河野外相へ対中国政策のご提案(1)

安倍政権も約6年になりますが、外交面であまり成果はあがっていません。北朝鮮外交は枠の外。経産省中心の対ロシア外交も今のところ成果は上がっていません。トランプ大統領にいいようにやられ、自由貿易協定(FTA)を「TAG」と呼ぶ欺瞞で乗り切ろうとしています。6年もやっている割に外交的成果に乏しいです。特に経済産業省主導の経済外交(原発、武器、インフラの輸出)は害悪の方が大きいですが、それも成功しているようには思えません。

また、安倍政権に入ってからの外交は、中国を変にライバル視して意識しすぎている気がします。最近になって少し中国との関係も改善されつつありますが、習近平体制が強固になったことと、トランプ大統領の対中国強硬姿勢のおかげでしょう。安倍総理の外交成果ではありません。

河野外務大臣も中国を意識しすぎです。アフリカ開発会議(TICAD)でも、その場にいない中国を意識しすぎて変な感じです。中国とアフリカ援助で競り合う必要はありません。中国の借款は日本に比べ高金利だし、フィージビリティ調査もいい加減だから途上国を借金漬けにする危険性もあります。環境や人権を無視する援助も中国の特色です。中国の援助は改善の余地だらけです。しかし、だからといって中国に変なライバル意識をもって「援助競争」するのはムダな努力です。

資源や市場の確保という国益を前面に押し出す利己的な中国援助を日本がまねる必要はありません。日本は今まで通り地道な技術協力や人道援助を中心にアフリカ援助を続ければよいと思います。また、中国との援助協調も視野に入れ、「どうすればアフリカの国々やアフリカの国民にとってベストの援助ができるか」という観点で中国と協力すればよいと思います。

中国外交を過剰に意識する傾向はやめた方がよいと思います。河野外務大臣も中国の王毅外交部長(外相)と海外出張の回数を競うのは、無意味だからやめてもらいたいと思います。国会での説明責任のある日本の外相に比べ、それのない中国の外相は海外に行きやすくて当然です。

民主的に選ばれた代表者からなる国会は中国にはありません。全国人民代表大会(全人代)というのはありますが、選挙で選ばれた国会議員から成るわけではなく、年に一度総会をやるだけです。中国の外相は国会議員から選ばれるわけでもありません。

それに対し、日本では国会で首班指名を受けた総理大臣が内閣を組織し、外務大臣も通常は国会議員から選ばれ、国会での説明責任があります。ろくに説明責任のない共産党一党独裁の国の外相と、議会制民主主義国の日本の外相で、海外出張の回数を競えば、国会出席義務のない中国は絶対的に有利です。そんな勝負はしなくていいです。

今春に出された自民党議員有志の「国会改革」提言は、「国会出席義務が厳しくて、大臣が海外出張に行けないから、国会出席義務を減らせ」と主張します。そういう人たちに国際政治学者の高坂正堯氏の次の言葉を贈ります。

外交ははなやかな仕事ではない。外交は基本的には、いくつかの相異なる利害の調整と妥協であり、国内から見ればつねに不満足な結果しか得られない。しかも、国内政治に見られるようなはなばなしい建設はそこにはない。はなやかな外交はほとんどつねに自壊する。それ故に外政家たるものはその仕事の負担に耐えなくてはならないのである。とくに、外政家にとって、議会はもっともつらい試練である。そこで得られるのは、せいぜい理解であり、賞賛は決して得られない。しかし、それにもかかわらず、議会における討議は外政家の責務なのである。

自民党の国会改革案には謙虚さがなく、議会軽視も甚だしいです。河野外務大臣も「外政家の責務」を忘れることのないようお願いします。

*長くなったので、次回に続く。