住宅ローン減税より住宅補助手当を

先日、自民・公明の両党は与党税制改正大綱を決め、景気刺激策として住宅ローン減税の期間を10年から13年に延長することになりました。住宅ローン減税には問題があります。

住宅ローン減税は中所得層・富裕層に有利な税制です。住宅ローンを組めるのは比較的恵まれた人です。低所得層や非正規雇用の人は住宅ローンを組めません。どちらかといえば豊かな人たちを、税制でさらに優遇するのは、所得再分配の観点から問題があります。

また住宅ローン減税は、住宅の新築を促す制度です。しかし、人口減少社会の日本では、空き家があふれています。全国の空き家は820万戸、空き家率は13.5%です(平成25年調査)。

アベノミクスの超低金利でアパートやマンションの新築も増え、どんどん住宅の数が増えています。さらに税金で補助してまで新築住宅を増やすのは愚策です。補助金でこれ以上新たな住宅供給を増やせば、住宅市場をゆがめます。不動産バブルの崩壊を早めることになるかもしれません。

格差是正につながり、住宅の過剰供給を抑制するために良い手があります。それは住宅補助手当(家賃補助)です。OECD加盟国では約30か国で住宅補助手当があります。

日本では「生活保護の住宅扶助」と求職者向けの「住宅確保給付金」という制度がありますが、対象者は限定的です。欧州諸国ではより広範囲に住宅補助手当が支給されている例が多いです。

たとえば、住宅補助手当の受給世帯率は、イギリスで15.0%(年額57.5万円)、フランスで21.1%(年額24.5万円)、ドイツで9.0%(年額15.6万円)といった水準です。所得の再分配効果があり、格差是正に役立っています。

また、住宅補助手当により住環境の改善も期待できます。子育て世帯の住環境改善は出生率向上にもつながるといわれています。欧州諸国に比べ、日本の民間借家の平均床面積は狭く、民間借家に住んでいる人の住環境には改善の余地があります。

また、公営住宅に入りたくても競争率が高く、公営住宅に入れない人が多いのも日本の特色です。公営住宅に運よく入居できた人と、運わるく入居できなかった人との格差が大きいことも問題です。

終身雇用の正社員が多かった時代は住宅ローンを組める人も多かったので、昔は住宅ローン減税の恩恵は多くの庶民に行きわたりました。しかし、非正規雇用が増え、ひとり親世帯や単身世帯が増えるなかで、住宅ローン減税の恩恵を享受できない人が増えています。

自民党政治は、住宅ローンが組める人にはやさしく、住宅の新築など望めない人には冷たいです。立憲民主党は、住宅ローンを組める人よりも、住宅を新築する余裕のない人のための政策を重視すべきだと思います。

最低限の住環境をすべての人に保障することは国家の役割のひとつと考える時代だと思います。居住権も基本的人権だと思います。中高所得層向けの住宅ローン減税より、劣悪な住環境に置かれている人たちの支援の方が優先度は高いと思います。

所得格差と住まい格差の両方を是正できる「住宅補助手当」は、われながら良いアイデアだと思います。皆さま、どうお考えでしょうか?