2017年に読んだ本ベスト10

毎年恒例(?)の「今年読んだ本のベスト10冊」です。ご笑覧いただければ幸いです。今年10月までは浪人中だったので、ブックオフの100円コーナーで買った新書をたくさん読んでいました。来年からは国会図書館分館をフル活用できるので、学術書や新刊も今年よりたくさん読めるはずです。

そういえば、選挙直後に3年ぶりに国会図書館分館に行ったら、顔なじみの図書館スタッフから「おめでとうございます。国会図書館のスタッフはみんな山内先生の当選をよろこんでいます。」と声をかけていただきました。国会図書館分館の常連だったし、いつも硬めの本を借りたり、資料のコピーをお願いしたりしていたから、図書館スタッフの間では支持率が高いのだと思います。当選直後は、衆議院の職員さんや衛視さんから「おかえりなさい」と言われるたびジーンとしていました。32歳から41歳までを過ごした職場である衆議院に戻れて、本当によかったとしみじみ思いました。

 

1. 保阪正康 2016年 『田中角栄と安倍晋三』朝日新書

かつて保阪さんを囲む超党派議員の歴史勉強会メンバーでした。尊敬する保阪さんの名著です。私が今年書いた書評ブログのなかでは、以下のブログが断トツでアクセス数が多かったです。本書で特に興味深かったのは、安倍晋三首相と東条英機首相の共通点です。詳しくは以下のブログをご覧ください。

本を読まない首相【書評】保阪正康著「田中角栄と安倍晋三」(2)
ちょっと間があきましたが、保阪正康さんの「田中角栄と安倍晋三」の抜粋的書評のパート2です。この本でもうひとつ興味深かったのは、東条英機と安倍晋三の両首相の共通点です。 保阪さんによれば;

 

2. ジャレド・ダイアモンド 2013年 『昨日までの世界(上下)』 日本経済新聞出版社

ジャレド・ダイアモンドはピューリッツァー賞受賞の学者で「銃・病原菌・鉄」「文明崩壊」などで知られています。文化人類学者が研究対象にする狩猟採集社会について書かれた本です。未開社会の子育てやしつけ、戦争、家族観など興味深く、現代社会を相対化する視点が得られます。未開社会から学ぶことも多いと実感します(現代社会が未開社会よりすぐれているわけでもなんでもないこともわかります)。

ちなみに、未開社会の戦争では「自己犠牲の精神」は皆無だそうです。「お国のために死ね」といった教育が行われていない未開社会の戦士たちは、常に自分が生きのびることを最優先するそうです。旧日本軍の特攻や万歳突撃といった戦術は、戦前の教育制度の結果です。戦前の教育史を見ても、教育と戦争のつながりは深く、教育改悪を放っておくと戦争への道を進む可能性が確実に高まることがわかります。

 

3. ジョセフ・S・ナイ 2015年 『アメリカの世紀は終わらない』 日本経済新聞出版社

中国の台頭は著しいですが、「近い将来に中国の国力がアメリカのそれを上回ることはない」という趣旨の本です。トランプ大統領のせいでアメリカの国力(特にソフトパワーや同盟国との信頼関係)が低下しています。トランプ大統領の登場により、ナイの予想を上回るアメリカの国力低下が進む可能性は否定できません。

アメリカの世紀は終わらない【書評(1)】
アメリカの政治学者のジョセフ・S・ナイの「アメリカの世紀は終わらない」は、「中国がアメリカを抜くことはない」と断言する本でおもしろかったです。概してナイの本は、読みやすく、わかりやすく、論旨明快です。 ナイはいわゆる「ジャパン・ハンド...

 

4. 苅谷剛彦 2017年 『オックスフォードからの警鐘』 中公新書ラクレ

教育社会学者の苅谷剛彦教授が、安倍政権の「大学改革」に警鐘を鳴らします。文科省の「スーパーグローバル大学創成支援事業」のことを「形骸化しやすい拙速のバラマキ」と切り捨て、本当の意味で国際競争力のある大学をつくる方策を提言します。そもそも「スーパーグローバル」という言葉が英語として正しいか疑問です。恥ずかしいやら、アホらしいやら。

 

