国政レポート40号「災害激甚化と気候変動への対応」

いま地元の選挙区で配布中の国政レポート第40号の原稿を転記します。盛りだくさんの内容をA4で1ページ(裏表)に書いたので、舌足らずの部分もあるかもしれませんが、ご一読いただければさいわいです。

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国政レポート40号「災害激甚化と気候変動への対応」

今年7月の豪雨災害では福岡県でも多くの被害が出ました。被災された皆さまに心からお見舞い申し上げます。このところニュースで「数十年に一度の大雨」といった表現をよく耳にします。気候変動(地球温暖化)で台風や大雨が激甚化しており、「数十年に一度」の豪雨災害が毎年のように起こり、いまや「新しい日常」です。「大規模災害の日常化」への備えが必要な時代です。

温暖化で気温が上昇すると、台風の規模が大きくなり、高温で海水が膨張して高潮が発生しやすくなります。気候変動による災害の激甚化に対応し、①災害時の避難方法や支援体制の見直し、②防災教育や災害インフラの強化、③気候変動防止(温室効果ガスの削減)が求められます。

 

災害や危機に強い政府をつくる

私は二十代のころ国際NGOスタッフとして2001年のインド西部地震(死者2万人)、2004年のスマトラ島沖地震(死者22万人)等の緊急援助活動に従事していました。緊急援助要員としての訓練を受け実務にも携わりましたが、その経験を踏まえ、政府の災害対応体制を見てみると「優秀なスタッフはいるが、人数が少なく、指揮命令系統があいまいで、大規模災害に十分対応できていない」と思います。

以前に比べれば改善されましたが、省庁間のタテ割りの弊害もあります。役所のタテ割りで被災者ひとりひとりに寄りそう支援が難しい事例が多々あります。内閣府には、防災担当大臣がいて、防災担当職員がいますが、内閣官房と内閣府の専任職員は100人ほどです。米国の連邦緊急事態管理庁(FEMA)の職員数11,300人とは比較になりません。国土交通省(気象庁、海上保安庁)、総務省(消防庁)、防衛省、警察庁等の関係省庁の総合調整を行うには、現在の内閣府の体制では不十分です。名称は「緊急事態管理庁」でも「防災省」でもかまいませんが、十分な専任スタッフがいて平時から緊急対応プランを作成でき、緊急時に明確に指揮命令できる省庁を創設すべきです。

また、災害対応と被災者支援の最前線で働く市町村職員の削減が、地方自治体の危機対応能力を低下させています。コロナ対策の最前線の保健所は、1995年の845カ所から現在469カ所まで減少し、その間に保健所の常勤職員は約6,000人削減されました。平時からギリギリの人員で何とかやり繰りしている役所は、非常時にすぐにマンパワー不足に陥ります。公務員の削減が行き過ぎて人手不足になっていないかを検証し、災害対応に必要な人員は確保すべきです。

また、気候変動による災害激甚化に備え、レジリエンス(災害から回復する力)を強化する防災インフラが必要です。リニア新幹線、クルーズ船用の港湾施設、高速道路といった経済インフラは、人口減少社会では必要性が薄れます。他方、温暖化にともなう海面上昇に備えた堤防や医療施設の整備など、いのちを守るインフラはむしろ必要性が増します。

 

気候変動対策の本格化:エネルギーと経済構造の転換

これ以上の気候変動の防止も重要です。おそらく来年は米国でバイデン大統領が誕生します。バイデン氏は大統領就任1日目に、気候変動に関わるパリ協定に復帰すると宣言しました。バイデン氏は経済政策の柱を「グリーン・ニューディール」とし、再生可能エネルギーの普及、建物の省エネ改修、電気自動車の普及等に積極的に投資する方針です。
欧州連合はコロナ経済危機からの復興を「欧州グリーン・ニューディール」で実現すると宣言しています。米国と欧州は「グリーン・ニューディール」を合言葉に気候変動対策に取り組むでしょう。日本だけが「グリーン・ニューディール」に出遅れています。
これまで主流だった中央集中型エネルギー(原子力発電、火力発電)は、災害やサイバーテロに脆弱です。逆に分散型の再生可能エネルギーは、ネットワークの一部が壊れても被害が全体に及ばず、自然災害やテロに強く「危機に強い電力源」です。
また、災害に強く、かつ、エネルギー効率(断熱性や省エネ性能)が高い公共インフラに転換することで、脱炭素化と省エネ(=省コスト)化を図ることができます。省エネ投資は数年から十数年で投資額を回収できます。将来の経済的負担を減らす意味でも有効です。これらの投資は雇用を創出し、景気対策にもなります。日本でも「グリーン・ニューディール」で気候変動対策と景気対策の一石二鳥を狙うのが賢い投資だと思います。