初当選したばかりの新人議員の皆さまへ【前編】

初当選したばかりの立憲民主党公認候補者の皆さま、おめでとうございます。

先日「立憲民主党公認の新人候補の皆さんへ」というブログを書いたところ、そこそこ好評でした。そこで調子に乗って、今度は当選した新人議員の皆さんへ向けてメッセージを書かせていただきます。

選挙運動は大変だったと思いますが、当選というのは単に「入場券をもらった」というだけのことです。いまスタートラインにやっと立ったという状態で、これからが本番です。

選挙に強くなく落選経験もある私が、新人議員の皆さんにえらそうに説教できる立場にはありません。しかし、党の新人研修を何度か担当させていただいた経験もあるので、恥を忍んで、あえて初当選の新人議員の皆さまに「お薦めしたいこと」を箇条書きさせていただきます。多少なりともご参考になればさいわいです。

 

1.市民の感覚と政治家としての専門性

おそらく新人候補者の皆さんは「政治の世界のアウトサイダーである自分が、古い政治を変えます。市民の皆さんの目線で政治を変革します」という趣旨の演説をされたことと思います。経験のない新人候補は、そこを売るのが常道です。

まちがいなく「市民の目線」は大切です。納税者・生活者・消費者としての市民的視点は、政治において不可欠です。スーパーでお買い物するときの庶民感覚、確定申告するときや源泉徴収票を見るときの納税者感覚も大切です。

他方、税金でお給料をいただいて仕事をする以上、議員は「政治のプロ」でなければならないと思います。代議制民主主義は、日々の暮らしや仕事に忙しい一般市民に代わって、議員が政策を勉強し、行政を監視することで成り立ちます。

日々の暮らしに忙しい市民の皆さんと、議員が同じレベルの政策知識では困ります。市民の皆さんの代わりに行政をチェックし発言するためには、政策や行政の仕組みについて高度な知識を持ち、「フルタイムの政治のプロ」になる必要があります。専門家にふさわしい実力を身につけるためには努力が必要です。「シロウト」を売りにできるのは、最初の選挙のときだけです。

 

2.いずれかの政策の専門家をめざす

いずれかの政策分野の専門家をめざすことをお薦めします。どんな分野でも真剣に10年間取り組めば、専門家あるいは少なくとも「セミプロ」になれます。

教育でも、障がい者福祉でも、財政政策でも、環境保全でも、都市計画でも、社会的ニーズのある政策課題なら何でもよいと思います。問題意識をもって本や報告書を読み、専門家や行政官の話を聞き、専門性を磨いてください。

まずは中公新書、岩波新書、講談社現代新書などで勉強をスタートするとよいと思います。これらの信頼できる新書では、学者やジャーナリストがわかりやすくコンパクトに最先端の知見をまとめています。それが11000円以内で手に入るのは奇跡です。日本の「新書文化」は世界に誇れます。

新書で基礎的な知識を得たら、その本の参考文献リストに載っている専門書や学術書を読んだり、役所の担当部署から話を聞いたりして勉強し、議会での質問に活かすとよいと思います。耳学問だけではなく、信頼できる本や報告書で学ぶことが大切です。

 

3.政治家は政治学を学ぶべき

医者は医学を学び、エコノミストは経済学を学びます。同様に、政治家は政治学を学ぶべきです。しかし、意外と政治学の基礎すら勉強していない政治家が非常に多いです。

政治学の入門書や事例研究の本を読めば、過去のさまざまな失敗例や成功例を知ることができます。過去の事例を知ることは「間接経験」です。ひとりの人間が「直接経験」できる範囲は狭く、試行錯誤だけに頼っていたら、きわめて非効率です。ビスマルクの言葉とされる「愚者は自分の経験に学び、賢者は他人の経験に学ぶ」を実践すべきです。

市民生活に関わることでは、なるべく「失敗から学ぶ」ケースは少ない方が良いと思います。むずかしい課題にチャレンジすれば失敗はつきものなので、失敗を恐れる必要はありませんが、失敗は少ないに越したことはありません。自分でさまざまな失敗をする時間的余裕はないので、可能な限り他人の失敗から学びましょう。他人の失敗から教訓を得ることが、政治学の事例研究(ケーススタディ)を学ぶ意義です。

 

4.行政の知識は必須

政治と行政は表裏一体です。行政を動かす上では政治判断が重要であり、行政の監視が議会の使命です。政策判断は政治の仕事、政策実施は行政の仕事といえます。市役所や県庁などで行政畑の仕事をしていた人は、わりとスムーズに議員の仕事になじめます。しかし、民間出身の人は慣れるまでちょっと時間がかかるかもしれません。

行政用語を覚えたり、役所のどんな役職の人がどんな役割を担っているかを知ることが大切です。私が新卒で就職したJICA(国際協力機構)は、監督官庁の外務省と接点が多く、当時の経済協力局技術協力課の外務事務官と頻繁にやり取りがありました。そのころ「なんで“外務事務官”よりも“外務事務次官”の方がえらいんだろう?」という素朴な疑問を持ちました。

こういう素朴な疑問は新卒の23歳のころは許されても、3040歳代では許されません。たとえば、外務省の職位のヒエラルキーは、外務事務官<課長補佐<首席事務官(他省庁では筆頭課長補佐)<課長<局審議官<局長<外務審議官<事務次官<駐米大使の順です。こういう知識も国会議員には必要です。市議会議員にとっては市役所の職員の職位と所掌くらいは理解しておく必要があります。

行政用語や行政学の知識、行政評価などの知識もある方がよいでしょう。大学の学部生向けの行政学の入門書くらいは読むことをお薦めします。

*長くなったので「後編」に続く。

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