中曽根康弘元首相の言葉

中曽根康弘元首相がお亡くなりになりました。ひとつの時代を築いた政治家だったと思います。心からご冥福をお祈り申し上げます。もちろん中曽根元首相のすべての政策や政治的言動を支持するわけではありませんが、立派な発言を多く残されています。中曽根元総理のご著書や雑誌投稿文から抜粋させていただきました。

大いなる志を遂げんとする政治家には、毀誉褒貶はつきものである。真の政治家は時代時代の宿命を負って行動し、時流におもねらず、国家百年の大計を自分自身の犠牲において断行し、その評価を後世の史家に託して消え去っていくのである。

まさにその通りの政治家人生を歩まれた方だと思います。

私なりに大東亜戦争を総括するなら、次の五点に集約されます。一、昔の皇国史観には賛成しない。二、東京裁判史観は正当ではない。三、大東亜戦争は複合的で、対米英、対中国、対アジアのそれぞれの局面で性格が異なるため認識を区別しなければならない。四、しかし、動員された大多数の国民は祖国防衛のために戦ったし、一部は反植民地主義・アジア解放のために戦ったと認識している。五、英米仏蘭に対しては普通の戦争だったが、アジアに対しては侵略的性格のある戦争であった。

タカ派(右派)的イメージの強い中曽根元首相ですが、率直に「アジアに対しては侵略的性格のある戦争であった」と認めている点が立派だと思います。内務省をへて海軍将校として東南アジアの戦場を見てきた人の言葉だけに重みがあります。

太平洋戦争を経験した世代として、戦争を知らない世代に伝えておかねばならぬことがある。それは、二十世紀前半の我が国の帝国主義的膨張や侵略によって被害を受けたアジアの国々の怨恨は、容易には消え去らないであろうということだ。日本独特の「水に流す」は日本以外では通用しない。韓国や中国における現在の反日教育、ナショナリズムを高揚する教育をみれば、心のわだかまりが溶解するには長い時間と期間を要すると考えなければならない。こうした考えに立って、我々の歴史の過失と悲劇に対して、率直な反省を胸に刻みつつ、この失敗を乗り越えるための外交を粘り強く進めて行く必要があることを我々は今一度、銘記しなければならない。そうした意味で、日本の歩むべき道は、失敗に対する深い思慮とともに、アジアと国際社会の一員として、平和を守り、互いの利益と協力を尊重しながら国際社会に貢献して行くことである。

いまの自民党議員の皆さんに心して読んでもらいたい文章です。

中庸で健全であるべき愛国心に対して、偏狭なナショナリズムが反作用的に出てくるのはありがちな話だが、国益を長期的観点から考え、短期的に起こる過度のナショナリズムに対して身を以て防波堤としてこれを抑えるのは政治の役割である。当然のことながら、相手国の言動や行動に刺激され、日本のナショナリズムを扇動するようなことがあってはならないし、国民への丁寧な説明と熟慮を重ねた冷静な外交こそが求められる。

日韓関係の改善のためには、日韓双方の政治家がこのような心がまえを持つ必要があると思います。ナショナリズムをもてあそび、支持率アップの道具として使うのは、きわめて危険な火遊びです。

中曽根元総理には、いわゆる「中曽根外交四原則」と呼ばれる方針がありました。

  1. 実力以上のことはやらない。
  2. 賭けでやってはならない。
  3. 内政と外政は互いに利用し合わない。
  4. 世界の正統な潮流に乗る。

シンプルかつ的確な指針だと思います。この四原則を守っていれば、太平洋戦争は避けられたことでしょうし、将来の戦争を防ぐことも可能もしれません。

保守を自認する自民党議員の皆さんに中曽根元総理のお言葉をかみしめてもらいたいものです。

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