北九州市の洋上風力発電

先日(7月29日)衆議院内閣委員会の視察で北九州市の洋上風力発電施設の視察に行きました。視察先は与野党理事の協議で決まるのですが、私が「洋上風力発電を見たい」と提案したら、与党側もこころよく応じてくれて、視察先の選定に入りました。

五島列島に行ったことがないので、個人的には五島列島の洋上風力発電施設に行きたかったのですが、どうやら北九州市の施設が最先端の実証実験をやっているようで、地元福岡県内に視察に行くことになりました。せっかくの委員会視察で近場に行くのはちょっと残念でしたが、最先端の実証実験を地元でやっているのなら仕方ありません。しかし、行ってみると、とても有意義な視察になりました。

北九州市は風力発電関連産業の総合拠点づくりを目指しています。単に地元の電力消費の一部を風力発電でまかなうという発想ではなく、洋上風力を含め風力発電の企業を集積し、日本の風力発電産業の中心地になろうと目論んでいます。すばらしい試みです。産業と人材の蓄積を考えても、北九州市らしい取り組みで、ぜひ成功してほしいと思います。

九州電力管内では自然エネルギー事業者(特に太陽光発電)の接続が問題になることもありますが、この洋上風力発電施設には九州電力関連企業も参加しているので心配無用です。九州電力もぜひ風力に全力をあげてほしいと心から思います。経済性と安全性の両方で原子力発電の未来は明るくありません。九州電力の風力発電シフトは大歓迎です。

洋上風力発電には、(1)海底に杭を打ち込む「着床式」、(2)海の上に浮いている「浮体式」の2種類があります。水深50メートルまでは「着床式」の洋上風力発電が適していて、水深50メートル以上は「浮体式」が適しています。

北九州市沖の響灘にはすでに「着床式」の実証実験施設があります。それに加えて新たに「浮体式」の実証実験施設が建設され、今年に入って稼働を開始しました。今回の視察では、天気にもめぐまれ、船で現場に行き、「着床式」と「浮体式」の両方の風力発電施設を見ることができました。

欧州のバルト海や北海のような遠浅の海だと「着床式」でよいのですが、日本の近海は遠浅の海が少ないので「浮体式」のポテンシャルが高いそうです。「着床式」の方が技術的にはやり易いようで、すでにかなりの技術的蓄積もあります。他方、「浮体式」の方は、まだまだ技術開発の余地が大きい様子です。

洋上風力発電施設は、実際に実物を見ると大きいです。直径50メートルほどの羽が動くわけで迫力があります。また「浮体式」といっても、プカプカ浮いている感じはしません。ガッチリとアンカーで固定され、ほとんど動きません。

まだ実験の途中ですが、「浮体式」風力発電の前途は有望です。言うまでもありませんが、日本は海に囲まれています。海は広いのでまだまだ設置できるスペースはあります。大量生産や技術革新で低コスト化が進めば、一気に普及する可能性があると思います。

陸上にも風力発電施設を設置できますが、海の方が風速があるので発電能力が高くなります。また陸だと周辺住民への影響なども考慮する必要がありますが、海だと漁業者との調整さえできれば比較的影響は少なくて済みます。洋上風力発電施設の一部は漁礁のような役割を果たし、魚が増えることもあるそうです。

バードストライク(鳥が発電機に飛び込んで死んでしまう事故)も最新の二枚羽の風力発電施設だとより少なくなっているそうです。我われが見た「浮体式」風力発電施設も二枚羽の発電機でした。もともと陸地よりは洋上の方がバードストライクも少なそうですし、生物環境面でも悪影響がより少ないようです。

風力発電施設は維持管理にも人手がいります。裏を返せば、雇用創出効果も高いです。風力発電でエネルギーと雇用を創出し、CO2排出と化石燃料輸入費の両方を削減できます。風力発電の推進は、一石二鳥どころか、一石四鳥のすぐれた政策だと思います。初期投資をファイナンスできて、買い上げ価格が安定すれば、確実に広がると思います。政府として力を入れるべきだとあらためて思いました。九州電力も風力発電に力を入れてほしいと切に願います。