山内 康一山内 康一やまうち こういち
山内 康一

アベノミクスの失敗は予測可能だった

久しぶりに私の専門分野の「途上国の教育開発」に関するテキストを読んでいたら、いまのアベノミクスの失敗は十分に予測可能だったことに思いいたりました。

安倍政権のアベノミクスの根底には「トリクルダウン」という理論があります。富裕層がより豊かになれば、その果実が中所得層や貧困層にも自然と「したたり落ちる(トリクルダウン)」という経済思想です。

トリクルダウン理論は新自由主義的な経済思想ですが、実証研究によって正しくないことが証明済みです。富裕層をさらに富ませれば、貧困層も豊かになる、という証拠はありません。むしろ富裕層がさらに富んで格差が拡大すると、経済成長に悪影響を与えることがわかっています。

*詳しくは2016年4月12日付ブログ「格差が成長をさまたげる」をご覧ください。

格差が成長をさまたげる
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私は大学で「開発経済学」という学問をかじっていました。発展途上国の経済開発や貧困問題を研究する学問です。私が大学生だった1995年前後には、開発経済学の分野では次のような見解が主流でした。

途上国の開発においては、トリクルダウンは成り立たない。一般的に、経済成長の利益が貧困層にまで自然といきわたることはない。貧困層を直接ターゲットとする社会政策や国際援助が必要である。

いま読んでいる「教育格差の社会学」という本には、途上国の開発戦力に関して次のような記述が出てきます。

1990年代に入ると、途上国開発戦略にも人間開発と呼ばれる新たなアプローチが生じてきた。これは、それ以前の開発戦略が経済成長至上主義に偏っていたことへの反省から、より直接的に貧困削減や教育、保健医療などの改善を重視する戦略である。
*参考文献:耳塚寛明(編)2014年『教育格差の社会学』有斐閣

安倍政権は経済成長至上主義に偏っていて、子どもの貧困対策や教育の充実、子育て支援や医療には冷淡です。トリクルダウン理論という誤った理論に基づく経済成長至上主義の政策が、格差の拡大を加速しています。1990年代に途上国開発の分野で否定された政策が、いまも日本では強力に推進されています。

いまの日本で必要なのは、1990年代の途上国開発戦略でとられた「人間開発」というアプローチだと思います。子育て支援、教育、子どもの貧困問題、医療や介護といった「人」を対象にした政策に力を入れるべきです。経済成長至上主義のアベノミクスから脱却して、「人間開発」アプローチで社会の再生を図るべきです。民進党が「人への投資」と主張しているのは、正しいと思います。

途上国開発や国際援助の分野の知見が、いまの日本で役に立つことが多いように思います。日本では格差が拡大し、貧困層が増えています。富裕層がよろこぶ税制や政策ではなく、中所得層や貧困層に直接届く政策に力を入れるべきです。アベノミクスからの転換が求められます。

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