立憲民主党の国会改革(3)

同じネタで何度もブログを書くと読むほうも疲れると思いますので、今回で最終回とします。今回は国会改革の具体的な中身です。長くて恐縮ですが、本文をそのまま転載します。

なお、国会改革はかなりマニアックな世界で「理事会」とか「議員立法」とか、一般には知られてない用語が多々出てきます。あまり市民生活には関係のない手続き論の話も多いです。あまり気にせず、読み進めていただければ幸いです。

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1.議員提出法案の審議活性化

  • 委員会ごとに議員提出法案の質疑のための定例日(例:毎週金曜日)を設け、主に野党提出法案の審議を行う。
  • 野党の議員提出法案の審議にあたっては、与党議員にも十分な質疑時間を確保し、与野党の議員間で活発な政策論議ができるよう配慮する。

2.国会における虚偽答弁や国会提出資料の改ざん・ねつ造の防止

  • 野党提出の公文書管理法改正案(公文書改ざんの罰則強化)を早期成立させる。
  • 国会における虚偽答弁や国会提出資料の改ざん・ねつ造を行った行政官に対する罰則を強化する。
  • 上記2点に緊急に取り組みつつ、公文書管理法の抜本改革に着手し、政府からの独立性の高い公文書管理機関を創設する。

3.国会審議を通じた法案修正の活性化

  • 日本の国会では審議を通じて法案を修正するケースが少ない。与党が事前審査を行っているため、与党議員は内閣提出法案に無条件に賛成することが義務づけられている。そのため法案審議の過程で内閣提出法案に問題点が見つかった時でさえ、与党は数の力で政府原案をそのまま可決させることが多い。他方、先進民主主義国の多くでは、与野党で話し合って法案を修正することがふつうに行われている。内閣提出法案の問題点を指摘し、より良い法案にするために修正することは、与野党を問わず国会議員の義務であり、法案修正の活性化が必要である。
  • そのためには、与党は事前審査制度を改め、国会審議のなかで内閣提出法案を柔軟に修正できる環境を整えるべきである。野党も審議のなかで積極的に修正を提案し、与野党の熟議の上でより良い法案に変換できるよう努める。

4.国会に招致する政府参考人の範囲の拡大

  • 今国会では、問題案件の関係者を政府参考人として国会に呼ぼうとしても、慣行を盾に与党が拒否し、疑惑の解明が進まないケースが多発した。「安倍一強」と呼ばれる政治状況のもとで官邸に権力が集中しているにも関わらず、首相補佐官や首相秘書官を政府参考人として呼べないのは問題である。権限を有する者には説明責任があり、疑惑解明に必要とあれば、官邸の幹部公務員、事務次官、事件当時の担当者なども国会に政府参考人として招致すべきである。民間人ならまだしも行政官であれば、国会招致を拒む理由はない。政府参考人の範囲を広げる必要がある。

5.国会の資料要求の適正化

  • 現状では、委員会の理事会において政府に資料を要求しようとしても、与党理事が反対すれば資料を要求できない。理事会において理事から資料要求があれば、資料提出に応じることとする。

6.予算委員会および決算行政監視委員会の委員長ポスト

  • 決算行政監視委員会の委員長には野党議員が就任する慣行があるが、国会による行政監視を強化するため、それに加えて予算委員会の委員長にも野党議員が就任することを新たな慣行とする。

    * ドイツ議会には予算委員会の委員長は野党会派所属議員を充てる慣例がある。

7.国会議員間の自由討議の活性化

  • 現状では、法案審議がないと委員会がほとんど開かれないケースも多い。委員会で法案審議がない時期には、議員間の自由討議を積極的に行うべきである。自由討議であれば、政府側の負担もないため、柔軟に委員会を開催できる。超党派的な合意を形成する上でも自由討議の活性化は有益である。

8.女性議員が活躍しやすい環境の整備

  • 女性議員が出産前後に欠席できる制度はあるが、いわゆる産休のように期限が決まっているわけではない。女性議員の産休を制度化するとともに、国会議員の育休を設けて男女を問わず取得できるようにする。
  • 議員の産休中および育休中の代理投票制度を創設する。
  • 遠方の選挙区と国会を行き来する必要がある現職国会議員にとっては、通常の保育園とは異なるサービスが求められる。通常、国会議員は国会所在地に住民票を置いていないため、国会周辺の自治体の公的保育サービスは受けられない。そのため国会審議中の一時預かり等の保育サービスを国会が提供する必要がある。

9.国会に独立性のある財政機関を設置

  •  財政規律がゆるむなかで、政治から一定の独立性を持つ財政機関(*下記参照)を国会に設置し、中立的・長期的な観点から財政政策を調査・評価する。社会保障制度や税制などの議論にあたって、政局に左右されない中立的な財政機関が基礎データや将来予測を示す価値は大きい。

    * 国際的には独立財政機関(IFIs:Independent Fiscal Institutions)と呼ばれ、独立した(党派、政治、政府の影響を受けない)公的機関であり、政府が国会に提出する予算を国会審議に先立ち持続可能性に関して分析評価し、その結果を国会に報告する。報告はマスメディアや市民にも公開される。独立財政機関の例としては、米国の議会予算局、オランダの中央計画局、韓国の国会予算局、カナダの議会予算局、英国の予算局等があげられる。

