経済再生も大事だが、社会再生も

イギリスのEU離脱報道で話題になっているのは、円高や株下落、在英日系企業の動向など、経済のことばかりです。EUは経済だけではありません。そもそもヨーロッパに二度と戦争を起こさせないことを主な目的として創設され、経済統合はその手段という性格が強かったはずです。EUの理想はどこへ行ってしまったのでしょうか。ヨーロッパの平和や共生といった側面からイギリスのEU離脱問題が語られることが少ないのが不思議です。日本のメディアだけではないのかもしれませんが、経済だけではなく、EU離脱に関する政治的あるいは社会的側面をもっと掘り下げて報道してほしいものです。

アメリカのトランプ現象、欧州の極右勢力の台頭、イギリスのEU離脱、もしかすると安倍政権の高支持率の背景の一部にも、共通点があるかもしれません。イギリスのEU離脱では、EU官僚や政治家といったエリート層への反発が背景にあると言われています。トランプ現象もワシントンD.C.のエリート層やインテリ層への反発が大きな要因です。アメリカでもイギリスでも、難民や移民に対する排他的な感情、イスラム教徒への偏見等、白人の労働者階級の不満や不安につけこんで、支持を拡大している点が共通しているといえるかもしれません。冷静な論理よりも、感情(特に恐怖や不安)に訴えるのが、トランプ氏やEU離脱派のやり方のように思います。ヒトラーがユダヤ人の脅威を訴えて政権を獲得したことを思い起こしてしまうのは、私だけではないと思います。

トランプ氏が大統領候補になることは、一昔前には考えられなかったことだと思います。人種差別的な過激な発言を売りにする候補者は泡沫で終わるのが通常でしたが、有力候補になりました。アメリカ社会は分断されていると思います。ヨーロッパでは、EUというヨーロッパ全体のレベルで亀裂が広がっている一方で、イギリスのスコットランド独立運動、ベルギー分裂の危機、スペイン国内の独立運動など、それぞれの国の内部でも亀裂が広がっています。社会の分断が広がっているのは、世界的な現象かもしれません。

残念なことに日本でも社会の分断が進んでいます。貧富の格差の拡大、世代を超えた貧困の連鎖、世襲議員の多さに見られるような階級社会化、教育格差の拡大にともなう希望格差など、さまざまな亀裂が広がり、分断が加速しています。危機的状況だと思います。

先日「分断社会を終わらせる」という本の書評でも書きましたが、もういちど社会を再生させることが重要な政治的テーマだと思います。経済再生もいいけれど、社会再生が大切なテーマだと思います。安倍政権の経済成長至上主義や自己責任社会論では、社会の分断は進む一方です。人への投資、再分配重視、リスクを社会全体で共有する制度づくりが、社会の分断をくい止め、社会を再建する重要なステップです。経済ばかりを議論せず、社会についても国民的な議論をする時期だと思います。

*ご参考:書評 : 「分断社会を終わらせる」

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