いまこそ先進国の常識「住宅手当」の導入を

いま朝の駅頭活動で配っている国政レポート35号の原稿です。駅で受け取っていない方はご一読いただければ幸いです。

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いまこそ先進国の常識「住宅手当」の導入を

多くの先進国にはあって日本にはない制度が、「住宅手当(家賃補助)」という制度です。OECD加盟国のうち30か国が住居費への公的補助を行っています。日本でも生活保護のなかに「住宅扶助」という支援制度がありますが、対象は生活保護受給者だけで、対象者がきわめて限定的です。イギリスでは全世帯の17.6%、フランスでは全世帯の24.0%が住宅手当の受給対象になっており、日本に比べてより広い世帯を対象にしています。

日本の住宅政策は、住宅金融公庫(現住宅金融支援機構)による低利融資や住宅ローン減税により、新築住宅の供給量を増やすことに重点をおいてきました。戦後の復興期や高度成長期は住宅の数が足りなかったため、住宅新築の支援は合理的でした。また、住宅建設は経済効果が大きいため景気対策と見なされ、不景気になると住宅ローン減税などに予算が大盤ぶるまいされてきました。今年度も住宅ローン減税などに約8000億円の予算が投入されています。

しかし、現在では人口減少が進み、空き家が増えています。全国の空き家はなんと約850万戸もあります。空き家率は13.6%と過去最高です。これだけ空き家が多いのに、低金利の影響もあって福岡都市圏ではどんどんマンションや分譲住宅が売りに出されています。これ以上税金を投入して住宅の新築を促す必要はないと思います。また、住宅ローン減税は、住宅ローンを借りられない非正規雇用者や年金生活者には何の恩恵もない制度です。所得再分配の観点からも非正規雇用や低年金者の方々にも恩恵のある住宅政策をあらたに考える必要があります。

いま必要なのは、住環境の改善につながる住宅政策だと思います。かつて日本の住宅事情の悪さを揶揄する「ウサギ小屋」という言葉がありました。しかし、持ち家の平均床面積をみると、欧州の先進国とほぼ同水準です(もっとも米国はやはり平均床面積が広いですが。)。しかし、賃貸住宅の平均床面積をみると、欧州に比べて日本の賃貸住宅の床面積はかなり狭いです。住環境の改善がもっとも必要なのは、賃貸住宅に住んでいる人たちです。住宅手当で家賃を補助することができれば、賃貸住宅に住む人びとの住環境の改善に役立つケースも多いと思われます。

社会保障政策としての住宅手当

これまで住宅政策といえば、国土交通省が所管する「建設政策」でした。他方、欧州の福祉国家では、住まいの権利(居住権)は基本的人権のひとつと見なされ、住宅政策を社会保障政策(福祉政策)と位置づけます。居住権という基本的人権の観点や福祉という観点から住宅政策を見直す必要があります。公的な住宅手当(家賃補助)は、住環境の改善、あるいは、生活費のかなりの部分を占める家賃負担の軽減に役立ちます。所得格差が拡大するなかで再分配政策の強化が求められていますが、住宅手当は格差是正の手段のひとつになります。

また、高等教育における教育格差の是正という観点からも住宅手当の導入を検討すべきです。具体的には、親元を離れて大学や専門学校に通う学生の家賃も住宅手当の対象にすべきです。地方では大学や専門学校の数も種類も少なく、やむを得ず親元を離れて下宿する学生も多いです。授業料の負担に加えて、家賃の負担が家計を圧迫しています。首都圏や大都市圏の高校生は進学の選択肢が広い一方で、地方の高校生は下宿するための家賃負担により希望する学校に進学できないことも多いと思います。これは教育の公平性の観点から問題です。全国どこで生まれても希望する学校へ進学できる環境を整えるのは、国の役割ではないでしょうか。すべての子どもたちに平等な進学の機会を用意するのは、社会の責任だと思います。大学授業料の負担軽減に加えて、下宿する学生の家賃負担も軽減すべきだと思います。

したがって、私の提案する住宅手当の受給対象者は、①住民税非課税世帯(約3100万世帯)のうち賃貸住宅にお住まいの方、および、②大学や専門学校に通っている下宿生(約140万人)となります。仮に月に平均2万円程度(年間24万円)の住宅手当を支給するとすれば、私の試算では約2兆2600億円の財源が必要になります。新築住宅を支援する住宅ローン減税8000億円と比べれば大きな予算ですが、主に低所得者・低年金者や学生を対象とすることを考えれば、格差是正の観点から十分に妥当性があると思います。2019年度の社会保障給付額の総額は123.7兆円です。120兆円超の社会保障給付のうちの2.2兆円と考えれば、決して法外な額ではありません。GDPに占める住宅手当の割合は約0.5%となり、イギリスやフランスの住居手当がGDPに占める割合の約半分です。いまこそ日本型の住宅手当を創設し、居住権の保障と所得格差の是正、さらには高等教育の機会均等をめざすべきです。

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