の視察を実施しました。7月24日に枝野幸男代表といっしょに被災地に視察に行き、その日に行けなかった場所のフォローアップで7月30日に再度現地入りしました。

なお、視察とは別に、福岡県連青年局を中心に大牟田市で6日間にわたってボランティア活動を行いました。1日あたり5人以上のチームでボランティアを派遣しました。受け入れて下さった地域の皆さまからは「毎日チームで来てくれて、調整もしっかりしていたので、スムーズに活動できた」と好意的に評価していただきました。個々人でボランティア活動に入るより、同じ人がコーディネーター役を務めてチームで活動する方が、より効果的に支援活動を行えることがわかりました。

さて、今回の豪雨災害で市役所や県庁の担当者の皆さんの説明で印象的だったのは、「これまでにない大雨」という表現をたびたび使っていたことです。筑後地方では昭和28年の西日本大水害(死者:約千人)を基準にして災害対策を立てているそうですが、その時の豪雨以上の浸水被害だったそうです。

しかも、この何十年も経験していなかった豪雨が、この数年は立て続けに起きており、同じ地域が同じような被害を毎年のように受けているケースが多いようです。

「五十年に一度」の大雨が、毎年のように降る時代になりました。久留米市でいえば、2017年7月、2018年7月、2019年7月、2019年8月、2020年7月とわずか数年の間に大きな水害が5回も起きています。

明らかに地球温暖化(気候変動)の影響で水害が激甚化しています。これまでの基準があてにならなくなり、新しい基準を作らなくてはいけない時期にきています。地球温暖化は明らかなので、今後は「想定外」という言葉は使えないと思います。国も地方自治体もこれまでの「想定」を変えなくてはいけません。

排水場の老朽化といった問題もありました。防災インフラの投資の優先順位を上げなくてはいけないと思います。経済インフラ(新幹線や高速道路)より命を守る防災インフラを優先すべきです。

また、ダムによる治水も限界にきています。ダムは満水状態だと治水機能がなくなり、下手すると放水により被害を深刻化する可能性もあります。遊水地の設置など、河川の流域全体を視野に入れたインフラ整備が必要です。さらにソフト面の防災対策の強化も必要です。

聞いたところによると、2017年の九州北部豪雨では筑後川上流の朝倉市や日田市で土砂が大量に河川に流入しましたが、その土砂が川底に蓄積し、川が浅くなって氾濫が起きやすくなっているという事情もあるようでした。

被害にあった農家や住民の方のお話をうかがうと、この数年で何度も同じような浸水被害を受け、止水板を入れたりして対策を打っているのに、水の量が多すぎて対応できなかったそうです。

個々の農家や企業、個人の努力だけでは、どうしようもない状況です。毎年のように浸水被害にあう地域では、個人の住宅の浸水対策工事に補助金を出したり、事業所や工場の移転を促す支援をしたりと、きめ細やかな支援策が必要です。

秋の台風シーズン、来年の梅雨を見すえて、早め早めに手を打つ必要があります。地域の実情にあった支援策を打ち出すには、市町村や県といった地方自治体が中心になって支援策を検討する必要がありますが、財政的には国が前面に出るべきだと思います。国はお金は出すけれど、あまり口出しせずに、地方自治体が柔軟に使える交付金等を増やした方がよいと思います。

また、浸水した地域の多くは、以前はあまり人が住んでいない地域だったケースが多いようです。昔から住んでいる住民のお住まいは、ちょっと高台にあったり、かさ上げしてあったりというケースが大半です。

しかし、最近になって宅地開発された地域では、浸水の危険性を考えずに新築住宅が建てられているケースが多いように見えました。建売住宅を販売するときに不動産屋さんや事業者はきちんと浸水のリスクを十分に説明したのか、よくわかりません。

新規で宅地開発するときには、ハザードマップを参照しながら、浸水に備えた設計にしたり、販売前にきちんと入居予定者に説明することを義務づけたり、といった措置が必要ではないかと思います。

昔からの知恵で、水害を恐れて「あえて」家を建てていなかった平地に、最近になって商業施設や建売住宅を建てているケースで浸水被害が出ているようでした。

人口減少が進むなかで、土地の希少性は薄まります。条件の悪い土地から撤退することも選択肢のひとつです。計画的に空き地や空き家を整理して、遊水地や貯水池をつくったり、高台への移転を促進したりと、「人口減少のメリット」をいかした都市計画を考える時期かもしれません。

人口減少はデメリットばかりではありません。土砂崩れや浸水被害に遭いやすい土地に住んでいる住民に、空き地や空き家への引っ越しを公的に助成して、コンパクトシティ化を促すこともできるでしょう。

毎年のように浸水被害を受けている住民や農家の方々が、安心して暮らして働ける環境を整備するために行政の役割は大きいと思いました。これからの防災対策は、(1)地球温暖化による災害激甚化、(2)人口減少化のメリットをいかしたレジリエンス重視の街づくり、の2点をキーワードに考検討する必要があると思います。