この本はどうすれば気候変動を食い止められるかの具体策を網羅的にとり上げた本です。何かひとつの対策で気候変動を終わらせられるわけではありません。さまざまな対策をいろんなところで同時並行で実施することが大切です。そのための処方箋リストがこの本です。その中でもいちばん興味深かったのは「アカウキクサ(アゾラ)」です。
アカウキクサは空気中の二酸化炭素を取り込み、炭素として固定します。アカウキクサは窒素も固定するので肥料(緑肥)になります。タンパク質豊富で動物(牛、豚、鶏、ティラピアなど)の飼料としても有益で、アカウキクサを食べた動物はオメガ3脂肪酸(EPA、DHA)が豊富で人間の健康増進にも役立ちます。
さらにアカウキクサはバイオ燃料の材料としてトウモロコシと同じくらい効率的ですが、トウモロコシ栽培より環境にやさしいです。著者は欧米人ですが、アイガモ農法の古野隆雄さんの事例も紹介されています。アイガモ農法はアカウキクサを水田で栽培し、アイガモの餌にします。アカウキクサは緑肥として使われ、化学肥料は使わなくても済みます。
このアカウキクサ(アゾラ)が、4900万年前に「アゾラ・イベント」と呼ばれる大事件を引き起こしました。当時の地球は今よりはるかに暑く、北極海も温暖で淡水化していて水面を埋め尽くしたアゾラが数十万年かけて大気中の二酸化炭素を吸収し、枯れて海底に沈むことで炭素を閉じ込め、大気中の二酸化炭素濃度を80%も減少させました。それが地球寒冷化の引き金となり氷河期に至りました。
アカウキクサは地球寒冷化で氷河期を招いた実績があります。氷河期までいくと人類も困ってしまいますが、適切なレベルまでアカウキクサを繁殖させれば、地球温暖化の流れを食い止めることに役立つはずです。私は投資にはあまり関心がありませんが、アカウキクサで有機農業やバイオ燃料生産に取り組むスタートアップ企業があれば投資したいと思っています(調べたら日本にはありませんでした)。
ちなみにアカウキクサのことを私はこの本で初めて知りました。地球が寒冷化したことは知っていましたが、その原因は知りませんでした。いまの中高生はこういうことを習っているのでしょうか。こういう大事なことは生物や地学・地理の授業できちんと教えたらよいと思います。国民の常識としてアカウキクサの驚異的な実力をみんなが知っていれば、農水省はアイガモ農法に莫大な補助金を投じたかもしれないし、アカウキクサでバイオ燃料を生産する企業に経済産業省はじゃんじゃん補助金をつぎ込んだかもしれません。私は首相だったら国をあげてアカウキクサを栽培し、地球寒冷化をめざして全力で取り組みますけどね。
*参考文献:ポール・ホーケン編著、2022年『リジェネレーション[再生]気候危機を今の世代で終わ
らせる』山と渓谷社
