トランプ政権で気の毒な米外交官

たまたま「パブリック・ディプロマシー戦略」(金子将史、北野充編、PHP研究所)という2年半ほど前に出版された本を読んでいたら、在日米国大使館の広報・文化交流担当公使のマーク・J・ディビッドソン氏の小論文が載っていました。

そのなかで米国大使館の広報戦略の課題の例として次の3つがあげられていました。

  1. 東アジア・太平洋地域の平和と安全を維持する最善の策
  2. 環太平洋パートナーシップ協定(TPP)が実現する、より透明な貿易の利点
  3. レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー(LGBT)を含むあらゆる人々の完全な人権の追求に価値を見いだす理由

トランプ大統領は、第一の課題にあまり力を入れそうにありません。第二の課題にはそもそも反対です。第三の課題にも後ろ向きでしょう。これまで米国大使館が広報の柱としてきた政策課題は、どれもトランプ大統領のお気に召さないテーマばかりです。

もともと孤立主義はアメリカの伝統でした。モンロー主義のような発想が復活しても、なんら不思議ではありません。モンロー主義は「中南米はアメリカの勢力圏」という前提でしたが、トランプ主義は隣のメキシコからも孤立しようとしており、さらに狭い範囲で孤立するつもりのようです。孤立しても構わないのなら、外国人にアメリカを理解してもらう必要もありません。孤立主義の大統領の下では、国務省と米国大使館が広報外交に力を入れることもなくなるでしょう。

広報担当の米国外交官の仕事は、トランプ政権になったら大きく方向転換せざるを得ないでしょう。あるいは、その仕事自体がなくなるかもしれません。これまでの努力が無になるような方向転換かもしれません。広報担当の米国外交官の皆さんは、ほんとうにお気の毒です。

他方、日本の外務省の広報外交はこれからさらに重要になります。いかにして日米同盟の重要性や中国の強引な海洋進出の危険性を、トランプ政権の要人に理解させられるかが死活的に重要です。日本の外交官は、これまで以上に広報外交に力を入れなくてはいけません。また、アメリカ以外の味方を増やし、その関係を強固なものにすることも同じく重要です。トランプ政権がスタートすれば、日本はより主体的な外交が求められます。

関連記事

  • 終戦の日終戦の日2018年8月16日昨日は平成最後の「終戦の日」でした。初めて福岡県主催の戦没者追悼式に出席しました。これまで東京で行われる全国戦没者追悼式には何度も出席したことがありますが、地元の福岡で出席するの […]
  • 河野外相へ対中国政策のご提案(2)河野外相へ対中国政策のご提案(2)2018年10月18日前回に引き続き、河野外務大臣への対中国政策のご提案です。 中国の国家主席や首相、外相が、頻繁にアフリカなどの小国の首脳との会談を好むのは、中国外交の内向きな性格と戦略欠如の […]
  • 河野外相のパレスチナ外交河野外相のパレスチナ外交2018年9月2日アメリカ政府は、パレスチナ難民を支援する国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)への資金拠出を凍結しました。トランプ大統領は無茶苦茶です。パレスチナ難民支援事業の一部の活動が […]