マインド・コントロール予防にお薦めの本

ポピュリズム政治の極端な例は、ヒトラーのナチスドイツだと思います。大衆的な熱狂というのは、ある意味で大衆的なマインド・コントロールです。ポピュリズム政治を理解するには、マインド・コントロールを理解することが大切だと思います。そこでマインド・コントロールについて書かれた西田公昭氏の「なぜ、人は操られ支配されるのか」という本を読んでみました。

その本に「心の脆弱性テスト」という10の質問が出てきます。

Q1)あいまいなことが苦手で、判断がつかないことがあるとイライラしたり、不安になったりする。

Q2)超絶にすごいと思えるほどに崇拝できる人との出会いを切望している。

Q3)いまの自分とは違う本当の自分を見つけたい。

Q4)熱狂的に盛りあがって、みんなで何かをなし遂げたり、みんなそろって同じように行動するのが好きだ。

Q5)意に沿わないことでも、頼まれたらはっきりと拒絶できないことがある。

Q6)カルトやマインド・コントロールの危険性についてはくわしく知らない。

Q7)占い、霊能力、超能力、死後の世界などの神秘的な世界を知りたい。

Q8)世界や宇宙には、じつは秘密の法則があり、それはすでに解き明かされているかもしれないと思う。

Q9)このところ、自分の人生や家族などのことで、なぜだかうまくいかないと気に病むことがある。

Q10)いまの社会のあり方は誤っているので、真に正しい道を求めたいと思っている。

皆さんはいかがでしたか?

私は10問のうち1つだけ該当しました。最後の質問の「今の社会のあり方は誤っているので、真に正しい道を求めたい」というのだけ該当しました。野党議員として当然です。それ以外はいっさい当てはまらず、「心の脆弱性」が低いことが確認できました。

私の場合は日ごろから「冷めてる」とか「熱さが足りない」と周囲に言われ続けてきました。あきらかに熱狂しにくいタイプです。ひとの言葉に心を揺さぶられたり、感動して泣いたり、というのはあまり無いです。自分がマインド・コントロールされにくい体質だというのは何となく納得できます。

ちなみに、私は、幼稚園時代は登園拒否児童で、幼稚園を中退しました。中学校でも高校でも帰宅部でした。拘束時間がながく、集団行動が求められる部活動には、適応できない自覚がありました。社交的でなく、周囲の目をあまり気にせず、同調圧力に耐性が高く、孤独に強いタイプなので、マインド・コントロールには耐性があると思います。

この本を読んでわかったのは、「いい人」ほどマインド・コントロールにかかりやすいことです。空気が読めて、気配りができて、こころやさしい「いい人」は要注意です。

学生時代に3年間バイトしていた焼とん屋の江戸っ子のおやじさんがよく「いい人、いい人、“どうでもいい人”ってな。いい人になるなよ。」と言ってました。戦争中は兵隊に行っていたおやじさんはいろんな人生経験を積んでいたのだろうと思います。その教えを忠実に守ってきた結果、「いい人」ではない自覚があります。

また、Facebookの「いいね」の数を気にする人も要注意みたいです。人がどう見ているかを気にする人ほど、マインド・コントロールされやすいそうです。協調性のある「いい人」は、「私はマインド・コントロールされやすいかも?」と思っていた方が安全です。繰り返しますが、私は大丈夫。

この本の最後にマインド・コントロールから身を守るために、「支配から身を守る10の方法」という項目がありました。これもおもしろかったので、ご紹介させていただきます。カルト、詐欺にだまされないための注意事項です。

支配から身を守る10の方法

1.つねに誠実でなくてもよい。

2.相手の誘いを断ってもいい。

3.答えをすぐに出さなくてもいい。

4.知らないことを恥じなくていい。

5.難しい問題には正解はないと心得る。

6.すぐに親しくなろうとする相手に注意する。

7.おかしいと感じたら全力でその場から逃げ出す。

8.他人に依存しないで自分で考える。

9.従うことに慣れてはいけない。

10.できる限り情報を集める。

政治家としてはこの10項目すべてに従うわけにはいきません。しかし、特に「5.難しい問題に正解はない」などは本当にその通りだと思います。

誰の言葉か忘れましたが、「真実を探している者を信じよ。真実を見つけた者は疑え。」という言葉があります。「真実を見つけた」と主張する人物を疑い、複雑な問題にシンプルな解決策を用意する人物を疑うことが大切だと思います。

マックス・ヴェーバーは「職業としての政治」の中で次のように述べます。

精神を集中して冷静さを失わず、現実をあるがままに受けとめる能力、つまり事物と人間に対して距離を置いて見ることが必要である。「距離を失ってしまうこと」はどんな政治家にとっても、それだけで大罪の一つである。

ポピュリズム政治に抗するために必要な視点だと思います。冷静さを失わない。熱狂に流されない。距離を失わず、自分の頭で考える。さまざまな情報にあたる。複雑な問題にシンプルな答えを用意しない。私はあくまでマイペースに冷めた政治家でありたいと思います。

*参考文献:西田公昭 2019年「なぜ、人は操られ支配されるのか」さくら舎

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