「野党」という言葉の限界

各党党首のテレビ討論を見ていて、今回の参院選では「野党」という言葉が意味をなさなくなっていることを実感しました。

自民党と公明党が「与党」であることはまちがいありません。民進党や日本共産党、社民党、「生活の党と山本太郎となかまたち」が、「野党」であることも明らかです。

しかし、「おおさか維新の会」や「日本のこころを大切にする党」、「新党改革」の党首は、アベノミクスを肯定し、安倍総理を持ち上げており、とても「野党」とはいえません。他方、政権入りしてないので、「政権にあずかる(与る)」という点で「与党」ではありません。

おおさか維新の会、新党改革、日本のこころを大切にする党の3党の共通項は、安倍総理を心情的に支持し、外側からサポートして憲法改正を実現したいという点だと思います。「与党」に入りたいと思っている政党なので、「与党準備政党」と呼べるかもしれません。あるいは「半与党」と言ってもよいかもしれません。

あるいは共産圏の国によくある「衛星政党」と言えるかもしれません。共産国家も一応は国内に反対勢力を認めているというポーズをとるために、小政党をつくらせるという手法をとります。現在の中国や旧東ドイツ等にも「衛星政党」がありました。それに性格が似た政党と言えるかもしれません。

テレビで9党の党首がそろって討論をしていても、公明党だけではなく、おおさか維新の会、新党改革、日本のこころを大切にする党が、一斉に安倍政権を擁護します。対する反安倍政権は、民進党、共産党、社民党、生活の党と山本太郎となかまたちの4党です。安倍政権支持勢力5党に対して、反安倍政権勢力4党という対立になります。

今回の参議院選挙では「野党」という言葉の使い方を厳格にした方がよいと思います。そうでないと有権者に誤解を与えます。おそらく次の2つの方法があると思います。

第一の方法は、「与党」と「野党」に加えて、安倍政権を支持する3党(おおさか維新、新党改革、日本のこころ)を指して、「半与党」とか、「衛星政党」とか、「翼賛政党」といったカテゴリーを作るというやり方。

第二の方法は、「安倍政権支持」と「反安倍政権」で二分するやり方。こっちの方がかんたんかもしれません。

いずれにしても従来の「野党」という言葉ではくくれない現象が起きています。新しい現象に対応した、新しい用語や報道の仕方を考えていく必要があると思います。そうでないと、有権者が正しい判断をする妨げになります。