子どもの貧困の深刻さ

国連児童基金(ユニセフ)が、「高所得国の不利な立場の子どもたちの不平等(inequality on the most disadvantaged children in high income countries)」についてのレポートを発表しました。そのことが西日本新聞に載っていました。元ユニセフ議員連盟のメンバーの私としては、ユニセフに関する記事を見つけるとじっくり読まずにはいられません。

ユニセフの報告によると、日本の子どものいる世帯の所得格差は、先進国41か国中8番目に大きいそうです。もっとも貧しい層の所得は、中間層の所得の4割程度しかないそうです。日本でも格差拡大が進んでいます。

ユニセフの報告は、日本で学力格差も拡大していることを指摘しています。OECD加盟国の37か国中、日本の学力格差は27位です。学力格差(教育格差)の拡大も同時進行しています。学力格差が所得格差と連動していることは、以前から指摘されてきました。

日本はGDPに占める公教育支出の割合がきわめて低いです。日本は先進国のなかで、もっとも教育に税金を使わない国のひとつです。他方、家計の教育費負担の重さは、先進国では有数です。政府が教育費をケチっている分、家庭が教育費(私学の授業料、塾や家庭教師等)を過重に負担してきたのが、日本の教育財政の姿です。

その結果、教育費を負担できる家庭の子どもは十分な教育を受けられる一方で、低所得の家庭の子どもは教育を受ける機会を制限される、という現象が起こります。親の所得格差が、子どもの教育格差に直接つながります。さらに親の学歴や所得水準が、子どもの学力に大きな影響を与えていることが証明されています。親の教育への関心や学歴、所得水準のちがいにより、不利な立場に置かれた子どもたちには平等な機会が与えられていません。

子どもの教育機会を保障するためには、公教育の質を高めることが重要です。小中学校、公立高校の質を高め、塾や予備校に通わなくても、十分な学力が身につくようにすることが大切です。公立学校の教員の質の確保、教員の研修機会の充実等も効果的です。

子どものいる世帯への支援強化(特に母子家庭等の弱い立場の人たちへの支援強化)も大切です。子どもたちはすぐに成長してしまいます。手遅れにならないうちに、すぐに手を打たなくてはいけません。「子供の未来応援基金」みたいな悠長な政策では不十分です。再分配政策の強化へ踏み込み、格差(ユニセフの用語では「不平等(inequality)」)問題に真剣に取り組むべきです。「不平等との戦い」というのが、これからの重要な政治的テーマだと思います。社会の分断を避けるため、格差問題(不平等問題)に注目する必要があります。

*参考:2016年4月14日付西日本新聞朝刊「子の貧困 日本深刻」、UNICEFホームページ