参院選対策としての韓国向け輸出規制

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慶応大学の小林良彰教授が選挙直前に全国の有権者3,000人を対象に行った意識調査によると、今回の参院選では経済問題は投票行動にあまり影響を与えず、むしろ日米関係、日韓関係などの外交問題が影響を与えたようです。

7月27日配信のビデオニュース・ドットコム記事「参院選で示された「民意」の中身を検証する」の一部を引用すると;

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190727-00010000-videonewsv-pol

今回、有権者の投票行動に影響を与えたと見られる安倍政権の外交政策の中でも、とりわけ韓国に対する厳しい輸出規制が高く評価されていることもわかった。現在日本が行っている半導体製造材料の輸出規制に対しては、61.7%が賛成しているほか、ビザなし入国の制限や韓国製品への関税の増税など、より厳しい措置を支持する人も5割を超えていた。

韓国に対する輸出規制の発表のタイミングを見て、私は以前から「単なる参院選対策」だと思っていました。7月3日付の私のブログで次のように書きました。

輸出規制発表のタイミングも気になります。大阪のG20は目立った成果もなく、参院選の支持率アップに貢献しませんでした。金正恩とトランプの電撃首脳会談に注目が集まり、安倍総理の影が薄くなりました。G20で支持率アップという思惑が外れたので、別の手を考えた結果、輸出規制という強硬な手段を用いたのかもしれません。

*ご参考:2019年7月3日付ブログ『「害交の安倍」では?』

https://www.kou1.info/blog/diplomacy/post-3157

徴用工問題と輸出規制が関連していることは、誰の目にも明らかです。無関係だと説明しても、中学生でもだませません。政府高官が関連を認める趣旨の発言をしている以上、徴用工問題への報復として輸出規制が考案されたのは明らかです。

私の7月3日の指摘は正しかったと思います。やはり参院選対策として打ち出した強硬策だったと思います。官邸の意図した通り結果になっているので、ある意味で「お見事」と言えます。まんまとしてやられました(しかもこの手に対して短期的には野党側に対抗手段はありません)。

徴用工問題に関しては韓国側の対応に問題があったと思います。日本側の法的主張の方が正しいと私も思います。しかし、日韓以外の第三国が日韓の論争をどうみるかを考えれば、日本はより慎重な対応をとるべきでした。第三国のマスコミも「徴用工問題への対抗措置として日本が輸出規制を行った」という趣旨の報道をしています。

外交の世界では「自分がどう思うか」よりも、「相手(あるいは第三者)がどう受け取るか」が重要です。国内向けに勇ましいことを言っても、客観的な第三者はなかなか理解してくれません。第二次大戦中(日本占領下)の出来事に関しては、韓国に第三国の同情は集まりがちです。よほど慎重な対応が必要でした。

今回、徴用工裁判という「局地戦」を拡大して、「全面戦争」にしたのは、安倍政権の側です。そして、日本の輸出規制のおかげで、低迷していた文大統領の支持率は改善し、文大統領はさらに日本に対して強硬な発言をしています。日韓の両国のトップが、相手国をたたくことで支持率をあげようとしている異常な事態です。鏡を見ているような状態です。

輸出規制の導入は、長期の国益を犠牲にして、参院選の勝利という党利(あるいは安倍総理の私利)を得ようとするもので、到底許されるものではありません。排他的なナショナリズムをもてあそぶと、いつかコントロールできなくなってしまうリスクがあります。短期的にも経済面でしっぺ返しが来ることでしょう。

トランプ大統領が仕掛けた米中貿易戦争が世界経済に影を落としつつあります。徴用工問題はもともと貿易戦争というより、韓国国内の司法と日韓の外交の問題でしたが、安倍政権の輸出規制のために貿易戦争化しつつあります。日韓貿易戦争は、きっかけは徴用工裁判ですが、本格的な実力行使を先にやったのは日本側だと言えます。米中貿易戦争に加え、日韓貿易戦争に、今の日本経済が耐えられるか疑問です。

日韓の貿易戦争で一番不利益を被るのは、ハイテク産業や観光業などでしょう。韓国側のダメージも大きいでしょうが、日本側も無傷では済みません。輸出規制の結果、韓国は官民をあげて代替品を開発・製造するでしょうから、日本企業の強力なライバルが誕生することでしょう。

中国が日本向けのレアアースの輸出規制をかけた時に、日本企業は必死になって代替品を開発し、中国以外の輸入先を開拓しました。結果的に中国のレアアース産業は大きな打撃を受けました。韓国も日本と同じことをするでしょう。打撃を受けるのは日本企業です。

福岡市を訪れる外国人観光客で一番多いのは韓国人です。そういうところにはまっさきに影響が出ます。お土産品屋さん、ホテル、観光地等に悪影響が出ることでしょう。安倍政権が人気取りでやっている強硬な対韓輸出規制の損失を、安倍総理や自民党が補填してくれるとは限りません。

日本と韓国は未来永劫、隣国です。日韓の良好な関係は日韓双方の利益です。日韓の連携が壊れたから、竹島上空にロシアと中国の偵察機が共同でやってくるわけです。日韓がいがみ合えば、利益を得るのはロシアや中国です。それにより日本の安全保障環境は悪化するだけです。

目先の人気取りで輸出規制を導入し、日韓関係、日本経済、日本の安全保障にダメージを与えるのは賢明ではありません。冷静になって状況を見れば、愚かな対立は早めに鎮静化すべきなのは明らかです。ナショナリズムをもてあそんで政権支持率を維持しようという発想は危険です。一刻も早くやめるべきです。

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