委員会の「附帯決議」について

衆議院の委員会における法案の採決のときに「附帯決議」というのを付けることがあります。法案の条文だけでは不十分だと思われる点を補ったり、政府に対して行動を促すといった時に附帯決議を付けます。

委員会の採決においては、最初に法案の賛否を問い、その後に付帯決議の賛否を問います。附帯決議が付けられる法案もあれば、付けられない法案もあります。

多くの場合、附帯決議は各会派(政党)の全会一致で付けられます。逆にいえば、全会一致でない場合には、あまり附帯決議は付きません。

附帯決議が議決されるまでの手続きの流れは以下の通りです。

1)いずれかの会派(=政党)が附帯決議を提案する。

2)提案した会派の理事が、他の会派の理事に附帯決議案について説明し、協力を求める。

3)各会派の党内手続きをとり、賛否を決め、必要があれば文言の修正を行う。

4)委員会の理事会で提案し、各会派の理事の承認を求める。

5)委員会の場で提出者の代表者1名が、附帯決議の趣旨説明を行う。

6)委員会で附帯決議を採決する。

来年は天皇陛下のご即位にともない祝日が増えますが、そのために法整備が必要です。法案の正式名称は「天皇の即位の日及び即位礼正殿の儀の行われる日を休日とする法律案」と呼ばれます。同法案(以下「祝日法」と呼びます)は、私が担当する衆議院内閣委員会で審議されました。

祝日法には附帯決議が付けられましたが、その手続きを中心になって担ったのは内閣委員会の野党筆頭理事の私でした。立憲民主党は祝日法には賛成ですが、ゴールデンウイークに10連休という長い休みが続くので国民生活に悪影響がおよぶ可能性が懸念されます。

党内の政調の内閣部会において祝日法について議論したときに「国民生活への悪影響が考えられるので附帯決議を付けて政府に対応を促すべき」という趣旨の意見が出されました。

来年10連休ということになると、たとえば(1)電気、ガス、水道等のライフラインの維持、(2)定期的に通院している患者さんが、10日間も病院に行けない、(3)交通機関や宿泊施設の混雑と混乱、(4)日雇い労働者の収入減、といった点が懸念されます。

国民生活に悪影響が出ないように各府省が対策を検討し、関係事業者等に対策を周知徹底させる必要があります。政府として取り組むべき点をリストアップし、政府に要請するため、祝日法の採決時に附帯決議を付けることにしました。

まず私から衆議院調査局の担当者に相談し、ポイントを説明して、附帯決議案を作ってもらいます。その案を(1)党内の内閣部会関係者、(2)他の野党の理事会メンバー、(3)与党筆頭理事、の順番で説明して回ります。与党内(自民党・公明党)の調整は自民党の筆頭理事がやってくれます。

ちなみ党内の根回しに関しては、衆議院の附帯決議は政調会長代理の決裁が必要になります。私は政調会長代理も兼務しているので、私が提案した附帯決議案の党内決裁は不要です。

複数の会派から「この項目を追加してほしい」とか、「ここの書きぶりを修正してほしい」といった要望が入ります。今回の祝日法の附帯決議は全会一致で通したかったので、なるべく他の会派の要望も取り入れ、原案を修正していきました。最終的に内閣委員会開催日の前日夕方までに調整作業が終わりました。

与野党合意のもとで附帯決議を各会派の理事の名前で委員会に提出します。与野党一致で附帯決議を出す場合は、慣例で野党第一党の理事が提出理由の説明を行います。私が内閣委員会の場で附帯決議案の提出理由の説明を行い、その後に採決があります。祝日法の附帯決議は、無事に全会一致で可決しました。

ちょっと長くなりますが、その時の私の発言内容を以下に記します。

ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨をご説明いたします。案文の朗読により、趣旨の説明にかえさせていただきます。

天皇の即位の日および即位礼・正殿の儀の行われる日を休日とする法律案に対する附帯決議案

本法の施行により、来年の4月27日から5月6日まで、土曜日、日曜日を含めて最大10日連続の休日となるため、奉祝の機運が盛り上がる、経済効果が期待される等長期間にわたる祝日について歓迎する声がある一方で、国民生活に与える様々な影響への懸念も生じている。

よって政府は、本法の施行による長期間にわたる休日に伴い、国民生活に支障を来すことのないよう、次の事項に万全を期すべきである。

1.国民が天皇の即位をお祝いし、長期間にわたる休日を安全に安心して過ごすことができるよう、電気、ガス、水道等のライフラインの維持はもとより、金融システムの稼働、災害時の対応等に関し、関係機関の緊密な連携協力の下、十全な体制が取られること。

2.長期間にわたる医療機関等の休業により患者の治療等に支障を来すことのないよう、当該期間中における各医療機関等の休業日等の周知徹底、休日における医療機関等相互の連携協力体制の確実な運営等、適切な対応が取られること。

3.当該期間中及びその前後に、各交通機関の大混雑、宿泊施設の不足等の混乱が予想されるため、関係機関・団体等の密接な連携協力の下、これらの混乱をできるだけ避けるよう、適切な対応が取られること。

4.需要の増加により混乱を来すことが懸念される運輸業、小売業等において、予想される状況についての業界による周知徹底等により、取引先、消費者等の理解と協力が得られるようにすること。

5.当該期間中に勤務する労働者が長時間労働をすることなく、また、休日の増加が時給制や日給制によって雇用されている労働者の収入減少を招くことのないよう、各事業主等において適切な対応が取られること。

6.当該期間中、保育施設等を利用する労働者の子どもの保育が確保されるよう、当該労働者の勤務日、勤務時間等についてその事業主ができるだけ配慮するようにすること、複数の保育施設等における連携が確保されるようにすること等、適切な対応が取られること。

7.新年度を迎えた直後の学生、生徒、児童及び園児が長期間にわたる休日により心身に影響を被る可能性に十分留意し、これらの者の心身の健康が保たれるよう、関係機関の連携協力により適切な対応が取られること。

以上であります。何とぞ委員各位のご賛同をお願いいたします。

以上ですが、附帯決議は役所的な文章なので読みにくいと思います。スッと頭に入るような名文とは程遠いです。まちがいなく悪文です。しかし、正確を期すためにやむを得ず、こういう文体になります。また、何度も何度も「等」が出てきて言い切らないのも、役所っぽい文章になる理由のひとつです。

附帯決議がどの程度の効力があるのかはケースバイケースです。祝日法の施行にあたって、霞が関の各府省が、地方自治体や関係団体に通達や指示を出す際に、附帯決議の事項を配慮してくれるものと期待しています。