コロナ危機を考えるための5冊

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ちょっと前にある企画で「コロナの緊急事態宣言で外出自粛中の政治関係者にお薦めの本を紹介してほしい」という依頼があり、以下の文章を書きました。残念ながらその企画がボツになり、原稿が無駄になってしまったので、この場をお借りしてご紹介させていただきます。ご笑覧いただければさいわいです。

 

1位 ジョセフ・E・スティグリッツ 2020年「スティグリッツ プログレッシブ・キャピタリズム」東洋経済新報社

コロナ危機で「社会にとって本当に必要な仕事は何か?」が明確になったと思います。医療従事者、保健所職員、スーパー店員、宅配業者、保育士、バス運転手、駅員、農業者、生活必需品の生産者、市役所職員、ソーシャルワーカー等の「エッセンシャル・ワーカー」を評価し、雇用や労働のあり方を見直すきっかけになるでしょう。

また、市場原理では、危機を解決できないことが可視化されました。緊縮財政で医療費をカットしてきたイタリアやスペインで医療崩壊が起こったのは必然でした。コロナ後は「小さな政府」ではなく、「責任ある充実した政府」への転換が進むでしょう。

雇用や労働、政府の役割を見なおすために、スティグリッツ教授の「プログレッシブ・キャピタリズム」は必読書だと思います。

 

2位 金子勝、大沢真理、山口二郎、遠藤誠治、本田由紀、猿田佐世 2020年『日本のオルタナティブ』岩波書店

安倍政治に代わるオルタナティブ(代替案)を政治学者、経済学者、教育学者などのそれぞれの分野の専門家が提言します。立憲民主党のめざす社会像にとても近い「オルタナティブ」だと思います。短くコンパクトにまとめてあり、とても読みやすいです。政策の入門書として最適です。

ちなみに、遠藤先生を除けば、すべての著者と面識があります。金子先生、山口先生とは2か月に1度くらいはシンクタンクの勉強会でご一緒しています。教育学の本田先生には、十数年前に私が主催する私的な勉強会に講師で来ていただいたことがあります。

 

3位 ジャレド・ダイアモンド 2019年「危機と人類」日本経済新聞出版社

まさにコロナ危機の真っ最中に読むには適した本だと思います。日本、フィンランド、チリ、アメリカ、インドネシア、ドイツ、オーストラリアの各国が危機にどように対処したかを描く本です。世界的ベストセラーで読みやすい本です。個人的にはフィンランドの危機対応のすばらしさに感銘を受けました。なお、ジャレド・ダイアモンド氏の日本についての章は、月並みであまりおもしろくありませんでした。日本についてはジャレド・ダイアモンド氏より自分の方が詳しいからだと思いますが、間違ったことは書いてないと思います。

 

4位 ジェレミー・リフキン 2020年 『グローバル・グリーン・ニューディール』 NHK出版

ドイツのメルケル首相の環境・エネルギー政策のアドバイザーの著者の最新本。バイデン氏をはじめ米国民主党の大統領候補たちは、こぞって「グリーン・ニューディール」を訴えていました。米国、欧州、中国で進む「グリーン・ニューディール」に日本は大幅に出遅れています。脱炭素社会の実現は可能であり、経済成長と両立できると著者は訴えます。

また、気候変動による自然災害の激甚化に向け、社会のレジリエンスを強化すべきと説きます。脱炭素化には産業や都市の構造転換が必要です。レジリエンス強化には政府の役割は重要です。市場に任せるのではなく、政治(政府)が主導して脱炭素化を進めなくてはいけませんが、その道筋を示す本です。

 

5位 ヤシャ・モンク 2019年 『民主主義を救え』 岩波書店

コロナ危機で「強い国家、強い指導者が必要だ」という風潮が広がり、強権政治やポピュリズム政治がはびこる可能性があります。コロナ後の社会で強権ポピュリズム政治がはびこらないように、立ち止まって「民主主義とは何か」を考えることも大切だと思います。新進気鋭の政治学者ヤシャ・モンク氏の「民主主義を救え」は、ポピュリズム政治の現状を分析し、その上で民主主義を救う道筋を議論します。

 

*「ハードカバーを読むのはしんどい」という人に「お薦め新書5冊」です。薄くても読みごたえのある新書を5冊お薦めします。

1位 宇沢弘文 2017年 『人間の経済』 新潮新書

2位 諸富徹 2018年 『人口減少時代の都市』 中公新書

3位 金子勝 2019年 『平成経済 衰退の本質』 岩波新書

4位 山下祐介 2018年 『都市の正義が地方を壊す』 PHP新書

5位 井手英策編 2019年 『リベラルは死なない』 朝日新書

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