10.国会に防衛監察委員(防衛オンブズマン)制度を創設

  • 防衛省・自衛隊の監視を強化するため、両院合同の防衛監察委員(防衛オンブズマン)制度を創設する。自衛隊員の自殺や自衛隊内のいじめ等が報告されるなか、自衛隊員の人権を守り、自衛隊内の規律を維持するため、防衛監察委員が中立的な立場から調査や査察を行う。防衛監察委員は、自衛隊員他からの苦情や請願の受け付け、安全保障委員会への勧告、年次報告書の作成等にあたる。

    * 北欧諸国等では「軍事オンブズマン」制度が導入され、兵士の人権擁護や軍隊内の非違行為の監視にあたっている。ドイツ連邦議会の軍事監察委員(Military Observer)は、主に元国会議員から選ばれ、議会内に50名程度のスタッフを擁し、陸海空軍基地等の査察や兵士からの訴願の受け付け、特定事案の調査等を行っている。ドイツ連邦議会においては軍事監察委員は非常に権威のある役職とみなされ、超党派的な支持を得られる大物政治家の元議員が就任するケースが多い。

11.国会の原発事故調査委員会の再設置

  • 国会に2011年12月に設置された東京電力福島原子力発電所事故調査委員会は、報告書の提出をもって役割を終えたとされ、2012年10月に事務局も閉鎖された。しかし、福島第一原発事故の真相が解明したとは言いがたく、その後明らかになった事実もある。国会に原発事故調査委員会を再設置し、事故原因の究明と再発防止策を原子力行政の国民への説明責任のあり方等を検討すべきである。

12.党首討論のあり方の見直し

  • そもそも英国の二大政党制を前提とした党首討論は、現在の日本の国会状況に適していない。党首討論よりも予算委員会等の総理入り質疑の方が、突っ込んだ議論ができる。45分の質疑時間を複数の野党で分けあう現状では、党首討論では実のある論戦は期待しがたい。
  • あえて党首討論の仕組みを継続するのであれば、①討論の時間を長くし(2時間程度)、②参議院で行われている質疑の「片道方式」を導入するとともに、③予算委員会等に総理が出席しない週は必ず党首討論を実施するといった措置を講じるべきである。

13.首相の解散権の制約

  • 首相による解散権の濫用といわざるを得ない状況が続いており、解散権に一定の歯止めをかける必要がある。英国は2011年に議会任期固定法を制定し、下院の3分の2の議決がある場合を例外として、首相の恣意的な解散は許されなくなった。文言上はいささか無理のある7条解散が慣例となっているが、政党間の覚書といった形で首相の解散権に制約を加える運用に改めるべきである。

14.臨時国会の召集期限の法制化

  • 臨時国会召集の要求があった場合、30日以内に臨時国会を開会することを法制化する。

15.国会の調査局や法制局の職員のさらなる能力向上

  • 衆参に分かれている調査局および法制局を統合し、重複を解消して浮いた人員を他の部署(前述の財政機関等)へ異動させたり、長期研修や人事交流に出すことにより、国会職員の専門性を高める。
  • 国会職員の府省や在外公館、国連機関等への出向や人事交流を増やし、国会職員の専門性や国際性の向上を図る。
  • 国会調査局で調査研究にあたる職員の採用は、衆参事務局の総合職・一般職の採用試験と切り離し、「研究職」として独自の採用枠を設ける。「研究職」には、新卒採用の他に博士号取得者や弁護士、実務経験者等の採用を行い、国会の調査研究能力を強化する。

16.質問の事前通告の適正化について

  • 質問通告が遅れる最大の理由は、委員会の開催日が直前に決まることである。理事会の翌日に委員会がセットされることも多い。そこで理事会(または理事懇談会)の翌日に委員会をセットすることを禁じるとともに、委員会開会の前々日までに質問を通告する慣行とする。
  • 大臣や政府参考人が「事前通告がないので答えられない」という言い訳を濫発する傾向がみられる。細かな数値や法規の詳細な解釈等に関する質問でない限り、事前通告の有無と関係なく、政府は国会での質問に答える義務がある。国会審議においては、議論の流れのなかで新たな疑問や論点が出てくることも頻繁にあり、「事前通告のない質問には答えなくてもよい」という姿勢は、国会への説明責任を踏みにじるものであり、許されない。事前通告を絶対化する政府の姿勢を改めるべきである。

17.国会の歳出削減

  • 国会の機能強化のためには予算と人員が必要であるが、ムダ削減によりそのための予算と人員をねん出する。
  • 委員長手当(開会中1日6000円支給。年間3000~4000万円程度)を廃止する。
  • 国会事務局の部署もスクラップ・アンド・ビルドし、統廃合できる部署の人員配置を見直し、国会改革で新設する部署や増強すべき部署の人員に回す。
  • 印刷物のペーパーレス化を推進し、報告書等の配布先の絞り込みを徹底する。

18.請願制度の改善

  • 請願の審査結果についてホームページ等で公開し、請願者が審査結果を知ることができるようにする。