5. 中澤渉 2014年 『なぜ日本の公教育費は少ないのか』 勁草書房

2014年の「サントリー学芸賞(政治・経済部門)」を受賞した本です。この本の結論は「日本で公教育費の負担が少ないのは、教育の公共的意義が軽視され、教育が個人の私的利益と見なされてきたから」というものです。公教育費が少ない理由を解き明かし、公教育費を増やすことの意義とそのための方策を述べています。教育費負担が話題になっている今日、必要な視点です。

なぜ日本の公教育費は少ないのか【書評】
久しぶりに書評ブログです。今日のおすすめは「なぜ日本の公教育費は少ないのか」という本。2014年度の「サントリー学芸賞(政治・経済部門)」を受賞した名著です。著者は、私と同世代の教育学者で大阪大学准教授の中澤渉氏です。 この本の要旨は「日...

 

6. 野口悠紀雄 2017年 『異次元緩和の終焉』 日本経済新聞出版社

この本を読んでアベノミクスの異次元緩和の怖さを再認識しました。そろそろ「ポスト・アベノミクス」を真剣に考えておかなくてはいけません。

アベノミクス敗戦からの復興プラン
最近出た野口悠紀雄氏の「異次元緩和の終焉」(日本経済新聞出版社、2017年)という本を読み、アベノミクスの1本柱である異次元金融緩和を怖いと思いました。 私自身も安倍政権誕生以前には、ある程度の金融緩和は必要だと思っていました。しかし...

 

7. 布施哲 2014年 『米軍と人民解放軍』 講談社現代新書

マニアックな軍事本ですが、米軍のエア・シー・バトル戦略のことがよくわかります。中国のミサイルの脅威により沖縄の米軍基地の脆弱性が高まりました。軍事的合理性に照らして、辺野古移設が必要なのか疑問になってきています。辺野古移設が決まった時代に比べ、東アジアの軍事情勢が変化しており、これまでの計画に固執する必要はなくなっていると思います。米軍基地問題を考える上でも、米軍の軍事戦略の変化を知ることは大切です。

 

8. ロバート・クーパー 2008年 『国家の崩壊』 日本経済新聞出版社

英国外交官のロバート・クーパー氏は「経済制裁が、制裁された国の体制を強化する」という逆説が起こりうることを指摘します。北朝鮮の場合にも一部あてはまるかもしれません。これまで安倍政権や米国政府は経済制裁一本やりでやってきましたが、その効果はあがっていません。核開発もミサイル開発も止められませんでした。経済制裁を続けてきた結果として、日朝の経済関係はいまや皆無です。経済交流がない現状では、これ以上の経済制裁の手段はほぼありません。手詰まりです。圧力一辺倒の路線を切り替えて、対話へ舵を切るタイミングだと思います。このままだと本当に戦争に行きついてしまいます。

北朝鮮経済制裁と対話への決断
今朝(8月2日)の西日本新聞に「北朝鮮17年ぶりの高成長?」という見出しの記事がありました。昨年の北朝鮮の国内総生産の推定成長率は3.9%にのぼり、貿易額も4.7%増だそうです。中国やロシアが協力しない経済制裁は、あまり効果をあげていないこ...

 

9. 櫻田淳 2012年 『「常識」としての保守主義』 新潮新書

最近の政治情勢を見るにつけ「保守」という言葉が乱用されている気がします。「保守」の定義を整理する良書です。昔読んだ本を久しぶりに読み返してみました。

枝野幹事長は「保守本流」か?
先日(5月11日)枝野幸男幹事長が福岡市内で講演しました。民進党のめざすもの、自民党とのちがいなど、興味深い話でした。枝野さんの講演の内容を大雑把に箇条書き的にまとめると以下の通りです。

 

10. 中北浩爾 2017年 「自民党-「一強」の実像」 中公新書

自民党の支持基盤、党組織、事前審査など、さまざまな側面を網羅的に書いた本です。いまの自民党の「一強」の実像がわかります。安倍政権は、右傾化と利益誘導で支持基盤を固めることに成功する一方、無党派層への支持拡大には失敗していることがわかります。野党が政権交代を図るには、無党派層の動員と投票率アップが必要条件です。自民党の支持基盤は弱体化しているものの、野党よりは分厚い支持基盤を有しています。対自民党戦略を描く上で参考になる本です。

 

*ご参考:2016年12月28日付けブログ「今年読んだ本のベスト10冊」
http://www.kou1.info/blog/days/post-1239

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