お薦めの本「超予測力」ご紹介【超予測力1】

この本は書名(タイトル)がイケてませんが、すごくお薦めです。タイトルが「超予測力」では、書店で見かけても手が伸びません。なので、出版されてから5年近くも気づきませんでした。

共著者のひとりダン・ガードナー氏の名前に見覚えがあったので手に取ってみたら、とても良い本でした。強くお薦めします。タイトルがイケていないのは理由があって、原書のタイトルが「Super-Forecasting: The Art and Science of Prediction」なので、直訳して「超予測力」となったようです。

本書はペンシルバニア大学のフィリップ・テトロック教授の研究チーム「優れた判断力プロジェクト」の研究成果に基づいています。テトロック教授のチームは、米国の国家情報長官直属の研究機関が主催した「予測トーナメント」で圧勝します。その研究成果をダン・ガードナー氏が読みやすく加工したのが本書です。

ダン・ガードナー氏には「専門家の予測はサルにも劣る」(飛鳥新書、2012年)という名著もあります。この名著も日本語タイトルはどうかと思います。原書のタイトルは「Future Bubble(未来のバブル)」ですが、出版社が売り上げを狙ってつけたタイトルのようです。

ダン・ガードナー氏の「専門家の予測はサルにも劣る」によると、予測を外すのは「自信をもって言い切る人」「わかりやすく断定する人」だそうです。日本でも米国でも、テレビで人気のある評論家や政治家は、だいたい歯切れがいいです。そして予測を外します。同書によると、例外的に予測が正確な人には、次の傾向が見られるそうです。

理論上の核となるテンプレートを持たず、主義主張や信念にとらわれず、いろいろなところから情報やアイデアを集めて統合しようとする。常に自己批判をして、自分が信じているものが本当に正しいか問いかけている。もし間違っていることがわかったら、その間違いを過小評価したり、見て見ぬふりをしたりはしない。ただ間違っていたことを受け入れ、自分の考えを修正する。こういう専門家は、世界を複雑で不確実なものとして見ることに違和感を覚えないので、そもそも将来を予測する能力というものに、疑念を抱く傾向がある。結果としてパラドックスが生じる。他の人よりも正確に将来を予測した専門家は、自分が正しいことに自信が持てない人たちなのである。

そうです。私が自信なさそうに見えるのは、そのせいだと思います(?)

この「超予測力」は、国際情勢や地政学の専門外でありながら、CIAのプロの情報分析官を上回る予測力を発揮した人たちを分析した本です。「超予測力」を持つ人たちの思考パターン、情報収集法、チーム作業の進め方等を詳しく分析し、「超予測力」を身につけるためのマニュアル本です。同書は次のように結論します。

予測力は生まれつき備わった神秘的な才能などではない。特定のモノの考え方、情報の集め方、自らの考えを更新していく方法の産物である。知的で思慮深く意志の強い人なら、だれでもこの思考法を身に着け、伸ばしていくことができる。

この結論には勇気づけられます。努力次第で身につくものなら、「超予測力」を身につけたいものです。そして内閣情報調査室の情報分析官、外務省国際情報統括官組織の担当官、防衛省情報本部の担当官、NSC事務局(国家安全保障局)スタッフ等には読んでいただきたい本です。

*前置きだけで長くなったので、続編に続く。

*参考文献:フィリップ・E・テトロック、ダン・ガードナー 2016年「超予測力」早川書房