CO2排出ゼロ社会は可能か?

スウェーデンの15歳の女の子が「CO2排出をゼロに」と言っても「そんなのムリだろう。」と思われる方も多いかもしれません。しかし、同じことを根拠を示しながら東京大学第28代総長が言うと「なるほど!」と思われるかもしれません。

先日、党の勉強会に科学技術振興機構の低炭素社会戦略センター長の小宮山宏先生(元東大総長)をお招きして講演を聴きました。十数年前にも小宮山先生の講演を聴いた記憶があるのですが、当時より技術革新と技術の低価格化が進み、より説得力が増したように感じました。小宮山先生のお話しがたいへん興味深かったので、小宮山先生が語る「CO2排出ゼロ社会を実現する道筋」をご報告させていただきます。

世界では太陽光発電、風力発電、リチウムイオン電池の低価格が進んでいます。例えば、最新鋭の太陽光発電施設のコストは10年間で10分の1になりました。同じくリチウムイオン電池の価格も10年間で10分の1になりました。すでに自然エネルギーは原子力発電より大幅に安くなっています。火力発電よりも安いです。残念ながら日本では自然エネルギーの低価格化が遅れていますが、そのうち世界標準に近づくことでしょう。

さらに省エネが進んで、先進国ではエネルギー消費が減っています。日本では2007年をピークに電力消費が減少しています。GDPが増えているのにエネルギー消費は減っています。家庭で電球をLEDに替えたり、二重窓にして断熱したり、太陽光発電を導入したり、ヒートポンプを活用したりするのにお金がかかりますが、10年程度で投資を回収できます(経済的に割にあいます)。

小宮山先生が強調する点は、すでにある技術でCO2排出ゼロ社会をめざせるという点です。原発をゼロにすると決断し、国が発電と送電を分離し、電力の自由化を進めれば、自然エネルギーの普及はさらに進みます。新しいタイプの揚水発電や林業近代化による木質バイオマス発電の強化といった方法も組み合わせれば、2050年にCO2排出ゼロ(かつ原発ゼロ)は可能だと小宮山先生は主張します。

グレタ・トゥーンベリさんの出身国スウェーデンでは林業の近代化が進み、日本の林業の5分の1のコストで木材生産が可能です。スウェーデンの方が一人当たり国民所得は高いので人件費は日本以上です。それなのにスウェーデンの林業の生産性が日本の5倍ということは、日本の林業には潜在的な伸びしろが大きいといえます。森林を適正に維持管理し、木質バイオマスで電力をまかなうことができれば、環境保全と山間部の地域活性化とCO2排出量削減の一石三鳥の効果が期待できます。小宮山先生の試算では林業近代化により、木材の完全自給が可能になり(現在の自給率は36%)、年7%のCO2を削減でき、林業が5兆円産業になるそうです。

いま日本は年間約20兆円を石油や石炭などのエネルギーの輸入に費やしています。省エネと自然エネルギーで輸入に費やす20兆円を削減できれば、その20兆円は国内で使われ、内需拡大や雇用増加につながります。いまアラブの産油国の王族のポケットに入っているお金を、国内の林業や自然エネルギーに投資すれば、経済成長につながります。経済政策としても自然エネルギーの普及は有効です。

自然エネルギーや蓄電池などの技術開発と価格低下のスピードは、小宮山先生の予想を超えていたそうです。このペースで自然エネルギーの低価格化が進めば、声高に原発ゼロを叫ばなくても、原発は価格競争で自然淘汰されます。

省エネ投資は10年程度で回収できるので、家庭や事業所、工場などの省エネ投資に積極的に公的融資を行うべきです。産業振興と家庭の電気代節約、さらにCO2削減とこれも一石三鳥の効果が期待できます。前向きな省エネ投資や自然エネルギー投資による市場の力で原発を淘汰することが可能だと、あらためて小宮山先生の講演を聴いて実感しました。

CO2排出ゼロ社会も原発ゼロ社会も実現可能です。政府がその気になれば必ず実現できます。その気にならない政府は取り替えましょう。