「予備費10兆円」は犯罪的な国会無視

これからコロナ対策の第2次補正予算が審議されますが、前代未聞のあきれる予算要求が「予備費10兆円」です。

「予備費」というのは、何かあった時のための備えなので、使途を決める必要がありません。事前に使途を決めなくてよい予備費は、国会の予算審議では白紙委任ということになります。

予備費は、決算後の事後のチェックは受けますが、事前のチェックは受けないため、決して望ましいものではありません。緊急時の対応のためには必要なので、予備費は多すぎず少なすぎずというバランスが大切です。

しかし、この10兆円という予備費の規模は前例のない大きさです。第2次補正予算の一般会計分は31.8兆円ですが、そのうち予備費が10兆円です。2次補正予算の約3分の1を占める異常な規模です。

令和2年度の本予算は、歳出約103兆円に対して、予備費は5千億円(約0.5%)に過ぎませんでした。この10兆円の予備費の異常さがおわかりいただけると思います。

要するに国会のチェックなしに好き勝手にお金が、なるべくたくさんほしいという、安倍政権のわがままです。国会軽視そのものです。国会審議の形骸化・空洞化を招く、悪質な手口です。「財政民主主義」の原則を壊す暴挙です。野党だけではなく、与党議員もバカにしていると思います。

たとえば、1年間の防衛費が約5.3兆円です。予備費10兆円は、防衛費のだいたい2年分にあたります。極論をいえば、好き勝手に使える10兆円があれば、そのうちの一部で米海軍なみの正規原子力空母と搭載機(70機前後)と護衛艦数隻を買えます。安倍政権は、昨年度の補正予算で米国製兵器ローン(FMS)の支払いをしていたくらいですから、10兆円の一部を防衛費に回さないとは言い切れません。

とにかく「何に使われるか、わからない」というのが予備費です。10兆円の白紙委任は、納税者をバカにしています。国会もバカにしています。自民党と公明党の心ある議員もこんな無茶な予算編成には抗議すべきです。

前例のない危機の最中とはいえ、補正予算の予備費としての許容範囲はせいぜい1兆円までだと思います。それ以上の金額が必要なら第3次補正予算を編成して再度国会で審議すべきです。