いま永田町で起きていること

森友文書の改ざん問題は、国会周辺(永田町)に大きなインパクトを与えています。安倍政権にとって最大の危機だと思います。いま永田町でいろんな動きがありますが、大雑把に5つにまとめてみました。

1)9年ぶりの自民党政権の守勢

ここまで自民党政権が国会で守勢に回るのは9年ぶりです。この5年間は、与党は国会の3分の2の議席を占有し、「安倍一強」と言われてきました。共謀罪や安保法制の審議では世論の反発を受け、やや守勢に回ったこともありましたが、今ほどではありません。少なくとも共謀罪や安保法制の議論においては、自民党内の結束が固く、与党内からほとんど造反や批判もありませんでした。しかし、森友文書改ざん問題では、自民党内でも弁護する人はいません。公明党も森友問題では政府を守ろうとしません。

この5年間は安倍一強で、その前の民主党政権時代は、自民党は一貫して攻める側でした。つまり民主党政権以前の2009年前半以来、自民党は政権与党として守勢に立った経験がほとんどありません。今回は守りに入っていますが、久しぶりの守勢なので不慣れな感じです。

2)国会における野党6党共闘の深化

裁量労働制データねつ造問題、森友文書改ざん問題などでは、国会内で頻繁に野党6党合同ヒアリングや野党合同院内集会を開いてきました。野党6党(立憲、希望、民進、社民、自由、共産)が、ここまで一致団結して国会対応をしているのは、政権与党にとっては想定外だと思います。衆院選で生じた野党内の亀裂が完全に修復しているとは言えませんが、「安倍政権に対抗するために団結しなくてはいけない」という雰囲気が高まっています。野党6党が結束していれば、与党も無理なことはやりにくくなります。私も野党第一党の国対委員長代理として他の野党との連携に力を尽くしてきましたが、一定の成果があったと自負しています。

こういった国会内の野党共闘の雰囲気が、国会外での野党共闘(選挙協力)にも影響を与える可能性があります。安倍内閣が総辞職して新しい自民党の首相が誕生すれば、衆院選は近づきます。衆院選で選ばれていない首相の正統性は弱く、「早く民意を問う解散総選挙をすべき」という声が出てきます。次の衆院選は思ったより早くなるかもしれません。衆院選に向けた野党連携の動きが、国会での野党共闘をきっかけに加速するかもしれません。

3)久しぶりの自民党内権力闘争の開始

安倍一強のもと自民党内で異論を言いにくい雰囲気でしたが、この数日で一気に空気が変わりました。安倍総理に対する批判を公然と言えるようになり、自民党内の各派閥の動きもあわただしくなってきました。山崎拓元副総裁のようなベテランが安倍総理を批判し始め、反安倍勢力が結集しつつあるのかもしれません。森友問題で麻生財務大臣の首が飛ぶようなことがあれば、麻生グループと安倍総理との関係も微妙になります。

いまの自民党衆議院議員3期生以下は、一度も自民党総裁選を経験していません。言い換えると、自民党の若い議員は、本格的な党内権力闘争の経験がありません。経験値の低い国会議員ほど、烏合の衆と化して、流れに乗ろうとする傾向があります。反安倍の流れが出てくると、その流れに乗ろうとする若手議員が大勢出ても不思議ではありません。安倍3選は既定の路線ではなくなりました。

4)官邸主導(官邸支配)の終焉

これまで内閣人事局が持つ幹部公務員の人事権を武器に、官邸主導で政策決定がなされてきました。官邸を牛耳っているのは、主に経産官僚です。他方、財務省は安倍政権で弱体化しています。財務省の悲願である消費税増税も安倍総理の判断で先送りされ、財務官僚は官邸を恨んでいると思います。さらに森友問題で安倍総理を守るために必死でウソの答弁をしていたのに、あっさり官邸にトカゲのしっぽ切りをされ、財務官僚はさらに怒っていると思います。最強の官庁と言われる財務省の逆襲が予想されます。スターウォーズ的に表現すると「帝国の逆襲:The Empire Strikes Back」という感じだと思います。

安倍一強の官邸主導は、霞が関的にいえば「経産官僚主導」でした。今井首席秘書官を筆頭に官邸の経産官僚が、原発政策からロシア外交、TPP、社会保障まで仕切っていました。官邸外交の担い手が経産官僚だったので、外務省はおもしろくないでしょう。財務省も当然おもしろくありません。人事権が怖いのは、長期政権が予測されている間だけです。安倍政権が死に体になれば、人事権に対する恐怖心は軽減されます。安倍政権に不満のある官僚のサボタージュが本格化しても不思議ではありません。

また、これまで自民党は官邸の言いなりでしたが、官邸権力の弱体化が明らかになれば、官邸の言いなりにはならなくなるでしょう。政府と与党の力関係も変わるでしょう。自民党の政務調査会や総務会の力が回復し、官邸主導の色が薄くなることでしょう。

5)メディアの政権批判の活性化

この5年ほどの間に新聞各紙の論調が、政権寄りか否かでハッキリわかれるようになりました。産経新聞の安倍政権ベッタリぶりはさておき、読売新聞や日本経済新聞の政権擁護の姿勢は行き過ぎていた感じがします。しかし、安倍政権の森友文書改ざんや裁量労働データねつ造問題で、メディア全体の安倍政権を見る目が厳しくなった気がします。読売新聞やNHKも政権に批判的な報道をするようになってきました。

安倍総理の朝日新聞批判は度を越していました。そのことが朝日新聞の闘志をあおり、朝日新聞は森友文書改ざんスクープで安倍政権に逆襲しました。メディアの調査報道が、政権をここまで追い詰めたのは久しぶりです。国家権力の暴走を抑えるためには、議会(特に野党)とメディアが権力を監視しなくてはいけません。国会もメディアも権力を監視する能力が弱まっていましたが、このところ監視機能が回復しつつあります。

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1か月前と今では永田町の空気は大きく変わりました。そろそろ安倍政治を終わらせた後のことを真剣に考えるべき時期です。

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