安倍総理の自己都合解散は許されるのか?

河野洋平元衆議院議長は、安倍総理が臨時国会冒頭に衆議院を解散する見込みであることに関し、次のように述べました。

安倍さんは「できるだけ丁寧に国民に説明する」と言っていた。その説明もせずに、冒頭解散するというのは、私には理解できない。

権力の側が自分の都合の良いときに自分の都合で解散するというのは、果たしていいのかどうか、議論しなければならない。

私が衆議院議員1年生の時の議長が河野洋平先生でした。河野議長は自民党内の護憲派でした。河野議長は「若い議員を育てよう」という思いだったのだと思いますが、党派を問わずハト派の若手議員によくご馳走して下さいました。また、本を何冊もいただきました。尊敬できる政治家です。河野議長のおっしゃっていることは正論です。

私が落選した前回(2014年)の衆議院選挙は、小渕優子大臣の「政治とカネ」疑惑、松島みどり大臣の「ウチワ」疑惑を隠すための大義なき解散総選挙でした。今回は森友・加計学園の疑惑を隠すための大義なき解散総選挙です。どちらも、疑惑を隠しつつ、準備不足の野党に勝てるタイミングだという理由だけの解散総選挙でした。国会軽視も甚だしく、議会制民主主義の危機です。

しかし、異常な事態であるにも関わらず、安倍首相が好き勝手に衆議院を解散するのが当然視されています。これは本当に当たり前のことなのでしょうか?

世界を見わたせば、首相が好き勝手に議会を解散できる国は減少傾向です。イギリスでは2011年に「固定任期議会法(Fixed-term Parliaments Act 2011)」が成立し、首相の解散権を封じる決定をしました。下院の3分の2の議決がある場合を例外として、首相が好き勝手に下院を解散できなくなりました。

下院の3分の2の議決というのは、野党も解散に同意しないといけないということです。したがって、与野党が合意した場合を除けば、首相は解散できません。ドイツでは「建設的不信任制度」という独特の制度があり、やはり首相の好き勝手に解散できない仕組みです。

イギリスでは、首相の手から選挙時期の決定権を奪うことは、選挙の実施体制を公平なものとすると言われていました。また、5年間の下院議員任期が固定化されることで、頻繁な政策変更で市場や行政が混乱する可能性を減らします。首相にとっても、5年間落ち着いて政権運営できる利点があります。イギリス上院(貴族院)議員は選挙で選ばれないので、5年間もの長期間、国政選挙がないことを意味します。

5年間確実に政権を担えるという条件であれば、不人気であっても必要な改革がやりやすくなります。最初の2~3年で不人気でも必要な改革を進め、改革の成果が出てくる5年後に総選挙ということなら、かなり思い切った改革に踏み切れます。公共事業削減とか、環境税導入とか、資産課税強化とか、環境規制の強化とか、不人気な政策もやりやすくなります。選挙目当ての人気取りの必要性が減るので、派手で空虚な言動は減り、落ち着いた政策や穏健な外交がやりやすくなるでしょう。1年ごとに首相が代わることもなくなります。

国際比較でみると、日本は国政選挙が異常に多い部類に入ります。衆議院選挙はだいたい2~3年の間に実施されることが多く、それとは別に3年ごとに参議院選挙もやるとなると、国政選挙が多すぎる気がします。アメリカの下院は2年ごとの改選ですが、アメリカ議会はお手本にできる代物ではありません(アメリカ議会の機能不全は世界的に有名です)。

これだけ頻繁な国政選挙に統一地方選や東京都議選を加えると、しょっちゅう選挙をやっている感じです。そうなると毎度毎度の選挙対策に忙しく、政策立案や行政監視といった議会活動がおろそかになります。「選挙のための政治」という色合いが濃厚になります。政治家が落ち着いて政治に集中できる環境を整備するのも、政治への信頼を取り戻す第一歩ではないかと思います。

安倍総理が当然のように行使しようとしている「解散権」の意味や弊害について、冷静に議論する時期だと思います。少なくとも「大義なき解散」を国会もマスコミも許すべきではありません。解散権の濫用を許さないためにも、安倍政権にノーを突きつけなくてはいけません。

*参考文献:小堀眞裕、2012年、「ウェストミンスター・モデルの変容」、法律文化社

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