安倍内閣の支持率低下:潮目が変わったか?

安倍政権の内閣支持率が低下しつつあります。潮目が変わった気がします。安保法制や森友・加計疑惑でも一時的に内閣支持率は低下しましたが、今回はそれとはちがって本格的に潮目が変わった気がします。

産経新聞や安倍総理のお友だちの右派論客も、安倍政権に急に冷たくなってきた感じがします。その理由は1つではなく、いろんな理由が積み重なったものだと思います。

イデオロギー的右派の安倍支持勢力は、ちょっとやそっとでは安倍総理を見限らないと思います。しかし、外国人労働者受け入れ問題で安倍総理への信頼に少し傷がつき、習近平国家主席の国賓来日問題でさらに信用を失いつつあるように思います。右派のお友だちも離れ始めているような気がします。

経済政策(アベノミクス)への賛同で安倍総理を支持している勢力も、消費税増税後の景気後退、デフレ脱却からほど遠い現状、低金利による地方銀行の経営危機、進まない規制改革、原発輸出・武器輸出・インフラ輸出の不振など、安倍政権の経済政策が不発で、安倍政権への期待感はなくなっていると思います。

新型コロナ対策では安倍政権の危機管理能力の欠如が露呈しつつあります。第二次安倍政権のスタート直後におきたアルジェリア人質事件で日本人がテロリストに殺害された事件で危機管理能力が高い印象を国民に与えました。それ以来、何となく「危機管理に強い安倍政権」というイメージを売りにしてきたと思います。実際、官邸中枢に警察官僚がいるので、テロ事件対応は上手にできるのかもしれません。しかし、今回の感染症対応の危機管理は失敗でした。安倍総理個人に関わる「桜を見る会」の危機管理も失態続きです。いまの官邸は「管理危機」状態です。

安倍総理の自民党総裁任期切れが近づくにつれて、レームダック化が進んでいる印象を受けます。党内と閣僚、幹部公務員の人事権を握っている官邸に逆らえない状況が長く続いてきました。しかし、残り任期が近づけば人事権によるコントロールは効かなくなります。ポスト安倍の争いが自民党内ですでに始まっている印象を受けます。レームダック化が進めば、役所からのリークなども増えるでしょう。安倍一強が崩れたあとは、坂道を転げ落ちるように遠心力が働くと思います。

景気後退、危機管理能力の欠如、人事権の効力切れ、党内権力闘争と続けば、安倍総理の影響力が低下しても当然です。永田町の権力闘争を観察してきて思うのは、「昨日の友は今日の敵。昨日の敵は今日の友」というケースが多いことです。安倍総理の周辺にいた人もレームダック化を見てとると、次の総理候補の勢力に加わるケースもあるでしょう。また、永田町では往々にして「水に落ちた犬には石をぶつけろ」という事態が起きます。落ち目になると、急に敵が増えます。

安倍総理の首相在任期間が憲政史上最長になりましたが、政治的レガシーといえそうな実績はなく、このままでは長期展望なき長期政権をいたずらに維持しただけになりかねません。大手投資銀行のストラテジストのルチル・シャルマ氏は次のようにいいます。

政治家が歴史に名を残したいなら、立派な業績を達成した後ですぐに引退することだ。これを理解している指導者はほとんどいない。多くの大統領は現役のまま人生の最後を迎えたいと願う。任期制限のルールを撤廃したり、最高指導者のポストを次々に渡り歩いたり、はたまた自分の後任に親族や側近を指名し、いつまでも権力にしがみつこうとする。

自民党総裁の任期は連続2期までというルールがありましたが、安倍総理はルールを変えて3選を果たしました。さらに岸田文雄政調会長への禅譲をもくろんでいるとの報道があります。自分の後任に親しい人物を指名し、権力にしがみつこうとする姿勢が垣間見えます。シャルマ氏の言葉にしたがって、早めに引退した方が身のためだったのかもしれません。

*参考文献:ルチル・シャルマ 2018年「シャルマの未来予測:これから成長する国 沈む国」東洋経済新報社