人口減少時代の都市

私は、本はなるべく買わずに、図書館で借りるようにしています。本を買うと、お金もかかるし、置き場所に困ります。そこで国立国会図書館の「分館」を最大限活用しています。国会図書館(本館)の本は献本制度で調達され、貴重な本なので持ち出し不可です。しかし、国会議事堂内にある国会図書館「分館」の本は、国会議員だと借りて持ち出すことも可能です。「分館」には入荷してない本も多いのですが、新書や流行の本ならそこそこあります。

そんなわけで2年ほど前に諸富徹教授(京都大学)の「人口減少時代の都市」(中公新書)を国会図書館の分館で借りて読み、ブログで書評を書きました。

*ご参考:2018年6月20日付ブログ「人口減少時代の都市(書評)」

人口減少時代の都市(諸富 徹 著)【書評】
ふと手に取って大当たりだった本「人口減少時代の都市」をご紹介させていただきます。地味な見た目の本ですが、とてもおもしろかったです。お薦めポイントは、①自治体の公営自然エネルギー事業、②空き家や空き地を買い上げ、再開渇したり緑地や公園として整...

あまりにも良い本だったので、手元に置きたいと思い、最近購入して再読しました。良い本は読むたびに発見があります。福岡市の状況を頭に浮かべながら読んでみると考えさせられます。

今後、大きな問題になると警告されているのが、いまだ止まらない大量の新規住宅供給である。現在のペースで新規住宅の供給が続けば、大量の空き住宅ストックが生み出され、市場価格の下落によって資産価値の毀損が生じる。良質な中古住宅ストックを社会の共通資産として残し、改修投資を継続することでその価値を、世代を超えて高めていくような投資形態にそろそろ移行する必要がある。

人口減少が進むなかで、いまだに政府は住宅ローン減税(年6000億円程度)などで新規住宅の建設を支援しています。目先の景気対策しか考えていない短絡的で愚かな政策です。加えて異次元の金融緩和で超低金利が続き、ローンも組みやすいため新規住宅建設は進む一方です。

2018年の住宅・土地統計調査によると、5年前と比べ空き家は3.6%増加して848万9千戸となり、空き家率は13.6%と過去最高です。それに毎年90万戸のペースで住宅建設が進んでいます。遠くない将来に空き家が1000万戸を超えると予想されています。社会全体で見れば壮大な資源の無駄を生み、個人で見れば将来の資産価値の下落を引き起こします。日本中でさらに空き家が増えます。

新築住宅の促進政策は愚策です。もちろん新築住宅を建てるのが合理的な家庭も多いでしょう。しかし、税金で新築住宅建設を補助するのは、個々の家計にとって合理的な選択でも、社会全体にとっては愚かな選択です。「部分最適を積み重ねても、全体最適にはならない」という典型です。国交省と国交大臣は何を考えているのでしょうか。

現在もなお道路や小学校・公園などのインフラが未整備な郊外地区で、新築住宅が野放図につくりつづけられている。こうした宅地拡張は、局所的な人口増加をもたらす。自治体は、新たに小学校を建設するなどの対応をせざるをえなくなる。これにともなう建設費用の増大、公共施設や道路などの維持管理、防災対策や災害時の対応、ゴミ収集エリアの拡大といった公共サービス費用の増大は、拡張エリアの新住民だけでなく、他のエリアの旧住民も負担する税金で賄われるのだ。

いま福岡都市圏では相変わらずマンションがどんどん建っています。戸建て住宅もどんどん建っています。福岡市で問題なのは、郊外の新築住宅の野放図な拡大です。中心部でマンションが建ってもそんなに問題はありませんが、問題は郊外の無計画な宅地開発です。福岡市の都市計画は、過去の失敗から何も学んでいないのではないかと思います。相も変わらず20世紀後半の高度経済成長期モデルの都市開発を進めているのが福岡市だと思います。

福岡市は、出生率が低いにも関わらず、他の地域からの人口流入で人口増を達成し、「人口奪い合いのゼロサム・ゲーム」の勝者になったことを勝ち誇っています。日本全体で見れば、福岡市の人口増加をよろこべる理由は何もありません。出生数増加による人口増ならよろこぶべきです。しかし、他の地域の過疎化を加速させながら、人口を吸い寄せる政策は「全体最適」の観点からは望ましくありません。東京都が典型ですが、都市は出生率が低く、田舎の方が出生率は高いです。都市人口を増やすことは、少子化対策としてはマイナスです。

また、前から住んでいる市民にとっては、新住民の流入は過密化や交通渋滞の原因です。人口流入で税収も増えるでしょうが、支出も増えます。ちなみに子育て世代に限っていえば、福岡市は人口流出の方が多いという特殊事情もあります。また、都市の集積効果は一定程度を超えると、逆効果になることもあり得ると思います。福岡市の現在の人口増加はそれほど楽観できません。

人口減少とそれにともなう経済規模の縮小が不可避なら、私たちは否応なくそれに適応しなければならない。重要なのは、過度に悲観的にならないことである。たしかに人口減少にともなって、経済の絶対的な規模は縮小し、財政規模も縮小する。だが、それは必ずしも危機を意味しない。人口減少局面に入っているのに、相も変わらず高度成長期のやり方を続けているから、危機に陥るのだ。人口減少社会の原理をよく理解し、それに適したやり方に変えていけば、危機は回避できる。それが「適応」だ。成長を前提とした発想、社会の仕組み、政策を、人口減少を前提としたものに切り替えていく。(中略)さらに重要なのは、「人口減少は都市にとってマイナス」という発想からの脱却である。

学生時代に「パラダイムシフト」という言葉は軽々しく使ってはいけない、と教えられました。しかし、この「人口減少はマイナスではない」という発想への転換は、都市計画の「パラダイムシフト」と言ってよいレベルだと思います。

多くの自治体が、自分のまちに人口を引き寄せようと、人口減少トレンドに抗うかのように子育て世代に焦点をあてた手厚いサービスや現金給付を競い合っている(中略)。だが、これはゼロサム・ゲームだ。人口増加を勝ち取った自治体の裏には、人口を奪われた自治体がいる。そのために投じられた財政資金は、本当に持続可能な都市発展にとって有効なお金の使い方といえるのだろうか。

まったく同感です。そして諸富教授は次のように言います。

いま、こうした人口吸引ゲームに興じる一方で、人口減少の先を見据えた長期的なまちづくりへの投資を怠っている自治体こそ、究極的には敗者となるだろう。

福岡市が「究極的には敗者」とならないとよいのですが、、、

*参考文献:諸富徹、2018年「人口減少時代の都市」中公新書

関連記事