福岡に戻って驚いたこと

久しぶりに福岡で暮らし、あらためて気づいたことがあります。関東から久しぶりに戻って気づいたこともあれば、私の故郷の筑紫野市原田のような田舎と福岡市中心部のちがいで気づいたこともあります。同じ福岡県でも田舎と都市部はけっこうちがいます。

1.  鶏肉食文化圏

福岡人はやたら鶏肉を食べることに気づきました。郷土料理の水炊きは有名ですが、メインは鶏肉というシンプルで地味な料理です。ラーメンとか、もつ鍋とか、コテコテ系の博多名物が多いなかで、水炊きはアッサリ系の代表選手です。

意外と知られていませんが、焼鳥屋さんの軒数の多さは東京の比ではありません。統計的にも福岡市の焼鳥屋さんの軒数は、全国有数の多さだそうです。東京では「焼鳥屋」だけではなく、豚肉(もつ)の「焼きとん屋」もあります。私も学生時代に三鷹駅前の「焼きとん屋」で江戸っ子のオヤジさん(当時70歳前後)に怒られながら3年バイトしていましたが、そういう「焼きとん屋」は福岡ではあまり見かけません。鶏肉の「焼鳥屋」が大半です。

さらに唐揚げの専門店もよく見かけます。僕が高校生の頃には唐揚げ屋さんは多くなかったので、最近のトレンドです。福岡人の鶏肉好きは、フィリピンやタイのような東南アジアの食文化に通じるものを感じます。福岡はアジアの香り(というか匂い)がプンプンします。それも福岡の魅力です。

 

2.日曜日の居酒屋

私の住んでいる室見駅周辺の居酒屋は日曜日営業が多いです。その代わりに月曜日や水曜日が定休日になっています。このあたりはオフィスもあれば、マンションや一戸建て、社宅もありますが、居酒屋さんには日曜日も人が入っています。日曜日に居酒屋という発想は、首都圏ではあまりないように思います。家族や趣味・スポーツの仲間で飲みに行くのでしょうか。職場を離れた人間関係で飲みに行くのが、日曜日の居酒屋さんということなのかもしれません。平日を1日定休日にしてでも、日曜日にお店を開ける方が儲かるというのは、ちょっと不思議です。

3.独特のめん文化

僕らが高校生のころのファストフードといえば、断然ラーメンでした。福岡で「ラーメン」といえば、もちろん豚骨の博多ラーメン(替え玉含む)です。福岡では醤油ラーメンや味噌ラーメンのお店はほとんど見かけません。かつては吉野家や松屋の牛丼も福岡にはありませんでした。学校帰りにラーメンを食べに行けば、必ず替え玉をしたものでした。しかし、久しぶりに替え玉を注文してみたところ、かなりきつかったです。もう若くないから替え玉はやめようと心に誓いました。

それから福岡人はうどん好きです。ラーメンと同じかそれ以上の頻度でうどん屋さんに行きます。肌感覚でいえば、女性はラーメン屋さんよりうどん屋さんによく行くように感じます。私の場合は、ラーメン屋さんよりもうどん屋さんに行く回数の方が多いです。ちなみに福岡ではソバ屋さんはあまり見かけません。うどん屋さんは多いです。

子どものころから「牧のうどん」というローカルのチェーン店が好きなのですが、久しぶりに「牧のうどん」で食べると「アレっ、ゆで過ぎ?」と思いました。そういえば福岡のうどんは、かなりやわらかいです。東京の人が食べたら「ゆで過ぎ」と思うでしょうが、それが福岡のスタンダードです。私の舌も少し東京化していましたが、このところ週に2回は「牧のうどん」に通うようになり、味覚もすっかり福岡仕様に戻りました。今どき東京でも博多ラーメンのおいしいお店はたくさんありますが、博多うどんのおいしいお店は東京にはあまりありません。県外の皆さま、福岡にいらしたら、博多うどんをぜひお試しください。ゆで過ぎじゃありません。

4.やたらと外国人が多い

もちろん東京の中心部も外国人は多いです。しかし、天神地区や博多駅周辺、キャナルシティ博多等における外国人率の多さは、首都圏以上だと思います。どうやら中国人よりも韓国人の方が多いようです。博多駅近くのスタバで仕事をしていると、お客さんのかなりの割合が韓国人や中国人のことが多いです。福岡市はクルーズ船の中国人観光客なども多いことで知られています。

さらにタ東南アジア系の外国人観光客も多いです。私はインドネシア語、マレー語とフィリピン語だったらほんの少しわかるので聞き耳を立てていると、私の知らない言語を話す東南アジア系の観光客の割合が高いです。近くにあるアウトレット(マリノアシティ)などではベトナムやタイからの観光客も多いようです。「街を歩いている外国人の比率」という点では、福岡市の中心部は首都圏以上に国際化が進んでいるかもしれません。

もうひとつ驚いたのが、領事館の大きさ(敷地の広さ)です。アメリカ、中国、韓国、オーストラリア、ベトナムが、福岡市に領事館を置いています。そのなかでもうちの近所の中国と韓国の領事館の広さと立派さには驚きました。東京にある中国大使館には何度か入ったこともありますが、敷地面積だけで比べると、福岡の中国領事館の方が広いように思います。東京の韓国大使館の前を何度も通りましたが、福岡市の韓国領事館の方が広々していて立派です。福岡市は東アジアの主要都市であり、日本を代表する国際都市であることを、再発見しました。

5.食べ物が安くておいしい

東京では、お金を出せば、おいしいものが食べられます。福岡では、そんなにお金を出さなくても、おいしいものが食べられます。今年2月に福岡に戻って以来、高級なものはほとんど食べていませんが、おいしいものはけっこう食べています。B級グルメ的なものでおいしいものがたくさんあります。ラーメン、うどん、もつ鍋、焼き鳥、餃子など、安くておいしいお店が多いです。ランチを外食ですませると、東京の値段から二百円引きくらいの相場観です。

近所のスーパーで買う刺身も安くて新鮮でおいしいです。福岡ではスーパーの刺身だと思ってあなどってはいけません。近所の西新商店街の魚屋さんは、パックに入った切り身をほとんど置いていません。さかながそのままの形で売っています。福岡の家庭は、自分でさかなをおろしているところが多いのでしょう。ちなみに、うちの父は大きなブリでも自分でさばけます(私にはできません)。博多の古い家ではブリをさばけないと、お婿にいけません(?)。もちろん野菜も安いです。産地はすぐ近くです。全般に食材が安くて新鮮です。

福岡の味付けは甘い味付けが多いです。「福岡のしょう油は甘い」と東京の人はいいます。上京するまで気づきませんでしたが、確かに甘いです。というか、東京のしょう油は甘みが足りません。どんな料理もけっこう砂糖を多めに使っている気がします。インドネシアのしょう油もこってり砂糖が入っていますが、博多のしょう油なんて東南アジアの島嶼部の味付けに近いものを感じます。バリ料理とか甘辛い味付けが多いですが、それに近いのだと思います。

福岡では豚足をよく食べますが、それもアジアっぽいですね。沖縄を除けば、豚足を常食にしているのは福岡人だけだと思います。博多の明太子なんて、どう考えても和食的ではなく、朝鮮半島の食べ物に近いと思います。それを特産品にしているのもアジア的です。

以上、高校生のとき以来、久しぶりに福岡で暮らしてみて気づいた点でした。福岡市は東アジアの都市だと再認識しました。東京にはない面白さがたくさんあります。