コロナ対策会議の尾身茂副座長の思い出

新型コロナウイルス感染対策専門家会議の報道で医師の尾身茂先生のお名前をしばしば見かけます。対策会議の提言や報告はもちろん重大関心事ですが、尾身先生のお名前を見てなつかしくなりました。尾身先生は新型コロナウイルス対策専門家会議の副座長をされていますが、以前はWHO西太平洋地域事務局の事務局長をされていました。

2000年前後に東京大学の梅内拓生教授(当時)のご指導でプライマリヘルスケア(PHC)研究会という会が開かれておりました。発展途上国の公衆衛生や医療に関心のある医療関係者や援助機関関係者(JICA等)が参加していました。梅内先生もWHO勤務経験のある感染症の専門家でした。

当時の私は、発展途上国の公衆衛生や保健教育に関心があったので、その勉強会に参加していました。当時の私は20歳代のNGOスタッフでした。

国際保健学のよい教科書が日本語ではないので、その勉強会のメンバーで翻訳しようということになり、翻訳プロジェクトに1年ほど参加させていただきました。翻訳したのはポール・バッシュ教授の「バッシュ国際保健学講座」というテキストでした。

ポール・バッシュ著、梅内拓生監修、2001年「バッシュ 国際保健学講座」じほう

ポール・バッシュ教授はスタンフォード大学で長年にわたって国際保健学を教え、そのテキストは定評がありました。けっこう分厚い本なので、みんなで分担して訳しました。私は主に保健医療に関わる国際機関や国際援助の動向について書かれた部分を翻訳しました。

さらに出版社の編集者に「山内さんの翻訳の日本語、おじょうずですね。こなれてて」みたいにおだてられ、調子にのって他の翻訳者の日本語訳の修正のお手伝いまでやることになりました。英語を理解していれば、それだけで日本語の翻訳が上手にできるわけではありません。日本語としてスッと意味が通る文章に直す技術も必要です。編集者の方にコツを聞きながら、翻訳していく作業はたいへんでしたが、勉強になりました。たとえば、いま話題になっている集団免疫(herd immunity)といった言葉も翻訳作業をしながら学びました。

平日の昼間はNGOで働き、夜と土日を翻訳作業にあてるわけですが、1年間ほどは土日ずっとスターバックスやドトールコーヒーにこもって翻訳作業をしていました。おそらく500~600時間くらいは翻訳作業に時間を使ったと思います。

そして最初にいただいた印税は3万円ちょっとだったと記憶しています。時給換算すると50~60円という感じです。その後、版を重ねるごとに追加で印税がときどき入金されます。高価で分厚い専門書ですが、それなりに読まれている様子で、うれしい限りです。今となっては良い思い出です。おかげで英語と保健学の勉強になりました(効率の悪い勉強法ですが)。

長くなりましたが、その翻訳書に尾身先生(当時はWHO西太平洋地域事務局長)に推薦文(「日本語版に寄せて」)を寄稿していただきました。私にとっては思い出深い本に推薦文を寄せていただいたので、尾身先生の印象は強く残っています。

しかし、私が仕事の合間にちょこっと勉強した程度のプライマリーヘルスケア(公衆衛生)の知識では、新型コロナウイルス対策の専門的議論にはついていけません。大学院でも「保健教育」という学校の保健教育や啓発活動に関わる授業を受けましたが、その程度の知識では新しいタイプの感染症対策について発言する資格はありません。たとえば、PCR検査の是非をめぐっても専門家の間でも意見が分かれます。個人的には、感染の疑いのある人にはなるべくPCR検査をした方がよいと思うものの、自信をもって言い切ることはできません。

そこで、党内のコロナ対策会議などでも、感染症対策の専門的な議論については発言せずに黙って聞いています(=勉強はしています)。他方、コロナ問題が引き起こした経済危機や雇用悪化についての議論には積極的に参加しています。“いちおう”学部では経済学の基礎から体系的に学び、開発経済学(発展途上国の経済学)の教授に卒業論文の指導を受けました。大学院では教育経済学のコースを履修し、議員になってからも経済政策は勉強し続けてきたので、経済危機対策については発言する資格が多少あると思っています。

コロナ危機やコロナ危機が引き起こした経済危機・雇用危機にあたっては、自分の役職や知識・経験の範囲内でできることに集中して全力を尽くしたいと思います。逆に言えば、「できないことはできない」と認め、できることに集中して、問題解決に取り組んでいきたいと思います。

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