海洋パーマカルチャー:コンブや海藻と地球温暖化

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またしても「ドローダウン:地球温暖化を逆転させる100の方法」の情報に基づいて、海洋環境保全や海洋での脱炭素化(炭素隔離)について書かせていただきます。私も初めて知りましたが「海の植林」という発想が、地球温暖化を逆転させる一助になるかもしれません。

海中で光合成により大気中の二酸化炭素から有機化合物を生成しているのは、植物プランクトンや「ケルプ」です。「ケルプ」とは大型のコンブのような植物(海藻)で、木や竹よりも何倍も早く成長します。海の中の「ケルプ林」は、「海の森林」と言えます。ケルプ林が再生した海は魚が増えます。これを「海洋パーマカルチャー」と呼ぶそうです。

そもそも「パーマカルチャー(Permaculture)」とは、「Permanent Agriculture(永続的な農業)」からの造語だそうです。もともと「culture」には「栽培」とか「養殖」の意味もあるので、「持続可能な循環型農業」という程度の意味のようです。その「パーマカルチャー」の海洋バージョンです。

海が生産的なのは、深海から冷たく栄養豊富な水が沸き上がるからです(湧昇)。しかし、気候変動で海水が温まると「海の砂漠化」が進み、海洋生物にとって住みにくくなります。植物プランクトンや海藻の生産性が低下し、海中の食物連鎖が衰えます。大気中の酸素の半分をつくっているのは、海の植物プランクトン、ケルプなので、海の生産性低下は大問題です。

ケルプ林を人工的に再生することで、大気中の二酸化炭素を取り込んで貯留することができます。ケルプ林は植物プランクトン等が豊富なので、カニやエビ、ウニ、魚やアザラシ、海鳥等も集まってきます。養魚場の役割を果たすので、漁業資源の回復に役立ちます。

さらにケルプを収穫して、食料、魚の飼料、肥料(硝酸塩、リン酸塩等を含む)、バイオ燃料にできる可能性もあります。海藻は油分が多いのでバイオ燃料の原料として有望ですが、陸上のバイオ燃料作物と異なり、肥料や農薬、灌漑用水が不要で、森林伐採の原因になりません。さらに季節的な水温上昇によるサンゴ礁の白化も防げる可能性があります。

古代ギリシャやアイスランドでは海藻を家畜飼料として利用してきました。特に飼料が不足する冬には、海藻が飼料として役立つそうです。海藻には牛の消化を助ける効果があり、メタンガスの発生量を抑える働きがあります(つまり牛のゲップを減らします)。消化が良くなり、より効果的に肥育することもできるそうです。

オーストラリアでは温かい海で育つ「カゲキノリ(鉤毛海苔)」を牛の飼料にまぜてメタンガス(=ゲップ)を減らす研究が進んでいます。ハワイではカゲキノリを「最高においしい海藻」と呼ぶそうで、人間も食べられるそうです(牛ほどは食べないでしょうが)。

カゲキノリを食べさせると消化効率が良くなるので、より少ない量の飼料(大豆やトウモロコシ)で牛を育てることも可能になります。飼料用穀物の生産を減らすことができるので、その点でも地球温暖化の防止に役立ちます。

海の「ケルプ林」の再生や海藻を牛の飼料にすることが、地球温暖化対策に有効だなんて思ってもいませんでした。私は四半世紀前の学生時代にフィリピンのミンダナオ島やルソン島で山間部の植林やマングローブ林の植林の活動に参加し、アグロフォレストリー研究センターでインターンをしていましたが、「海の植林」については無知でした。日本は海洋国家です。陸地の植林はすでに優秀なので、これからは「海の植林」にも力を入れていく必要がありそうです。

*参考文献:ポール・ホーケン編著 2021年「ドローダウン:地球温暖化を逆転させる100の方法」山と渓谷社

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